VOICE 61 北海道・旭川市「ジャパチーズ旭川」長尾英次さん
北海道旭川市のメイン通り・平和通買物公園に位置する「ジャパチーズ旭川」。店内の窓からは、工房の様子が見てとれます。「これは『旭山動物園』がモデルの“行動展示窓”です」。そう笑う店主の長尾英次さんは、元々宮城県の酪農一家の生まれ。将来は農業生産に関わりたいと大学で食品加工を学び、アメリカの牧場で研修、帰国後は全国的に知られる施設「蔵王酪農センター」で、18年間チーズ製造を担った実力派です。
転機が訪れたのは、2011年の東日本大震災。家族とともに妻の故郷・旭川市へ移住した長尾さんは、東北の食の信頼が激しく揺らぐ現実に悩み、チーズ製造から身を引こうと考えたそう。そんな長尾さんを引き留めたのは、周囲の技術者や取引先の人々でした。「怒られたんです。お前には使命がある、その技術を活かすべきだと」。
一念発起し店を構えたのは、それまでと一転、繁華街の小さな一角。観光需要に頼らず、地元に愛される店にしたいと、食べやすいチェダーとモッツァレラを主軸に販売をスタートします。使う生乳は近隣の「加藤牧場」のもの。「農協の紹介で牧場を訪問したら、牛を手塩にかけて育てているのがすぐ分かって。実は業界内でも有名な牧場で、息子さんのアメリカでの研修先が自分と同じだったと分かったんです」と長尾さん。「牛乳の1滴は、母牛の血の1滴とも言われます。チーズを通じ牛乳や酪農の価値を上げたい」。そう語る長尾さんの真摯な想いが、多くの人の支えや不思議なご縁を引き寄せているに違いありません。
ちなみに、フィンガーサイズのチェダーは、コク深く後引く味わい。モッツァレラは溶き卵のごときふわふわ食感! それぞれご飯や味噌汁に入れて楽しむ常連さんも多いとか。酪農への情熱から生まれるチーズが、市民の食卓を美味しく彩っています。
ジャパチーズ旭川
TEL.0166-56-7849
住所/北海道旭川市7条通7-33-69 買物公園
SHOP/直売あり。その他、旭川市「amuse market」、JR旭川駅構内「AMO.BASE」などで販売
VOICE 62 北海道・富良野町「藤井牧場」藤井雄一郎さん、睦子さん、裕子さん
明治期創業の「藤井牧場」は、約1000頭の牛を飼育する界隈一の大規模牧場。一方、2012年には国内初の「農場HACCP(ハサップ)」認証を取得、牛の健康第一の環境を整え、先進的システムを導入する“老舗ベンチャー”です。
10年前から作るチーズを「牧場の看板的存在」と話すのは、5代目の藤井雄一郎さん、睦子さん夫婦。その美味しさは、全国のイベントや地元のお祭で人気を博してきました。製造担当は親族の藤井裕子さん。日々社内のSNSグループで牛の状態や乳質をチェック、朝一番に搾乳する新鮮な生乳をすぐに加工しています。
まずは2カ月熟成のゴーダタイプ「さいしょはゴンダチーズ」で、自慢の生乳の豊かな風味を味わって。牛も人も幸せになる酪農を目指す、藤井家の想いが伝わります。
藤井牧場
TEL.0167-29-2342(乳製品部)
住所/北海道富良野市八幡丘
SHOP/直売なし。FAX注文可(※専用の申し込み用紙は、HPの商品概要ページに掲載)。その他、富良野市「フラノマルシェ」などで販売
VOICE 63 北海道・旭川市「吉田チーズ工房」吉田良作さん
2019年6月、住宅街にオープンした小さなチーズ工房。職人の吉田良作さんは、その少し前まで市役所職員だった経歴の持ち主です。元々、食べもの作りが趣味の吉田さん。新鮮な生乳が手に入ったことから始めたチーズ作りに魅了され、本場フランスも視察し独学で勉強。4年の歳月をかけ、工房を作る夢を実現させました。
製造するのは「長期熟成させる場所もなくて」と、短期間で出荷できるカマンベールのみ。「非加熱だから熟成途上。自宅で味の変化を楽しんで」と吉田さん。
道具はホームセンターにある材料で自作するなど、チーズも設備もまさにD.I.Y!「今も失敗の繰り返し。でも楽しくて仕方ない」。週に100個ほど作られるチーズには、第二の人生をチーズに捧げた吉田さんの情熱が詰まっています。
吉田チーズ工房
TEL.0166-54-0486
住所/北海道旭川市花咲町7-4055-15
SHOP/直売なし。旭川市「amuse market」、旭川市「全日食きくち商店」などで販売
VOICE 64 北海道・旭川市「旭川あらかわ牧場」荒川求さん
熟成前の若いチーズ、“グリーンチーズ”のシリーズが評判の「旭川あらかわ牧場」。食品用ワックスで覆われたチーズは、冷蔵庫で好みの風味まで熟成させる過程を楽しめます。
職人の荒川求(もとむ)さんは酪農学園大学出身。製造技術は「共働学舎」や「蔵王酪農センター」などで学びましたが、一時期経験した百貨店の接客業の経験を、商品開発に役立てます。「職人目線というより、お客さま目線なんです」と荒川さん。
手頃なサイズでカラフルな見た目のチーズは、手土産にしたり、大切に熟成させて記念日に食べたりと、その特別感に多くのファンが。昆布出汁やしょうゆなどの和風味付きチーズ「和乾酪」もインパクト抜群。「普段は市内限定販売。旭川の付加価値を高め、地元に貢献できればうれしいです」
旭川あらかわ牧場
TEL.0166-73-2107
住所/北海道旭川市江丹別町拓北582-4
SHOP/直売なし。旭川市「道の駅あさひかわ」、JR旭川駅「駅naka」などで販売
【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」
今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、日本で唯一の国産ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約40工房、年間300種類以上のチーズを取り揃えています。
TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休
名店のシェフが教える日本チーズを使った絶品レシピ
今回紹介したチーズ工房「ジャパチーズ旭川」のチーズを使ったレシピを、東京・木場のイタリア料理店「イネット」の山口大輔シェフに教えていただきました。
メトロミニッツ2020年9月号「オツカレサマー」特集
疲れない体を手に入れたい、なんて贅沢は言いません。しかし、ウィズ・コロナの夏が訪れ、妙に頭が重く、体がだるく、スッキリしない日々が続く中で、私たちは考えました。夏の終わりに、この夏の疲れだけは一度リセットできないか、と。そして勉強を始め、鶏むね肉をたくさん食べ、毎朝、自然の光とともに起床し、青梅を歩く旅に出た・・・。そう、心と体をリセットするために、私たちが打ち立てた行動プラン「くう」「ねる」「あるく」を実行に移したのでした。本特集では、この3つの行動プランをご紹介しますので、ご自身の疲れのために、ぜひ参考にしてみてください
※外出時は、ご自身の体調と向き合いマスク着用のうえ、各施設の3密対策・ソーシャルディスタンス確保などの衛生対策に従い、思いやりを持った行動をお願いします。
こちらもチェック!メトロミニッツ「日本チーズの“こえ”に出会う旅」関連記事
後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」
Photo 松園多聞 Text 唐澤理恵
※メトロミニッツ2020年9月号「オツカレサマー」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください