SDGsで注目のアップサイクルってなに?家庭科教諭・葭内ありさ先生が徹底解説。リサイクルとの違いやおすすめブランド6選も
オズモールとはじめる、SDGsアクション。小さな“サステナブルチャレンジ”から始めてみませんか? ごみ問題が深刻化してきている今、廃棄物や不要なものに手を加えて新たな価値を持たせる「アップサイクル」が注目されている。従来のリサイクル品とは違い、質を落とすことなく“より魅力的で価値のあるもの”に生まれ変わった商品も続々登場中。そんな話題のアップサイクルについて、家庭科教諭・葭内ありさ先生が徹底解説!
更新日:2024/04/16
アップサイクルとは?家庭科教諭・葭内ありさ先生が解説
アップサイクルとリサイクルはなにが違う?
「リサイクル」とは不要になったものを回収し、再生し、原材料として有効利用することです。一方「アップサイクル」は不要になった廃棄物をデザインなどの力で新たな商品に生まれ変わらせ、ものの価値を高めるリサイクルのこと。リサイクルの中には、Tシャツが工場で使う雑巾になるなど、再利用する際に価値が下がってしまうこともありますが、製品としてアップグレードするのがアップサイクルです。ものの価値が高まるから“アップ”サイクルというわけなんですね。
なぜ今アップサイクルが話題なのか?
今、ごみ問題は非常に深刻な状況です。2018年度のごみ総排出量は年間4272トン。これは東京ドームに換算すると約115杯分もの量です。このままごみが増え続けたら、埋め立てる土地はなくなり、処分には税金である莫大なお金もかかります。ごみを燃やすことで発生するCO2により地球温暖化もますます深刻化する一方。地球の人口も増え、今までの大量生産・大量消費・大量廃棄の仕組みのままでは、資源も不足します。
ですから、今までのように使い捨てではなく、資源を大切にして長く使う仕組み、循環型の、「サーキュラーエコノミー」の必要性が世界的にも指摘されています。
枯渇しかねない資源を使って新たな商品を作るのではなく、今ある資源を生かすアップサイクルも、有効な方法として注目されているのです。
アップサイクル商品にはどんなものがある?
例えば、これまでは捨てられていたコーヒー豆が入っていた麻袋や、自動車のエアバックからバッグを作ったり、廃材から家具を作るなど、さまざまなアップサイクル商品が生まれています。
また、建築業界では、今ある建物を生かしてリノベーションするという手法もすっかり市民権を得ています。以前の日本家屋では一般的だった梁や柱をスケルトンにしてデザイン的にも生かし、間取りや住み心地だけ変えることでその価値を高めるのがリノベーションですので、アップサイクルのひとつですね。
アップサイクルを取り入れよう!家庭科教諭・葭内ありさ先生が解説
ファッション関連のおすすめアップサイクルブランド
・KISSACO
ブランド名の由来は禅語にある「喫茶去」。「とりあえずお茶でもいかがですか?」という意味なんだとか。
コーヒー農園の麻袋にはきれいなプリントが施されているのですが、今までは使用後は捨てられていました。でも、それぞれ個性があって素敵なのにもったいないということで、防水性を持たせるラミネートコーティングをしてアップサイクル。バッグやポーチなどにしているブランドです。ていねいな商品作りや、デザイン力が魅力の人気のブランドです。
今年、実店舗が北鎌倉にできたので、お散歩がてら行くのもおすすめです。
・MUSKAAN
数年前に設立された熊本発のブランドです。
大正から昭和期に流行した、銘仙という種類のヴィンテージ着物をアップサイクルし洋服や小物に蘇らせています。当時の若い女の子が着ていたカジュアルな着物で、鮮やかで大胆な柄やビビッドな色彩も特徴。すべてが生分解性のある正絹を素材とした1点もので、熟練した縫製士の方により丁寧に仕立てられており、サステナビリティを意識したもの作りがコンセプトにあります。反物からのオーダーもできます。時折、百貨店でもポップアップしている、人気のブランドです。
インテリア・雑貨関連のおすすめアップサイクルブランド
・gleam
かつては舟や枕木、民家として使用されていたインド洋の島々の廃材を活用して、新たな家具を作っているブランドです。テーブル、チェア、シェルフなどの家具をはじめとし、ランプやボックスなどのインテリア雑貨やフォトフーレムなどの小物までさまざまな商品を生み出しています。ドアなどの建具も販売されていて、オーダーメイドもお願いできるそう。麻布に実店舗もあるから、気になる方は行かれてみては。
・CARTON.
