旬、和食、レシピ、メニュー、野菜、料理、調理法、そら豆、スナップえんどう、新玉ねぎ、京都

農家さん直伝! 野菜の本当においしい食べ方~京都・大原の旬野菜~【連載エッセイ】

更新日:2021/06/20

その野菜の本当においしい食べ方を、人気フードライターの白央篤司さんが、農家さんのキッチンを訪ねて教えてもらう連載エッセイ。今回は京都市北部の大原へ。農業家兼料理人の細江聡さんが営む古民家レストラン『わっぱ堂』を訪問し、穫れたて作りたての野菜料理をいただきます。

新玉ねぎは名物の柴漬けと!
京の山里でいただく野菜料理

レシピ、メニュー、野菜、料理、調理法、花ズッキーニ、ヨーロッパ野菜
右/そら豆のこっくりとしたうま味に満ちるコロッケ(手前)と、ほろ苦さと野菜の甘みが絶妙な取り合わせの新玉ねぎと柴漬けのかき揚げ(奥) 左/スナップえんどうの冷たいコンポート。いつもはクリームブリュレに添えているそう

京都・大原は山の里。取材で訪ねたのは5月の下旬、小川沿いの道には黄ショウブがあちこちに咲いて、梅雨曇りの中に明るく、天然のともしびのように思えた。畑には作物がすくすくと育ち、葉に露が光る。元気よくつるを伸ばしているのは、スナップえんどうだろうか。
「そうです、ちょうど今が食べごろですよ」と、細江聡(ほそえさとし)さんが教えてくれた。大原で年間約50種の野菜を育て、自らが営み調理する古民家レストラン『わっぱ堂』で、野菜中心のコース料理を提供している。

もともとは岐阜出身だが、妻の香代(かよ)さんの実家が大原で、義母が作る大根の味に衝撃を受けた。そのみずみずしさ、甘さ。「こんなにも違うものか…」と驚く聡さんに義母が「あんたも農業、やってみるか」と声をかける。そのとき聡さんは割烹で板前修業中。いつか香代さんとふたりで居酒屋をやるのが夢だった。それが次第に「野菜を自分で育て、その野菜で飲食店をやりたい」という思いに変わっていく。33歳で独立、今年で46歳になる。「うちの畑で今が食べごろのそら豆、新玉ねぎ、スナップえんどうで何か作りましょう」と聡さん。

そら豆をすり潰し、刻んだ新玉ねぎと合わせたコロッケが忘れられない。豆の味が濃くて深くて、まろやかで。新玉ねぎは、大原名物の柴漬けと合わせてかき揚げにしてくれた。ああ、この相性は知らなかった…。柴漬けの爽香が口の中をすっきりと洗い、新たな食欲をかき立ててもくる。そしてスナップえんどうはなんとコンポートに! 白ワインと砂糖で煮られて何の違和感もなく、素敵なデザートになった。聡さんの発想力が実に楽しい。お店では自分で育てた野菜の他、大原の農業仲間が作る野菜も使用している。「彼らは農業一本でやってるだけに、芯のあるいい野菜を作ります。刺激を受けますね、自分の野菜もクオリティをもっと上げていきたい」。コロナの影響もあり、今後は惣菜や弁当の提供もしていきたいと語る。

ところでお店で使われている藍染めのランチョンマット、深い色みの鮮やかさが印象的。縁側には機(はた)織りの機械も。聞けば香代さんの手作りだった。「実家が紡染織の工房なんです。親と一緒に小さい頃から作ってきました。綿(わた)から育ててもいるんですよ」
聡さんが種から育てた野菜、香代さんが糸から作る布織物。『わっぱ堂』には、イチから手作りされたものが満ちあふれていた。

レシピ、メニュー、野菜、料理、調理法、新玉ねぎ、そら豆、スナップえんどう

【取材風景より】細江さんの畑で収穫したばかりの野菜たち

レシピ、メニュー、野菜、料理、調理法、京都、創作、和食

【取材風景より】『わっぱ堂』の調理場で、手際よく調理していく細江さん。カウンター席からはその丁寧な仕事がよく見える

レシピ、メニュー、野菜、料理、調理法、そら豆

【取材風景より】そら豆を潰して作る自家製豆板醤。熟成させて半年後に完成する

野菜、夏、初夏、旬、生産者、京都、大原、藍染め、工芸、クラフト

【取材風景より】『わっぱ堂』で使用される藍染めのランチョンマットは、香代さんの手織り。『わっぱ堂』から7分ほど歩くと、香代さんの実家である「大原工房」があり、さまざまな布製品などが展示されている

夏、初夏、旬、生産者、京都、大原、京都旅、創作、和食

【取材風景より】夏を前に緑深まる大原の里。『わっぱ堂』から歩いて行ける距離に、三千院や寂光院などの古刹が点在する

野菜、夏、初夏、旬、生産者、京都、大原

古民家レストラン『わっぱ堂』

細江さんの創作料理が楽しめる『わっぱ堂』は、京都駅から車で約30分。店名には「童(わっぱ)」、「自分はまだまだ未熟者」という戒めと「いつまでも子どもの心を忘れないように」という2つの意味が込められている

TEL/075-744-3212 京都市左京区大原草生町102 草庵内 営業時間/ランチ12:00~15:00、ディナー17:30~21:30(完全予約制) 定休日/水・木・土(夕方)

文・白央篤司

はくおうあつし フードライター、料理家。「暮らしと食」、郷土料理をテーマに執筆。『オレンジページ』、CREA WEB、ハフポストなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)、『自炊力』(光文社新書)など。企業へのレシピ提供も定期的に行っている

PHOTO/KEI KATAGIRI
※メトロミニッツ2021年7月号「行ってきました、農家さんの台所。」より転載

※記事は2021年6月20日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります