日本の酒が生まれる地を訪ねる連載「MEETS SAKEBITO」。沖縄本島からフェリーに揺られて30分。青い海に囲まれた離島へ地域の名産品から新たな地酒を創生したラム蒸留所を訪ねます。
Vol.15 沖縄・伊江村 「伊江島蒸留所」浅香 真さん
直径約9㎞の小さな島・伊江島には、水はけのいい石灰岩土壌ゆえ米が育たず、沖縄の地酒である泡盛が造れなかった歴史が。
そんな中、名産品・サトウキビでのラム酒造りを目指し設立されたのが「伊江島蒸留所」。
世界中で流通するラムの大半は砂糖の精製後に残る廃糖蜜が原料ですが、ここでは旬のサトウキビの搾り汁だけを使う贅沢かつ稀少な製法で、島名を冠した「イエラム」を造ります。
ユニークなのは、サトウキビ由来らしい甘い芳香に、ほんのりミネラル感ある香りが混ざること。「ここは島全体が海風にさらされ塩害も多い。そのせいか、ラムから磯の香りがすると言われます」と醸造責任者の浅香さん。
「ワインで言うテロワールのように、土地の原料で造り続けているのがうちの強み。今後はもう一歩進んで、多様な熟成の可能性を探りたい」。
誕生から11年、すっかり“島酒”として定着した「イエラム」は、今や海外からも問い合わせが入るほどの人気に。日本を代表するスピリッツとなる日をめざし、挑戦を続けます。
「伊江島蒸留所」で生まれたラム
イエラム サンタマリア ゴールド
2970円(720ml)
オーク樽熟成のゴールドラム。ふくよかな香りとすっきりした飲み口。島に自生するテッポウユリが聖母の象徴であることから命名
PHOTO/TAMON MATSUZONO TEXT/RIE KARASAWA
※メトロミニッツ2022年4月号「MEETS SAKEBITO」より転載