段ボールをアップサイクルしている作家の方です。多摩美術大学在学中に、家にあった段ボールで間に合わせのお財布を作ったのが、作品作りのきっかけだそう。お財布だけではなく、段ボールキーチェーンやさまざまな作品を作られています。おしゃれな段ボールを見つけて、それをうまく切り取って素敵な作品にしているのは、アーティストならではですね。
・MAKOO
長年アップサイクル商品を作っているブランドです。
リサイクルレザーは、本革の裁断破片などを集めて粉砕したものを混ぜ合わせ、再加工させた環境に優しいリサイクル素材。使い込む程、革の味が出てきます。リサイクルレザーの書類ケースなどの文具や日用品、バックは、種類が豊富で、美しいデザインです。
あらゆる産業廃棄物をデザインするアップサイクルブランド
・MODECO
産業廃棄物等を用い、価値がなくなってしまった資源を活かすアップサイクルをベースとした商品作りにこだわっているブランド。過剰生産をしないのもこだわりで、社会問題に応じて解消・啓発を目指す環境デザインを提案しています。
建築廃材のフローリングを再利用した木目調のエレガントなバッグ、シートベルトとタイヤーのインナーチューブの廃材を使ったビジネスバッグや、実際に使った消防服をリデザインしたカジュアルなバッグなど、デザイン性や発想力に驚かされます。
【随時更新】あの人に聞いた、アップサイクルを取り入れるアイデア
【エシカルコーディネーター・エバンズ亜莉沙】エシカルな服との向き合い方や服選びのコツ
気分を高めてくれる洋服たち。トレンドを取り入れるのも楽しみのひとつだけど、最近は服の大量廃棄問題や、エシカルファッションやサステナブルファッションという言葉を耳にすることが増えたという人も多いのでは。今回はエシカルコーディネーター・エバンズ亜莉沙さんに、今こそ見直したい服との向き合い方や服選びのコツについて教えてもらいました。
【フラワーサイクリスト・河島春佳】廃棄されてしまうお花を使った小物づくり
ロスフラワーとは、廃棄予定のお花のこと。自然の美しさを愛でる気持ちで暮らしにお花を取り入れてみるのが、ロスを減らす近道に。フラワーサイクリスト河島春佳さんが教える、お花を使ったインテリア小物づくりのアイデアをご紹介。見切り品コーナーのお花を購入したり、お部屋に飾ってある生花をより長く楽しむために工夫するのも、地球にやさしい心がけ。簡単にできる手軽なスワッグづくりも、動画で紹介しているのでぜひチェックしてみて。
【フラワーサイクルアンバサダー・宮川南奈】地域の歴史や文化を継承するアップサイクル品
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アップサイクルに取り組む企業、商品、スポット
青森県の廃棄される野菜をリユースして作られた「おやさいクレヨン」
和歌山県・熊野川流域の間伐材を有効活用。生育のために伐られた木から抽出したエッセンシャルオイル
廃棄・パラグライダーから生まれた、カラフルで丈夫なバッグ「HOZUBAG」!SDGs未来都市・亀岡で誕生
かまぼこ板製造の技術力を生かした新発想!大分県の日田杉を使った繰り返し使えるストロー
脱プラスチックと森林保全に貢献できる竹のストロー。島根県安来市で誕生
良質な木灰を作るときに出る灰汁を無駄なく活用。京都に伝わる温故知新なエコ洗剤
家庭科教諭・葭内ありさ先生が解説!アップサイクルのQ&A
最近よく耳にするアップサイクルという言葉。でも、「どういう意味?」「リサイクル、リデュース、リユースの違いはなんですか?」「アップサイクル商品のおすすめは?」など、わからないことや知りたいことがまだまだいっぱい。そこで家庭科教諭・葭内ありさ先生がみんなの疑問に分かりやすくお答えします。
アップサイクルってなに?
「アップサイクル」は不要になった廃棄物をデザインなどの力で新たな商品に生まれ変わらせ、ものの価値を高めるリサイクルのこと。製品としてアップグレードするので“アップ”サイクルといいます。
アップサイクルとリサイクル、リデュース、リユースの違いはなんですか?
ごみを減らすためのキーワードとして「3R」という言葉を聞いたことがある人も少なくないと思います。3RとはReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つの頭文字をとった言葉。
「リデュース」はごみの量そのものをできるだけ減らすこと。
「リユース」は一度使ったものをごみにしないで再利用すること。
「リサイクル」は不要になったものを回収し、再生し、原材料として有効利用すること。
本来、捨てられるはずだったものが新たなものに生まれ変わる、という意味ではリサイクルとアップサイクルは同じです。
アップサイクルは、リサイクルの中でも、デザイン性などを加えることで新たな魅力・価値を付け加えるリサイクルのことです。
アップサイクル商品どんなものがある?おすすめを教えて!
コーヒーの麻袋をアップサイクルして作られたバッグ、着物をアップサイクルした洋服、コーヒーの搾りかすをアップサイクルしたマグカップ、建築廃材のフローリングをアップサイクルしたバック、古民家の廃材をアップサイクルした家具など、さまざまな趣向で価値を高めた商品があります。
こういったアップサイクル商品を選ぶ視点は、地球の未来にとってとても大切。
デザイン性がすぐれた素敵なものがたくさん出てきているので、きっとお気に入りが見つかるはず。ぜひ楽しんで選んでみてください。もちろん、自分で工夫して手作りするのも、お財布にもやさしい、暮らしの楽しみですね。
取材協力・監修/お茶の水女子大学附属高等学校教諭・葭内ありさ先生
お茶の水女子大学附属高等学校教諭、お茶の水女子大学非常勤講師、エシカルラーニングラボ代表。児童労働やフェアトレード、環境問題などを家庭科の授業で取り上げ、現在はエシカルファッションやSDGs、サイエンスをテーマにした授業を展開。 学会活動や教育関係者向けワークショップを通して、エシカル教育の普及に努めている。消費者庁「倫理的消費」調査研究会委員などを歴任。高校家庭科教科書(東京書籍)編集委員、日本エシカル推進協議会発起人。NHK高校講座「家庭総合」にて監修・講師。
こちらもチェック!オズモールとはじめるSDGsアクション「#サステナブルチャレンジ」
SDGsと言われても「それって何なの?何から始めればよいの?」と、難しく考えてしまう人も多いはず。でも実は、毎日の暮らしのなかにヒントがたくさんあるんです。食材をムダなく活用するのも、エコバックを持ち歩くのも、サステナブルなSDGsアクションのひとつ。そこでオズモールでは、楽しみながら始められる「#サステナブルチャレンジ」をガイドしていきます。ぜひ参考にして、できることから始めてみて。
WRITING/KIMIKO OHKATSU