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農家さん直伝! 野菜の本当においしい食べ方~鳥取・ネギ~【連載エッセイ】

更新日:2022/12/20

その野菜の本当においしい食べ方を、人気フードライターの白央篤司さんが、農家さんのキッチンを訪ねて教えてもらう連載エッセイ。今回の主役は、長ネギ。お味噌汁の実に、薬味にと日常的な存在の長ネギは、特に鍋ものの季節には欠かせません。農家さんたちはどう食べているのか? 特産地のひとつ、鳥取県へ。「伯耆(ほうき)富士」こと大山(だいせん)の麓(ふもと)に暮らす、料理上手さんのキッチンを訪ねてきましたよ。

冬のネギは甘い
ポテンシャルの高さ

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上/國吉家のスタンダード・ネギ・メニューの、ネギと椎茸の炒めもの。あまりいじらずに、じっくりと蒸し焼きにするようにネギに火を通していく 下/ミキサーでなめらかにした、ネギのポタージュ

國吉さんの畑の太いネギを見た瞬間、みずみずしさが伝わってきた。白いところはむっちりとして、青いところはピンと張り天を目指して。
西に日本海、東に大山などの峰々が見える。やって来たのは鳥取県、らっきょうや梨だけでなく、ネギも特産物のひとつなのだ。

現在32歳の國吉美貴(みつき)さんは神戸大学の農学部を卒業後、鳥取へ移住。5年前に國吉農園を設立した。自然農法で年間約40品種を栽培し、ネギは1年を通して育てている。
「白ネギといっても季節ごとに育てる品種が違って、個性もそれぞれで。春ネギは香りがいいし、夏ネギは柔らかい。秋のは味のバランスがよくて、冬は糖度が増して甘くなります。旬は今頃ですよ」

畑に入れてもらったら、土がなんとも柔らかい。根が伸びやすく、息をしやすそうな土だ。「ここは元々水田なんです。ネギを育てて5年、ふかふかした良い土になってきました」と美貴さん。ああ、この畑は彼の作品なんだよな。作物だけでなく、畑自体も。

ご自宅に移動して、ネギの食べ方を見せていただく。妻の沙織(さおり)さんが迎えてくれた。「うちでよくやる簡単料理」とまず教えてくれたのが、椎茸との炒めもの。
「オリーブ油で蒸し焼きにする感じ。あまりいじらないのがコツですかねえ、ネギが崩れないように」
シンプルに塩こしょうだけの味つけで、ネギの甘みと椎茸のうまみを存分に引き出す。焼きつけられたネギの香ばしいこと! 舞茸など他のきのこでも試してみたくなる。

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ベーコンのうま味を吸ったくたくたのネギがたっぷりとじゃがいもに絡む。新鮮なおいしさであった

続いてはネギの田楽。厚く切ったネギを素焼きにして、自家製の黒豆味噌をつけていただく。甘い味噌とネギ、相性がいいもんだなあ・・・洒落た蕎麦屋さんのおつまみ的な味わい。日本酒を合わせたら、さぞいいだろう。

そしてネギのポタージュ、これぞ冬場の養生スープという感じ。
「バターで炒めて、コンソメと少量の水を加えてミキサーにかけ、牛乳でのばしています」
じっくりと炒めることで、ネギの強さが消えてやさしさだけが残る。しみ入る味わい。素揚げの白髪ネギトッピングが最高のアクセントだった。

沙織さんは栄養士として働いていたこともあり、かつては企業の食堂で調理やメニュー作成などを担っていた。現在お子さんがふたり、彼らもよく食べるというポテサラがまたおいしかったのだ。
「最初にネギとベーコンを炒めるんです。そこにマヨネーズを加えてさらに炒めて、別ゆでしておいたジャガイモを加える、というレシピ」
 ことさらにジャガイモを潰す必要はなく、ほぐしつつ全体を絡めてできあがり。

「普段は白ネギ、本当に何にでも入れてますね。玉ネギでやるようなものは白ネギでやってもおいしい。カレーや肉じゃが、オムライスなんかにもよく合いますよ」
日頃、ほぼ薬味として使っていたことを反省。ネギのポテンシャルをたっぷり教わった取材となった。

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【取材風景より】上/ネギと椎茸の炒めもの。味つけは塩こしょうだけ。香ばしいネギがごちそうに 下/しっかりと焼きがつくまで加熱したネギはとろけるような食感になり、新たなおいしさが生まれる。自家製の黒豆味噌はさっぱりした甘さでネギの香味を引き立てていた

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【取材風景より】上/やさしい味わいのネギのポタージュには、素揚げの白髪ネギをトッピング 下/ネギをたっぷり入れるポテサラのおいしさを初めて知った。國吉さんちのお子さんの大好物でもある

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【取材風景より】バリエーション豊かなネギ料理を教えてくださった沙織さん。小さい頃から料理好きで、よく台所の手伝いをしていたという

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【取材風景より】ネギのこの太さよ。青い部分がピンとのびて、しなやかでハリがあって。美貴さんは2015年に他県からここ大山町に移住。2年間の間、地域おこし協力隊として働きながら住むところと畑を見つけて、2017年に國吉農園を設立した

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【取材風景より】國吉農園のネギ畑。立派なネギの居並ぶ姿、迫力あったなあ……。ところどころからまだバッタが元気に飛びだす。中には小さなカエルの姿も。「これから冬眠するところかな」と美貴さんが笑った

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【取材風景より】おいしい野菜を育てるために、國吉農園では「バランスのよい土づくり」と「水はけ」を特に重視している。微生物などの土壌生物が活動しやすく、排水性と保水性の両方が揃った土が望ましいのだという。理想は空気が入りやすい、根っこが生えやすい「ぼくぼくした」土。ネギ畑の土をさわりながら、「ようやくふかふかした、いい土になってきた」と美貴さん

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【取材風景より】國吉さんの畑からは大きな山々がすぐそばに見えた。海も遠くない位置にあり、風がなんとも気持ちいい。取材日は冬忘れのあたたかい、いい日だった

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國吉農園

2017年にスタートした國吉農園。土づくりにこだわり、化学肥料と農薬に頼らない農法により、年間40種の野菜を栽培。國吉さんの野菜は、公式サイトとポケットマルシェからお取り寄せもできる

お取り寄せはこちら(ポケットマルシェ)

文・白央篤司

はくおうあつし フードライター。「暮らしと食」、郷土料理をテーマに執筆。『オレンジページ』、CREA WEB、朝日新聞ウィズニュースなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)、『自炊力』(光文社新書)など

PHOTO/KAZUHITO MIURA
※メトロミニッツ2023年1月号「行ってきました、農家さんの台所。」に加筆して転載

※記事は2022年12月20日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります