こんにちは。編集部のタキセです。自他ともに認めるオズマガジン編集部一の「カフェマニア」です。
私タキセの担当回では、10年以上続くカフェの色あせない魅力を探っていこうと思っています。10年後も行きたくなるカフェのことを、思い浮かべながら読んでいただけると嬉しいです。
30年続くカフェ
現在、2018年12月号のホテル特集が発売中ですが、ひとつ前の11月号は渋谷特集でした。
「変わらないほうの渋谷」をテーマにしたページを担当し、鮮魚店や古書店など50年近く続いているお店を取材しました。50年とまではいきませんが、同じ渋谷にある「AU Temps Jadis」もかなりの古参で、1985年にオープンしたガレットとクレープ専門のカフェです。
オーナーさんは、ブロカントのショップも運営している雑貨やインテリアのプロ。まず、たてものからして、フランスの田舎町から切り取ってそのまま持ってきたようなレンガ造りの洋館です。
客席は地下にあり、適度に外界の現実を遮断できる一方、オープンテラスもあるので店内も外光をたっぷり取り込めて明るさを保っています。
インテリア雑貨もブロカントで統一されていて、大きな棚に並べられたキッチングッズの数々や古いポスターたちは、眺めているだけでノスタルジックな気分が高まります。
本物のクレープ
Au Temps Jadisに初めてお邪魔したのは、まだ10代の頃。それまで、クレープと言えば原宿か縁日の屋台で食べる、薄っぺらい生地に甘ったるいクリームが詰まった食べ歩き用のおやつでした(これはこれで、いまだに好きですが)。
こちらのお店に出会ったおかげで、ナイフとフォークで食べるクレープがあること、そしてクレープは大人のごちそうであることを知りました。
決まって頼むのは、定番の塩バターキャラメルのクレープで、生クリームを追加するのがお気に入り。
はじっこはカリッと、中はしっとりモチっとした生地がまず間違いなし。トッピングなしで、これだけでも食べきれるほどのおいしさなのです。
「バター」「キャラメル」「生クリーム」というワードだけを聞くとちょっと重たい印象ですが、バターはさっぱり、キャラメルソースは少々ビター、ホイップクリームも甘さ控えめで軽やか。そしてポイントとなる塩が全体を引き締めてバランスをとってくれるので、毎回ノンストップでペロリ、なのです。
変わらないためには
Au Temps Jadisの目の前にあった何棟かのたてものは、最近なくなってしまったようで、更地になっていました。きっとすぐにこの土地にも、ピカピカのビルが建つのでしょう。200年に1度と言われる渋谷の大再開発の影響が、こんな裏通りにも表れているようです。
一方、最初にこちらを訪れたころからもう15年以上の年月が流れていますが、いつ訪れてもAu Temps Jadisはいい意味で印象がほとんど変わりません。ブロカントの内外観と雑貨たちの効果もあり、時間が止まっているのではないかと思えるほど。
でも本当は同じ日は二度と訪れず、さまざまな事情や変化は頼んでもいないのにやってくるもの。それらに対して軽やかに、ときに大胆に戦っているにもかかわらず、いつでも同じ顔と同じ味で、「こちらは変わりなく元気ですから、いつでもいらっしゃい」と迎えてくれているような気がするAu Temps Jadis。ノスタルジックな雰囲気もクレープの味も大好きですが、なによりもそのおおらかな空気にほっとできるから、明日も、10年後もきっと行きたくなってしまうのかもしれません。
あなたが10年後もまた行きたいと思うカフェはどこですか?
ではまた次回、このページで。別の編集部員がリポートをお届けしますので、お楽しみに。
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