日本の酒が生まれる地を訪ねる連載「MEETS SAKEBITO」。“酒飲みのテーマパーク” を自称する老舗酒蔵に、昨今コアファンが急増中。都心から電車で数十分の東京・多摩エリアへ、噂の杜氏を訪ねます。
Vol.10 東京・福生市 「石川酒造」前迫晃一さん
1863年創業、古い白壁の建物が並ぶ「石川酒造」。そのクラシックなイメージに大変革を起こしたのが、6年前、弱冠31歳で杜氏に就任した前迫さんです。
当時、代表銘柄「多満自慢」はオールマイティなザ・地酒タイプで、売り上げは毎年前年割れ。他方、人気なのはフルーティで香り高い日本酒でした。
前迫さんが目指したのは、そのどちらとも違う、曰く「甘口ベタベタの売れない酒」!
10人中、1人か2人にめっちゃ好かれればいい。問題は『これが多満自慢だ』と言えるものがなかったこと」。
新生「多満自慢」誕生から数年、気付けば売り上げは上がり、今や多くの熱狂的ファンを抱える注目蔵となったのです。
そんな“甘口ベタベタ”酒ですが、実際に飲んでみると甘みと酸味が調和し、飲み口は意外や爽快。
ちなみに“酒飲みのテーマパーク”を自称する蔵にはレストランやビール工房を併設し、月一度の「感謝デー」は各種グルメの出店あり、抽選会ありのお祭り状態に。
さらには今年、日本酒体験プラン付きのゲストハウスまで誕生。これはもう、現地に行かない手はなし!
「石川酒造」で生まれた日本酒
多満自慢 純米無濾過
990円(720ml)
「月曜から木曜担当の日常酒です」と前迫さん。ほどよいボディ感が和食にも洋食にもなじむ。米麹の配合量が多い贅沢な造りなのに、1000円以下!
PHOTO/SAORI KOJIMA TEXT/RIE KARASAWA
※メトロミニッツ2021年11月号「MEETS SAKEBITO」より転載