ローカルの日常を訪ねる「ステイケーション」。滞在中に出会える、その町ならではの朝の風景をフォトグラファー嶋崎征弘さんの一枚の写真と文でお届けします。今号は大阪城で毎日体操を開催している「大阪城ラジオ体操会」を訪ねました。この町ならではの朝の風景、ぜひみなさんもご体験ください
暗いうちから数百人が集まる大阪城の朝
「大阪城で数百人がラジオ体操やってるよ」。友人にその話を聞いたときは耳を疑った。ただ、これは特異な朝の体験ができるかもしれないと、春頃からタイミングをうかがっていて、ようやく年の瀬にチャンスが訪れた。
前夜に大阪入りし、翌朝5時には大阪城西側の大手門から入城。桜門を抜けて天守閣付近までやってきた。ライトアップが不気味に足元を照らす暗闇の中、腰は引けたが、城に忍び込むように本丸広場へ。恐る恐る奥の方にある提灯まで近づくと、会長の常原さんが「おはようございます!」と元気に迎え入れてくれた。
背筋は真っ直ぐに伸び、薄手のジャンパーを羽織って冬の朝とは思えない装い。分厚いコートに、ダウンジャケット、ニット帽を身に着けていた僕は、少々恥ずかしくなった。あたりは既に100人近い人が集まっており、5時50分からの1時間は、ストレッチ、ラジオ体操第1~第3、みんなの体操。なんとこれを2回繰り返す。初耳のラジオ体操第3は「幻の第3」と言われ、2013 年に復刻されたのだとか。ラジオ体操の有資格者の方々が、壇上で完璧な見本を見せてくれる。
6時半の本番のときには、体はホカホカであっという間に終了。平日にもかかわらず200人ほどいた人たちが、城の四方八方へ散っていく。帰り道、来たときと同じ道は眩しく、黄色っぽい朝日が城壁の間から差し込む。これから朝食。間違いなく食べ過ぎてしまうだろう。
今回訪れたスポット:大阪府・大阪市/大阪城ラジオ体操会
大阪城の本丸広場で、「大阪城ラジオ体操会」が運営するラジオ体操は、平日は数百人、週末や夏休みには500人もの市民が集まるという大阪名物。毎日、冬は5時50分、夏は5 時45分にストレッチからスタート。参加は自由
PHOTO&TEXT/MASAHIRO SHIMAZAKI
※メトロミニッツ2022年2月号「ローカルモーニング」より転載