VOICE 37 沖縄県・南城市「THE CHEESE GUY」ジョン・デイビスさん
南国・沖縄産のチーズと聞いて、意外に思う人も多いでしょう。しかも作るのはたっぷりの髭をたくわえたイギリス紳士。さらに言うと、何十種と揃うチーズはどれも他では出合えない、地域性を感じるユニークなものばかり!
そんなチーズの生みの親、ジョン・デイビスさんが来日したのは1976年。最初は東京、その後、札幌へと移り住んで英会話学校を経営した後、2006年、引退し温かい場所で暮らそうとやってきたのが沖縄でした。チーズ作りを始めたのは8年ほど前、ジョンさんが日常で感じていたちょっとしたストレスがきっかけ。「沖縄にあるのはプロセスチーズばかり。ナチュラルチーズが食べたい!」。
曰く「誰でもアクセスできる巨大図書館」=インターネットで調べながらチーズを作り始めたジョンさんが発見したのは、沖縄の多湿な気候が発酵食品作りに最適なこと。現在は南城市内にある「親泊牧場」の敷地内に工房を設け、搾りたての生乳でチーズを作ります。ジョンさんが「脂肪分が高く、すごくクリーミー」とほれ込む生乳と合わせるのは、フーチバ(よもぎ)やゴーヤ、泡盛、島ニンニクといった沖縄らしい素材の数々。
ローカルなショッピングモールの片隅の小さな店で、ずらりと並ぶチーズの中から好みのものを見繕ってもらうのは、今や地元ファンにはおなじみの楽しみ方となりました。悠々自適な暮らしを求めお金を貯めて沖縄へ来たものの、「チーズ作りのせいで、お金はもうない(笑)。でもこっちの方がずっと楽しいからいいよ」と笑うジョンさん。
スーパーに並ぶプロセスチーズ一辺倒だった沖縄に新たなチーズ文化の火を灯した “チーズおじさん”の頭の中には、まだまだ色々なアイデアが。国産チーズと言えば沖縄、そんな日が来るかもしれません。
THE CHEESE GUY
TEL.090-2051-5188
住所/沖縄県南城市大里字仲間1155 JAアトール内
SHOP/直売あり、その他、那覇市「デパートリウボウ」などで販売
VOICE 38 沖縄県・宮古島市「宮古島チーズ工房」冨田常子さん
東京生まれの冨田さんの運命を変えたのは、旅先として選んだ宮古島でのできごと。「釣り中に地元の人に話しかけられて、1日でいっぱい友人ができちゃったの」。思い切って移住を決意した冨田さん、その後、地元酪農家との縁がきっかけでチーズ作りの魅力にハマり、現在は1人で工房を切り盛りします。
力を入れるのが山羊乳100%で作るチーズ「ハイジ」シリーズ。沖縄では昔からたんぱく源として重宝される山羊も生産者が減り、やむなく県外の山羊乳を使いますが、所属する山羊生産組合の活動が実り「来年には宮古島産山羊ミルクのチーズができるかも!」と冨田さん。
一方、牛の生乳で作る「まる」シリーズは南国らしい味のラインアップが自慢。島愛溢れる彼女のチーズは、今やすっかり地域の特産品です。
宮古島チーズ工房
TEL.0980-77-8064
住所/沖縄県宮古島市城辺字保良344-9
SHOP/直売あり。その他、宮古島市「Beads and Knit cafe Fika」などで販売
VOICE 39 宮崎県・小林市「ダイワファーム」大窪和利さん(左)誠朗さん(右)
広大な牧草地も放牧場も持たない郊外の牧場で、トップクラスのチーズを作り続ける職人がいます。「ダイワファーム」大窪和利さんの信念は「と
にかく美味しい牛乳を作る」こと。牛舎に活性炭を敷く、国有林から引く水を牛に与えるなど独自の工夫で、牛乳の質を追求します。
和利さんがチーズの試作を始めた頃は、国産ナチュラルチーズの黎明期。「『宮崎では無理』と言われ、悔しくて火がついちゃって」。“チーズと言えば北海道”の先入観を覆し、国内外のコンテストの常連受賞者となるのはその6年後。今では息子の誠朗さんも製造に加わり、味を守ります。
和利さんが「作るのは簡単。でも突き詰めると一番難しい」と語る「モッツァレラ」は工房の代表作。驚くほどのミルク感にその実力が伺えます。
ダイワファーム
TEL.0984-23-5357
住所/宮崎県小林市東方4073
SHOP/直売あり、その他、小林市「コープみやざき 小林店」、宮崎市内「フーデリー」各店舗などで販売
VOICE 40 鹿児島県・鹿屋市「kotobuki CHEESE」景山淳平さん
街中でひときわ目を引くおしゃれな建物の一角が、昨年オープンした「kotobuki CHEESE」の工房。母体は畜産王国・鹿児島県でシェア率No.1の飼料会社です。「生産者と消費者を繋ぐ」をコンセプトに、使われる生乳は全て同社の飼料を食べて育った県産牛のもの。さらに隣接するレストランでは作りたてのチーズが味わえるとあり、連日地元民でにぎわいます。
毎日130ℓの生乳からチーズを仕込む職人が、シェフから転身した経歴を持つ景山さん。「今はフレッシュチーズがメインですが、色々なタイプを試したくて。料理に活用できるような熟成チーズなどもいいですね」。今後、地元産芋焼酎で洗ったウォッシュチーズなどを発売予定。地域に根差した工房として成長を遂げる注目のスポットです。
kotobuki CHEESE
TEL.0994-45-7321
住所/鹿児島県鹿屋市北田町5-5
SHOP/「TAKE」にて直売あり、その他、鹿児島市「よかど鹿児島」、鹿児島市「アミュプラザ鹿児島 CENTRE」などで販売
【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」
今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、日本で唯一の国産ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約40工房、年間300種類以上のチーズを取り揃えています。
TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休
【終了しました】沖縄・九州南部エリアのチーズを味わうランチ
共創料理 with イル プロフーモ
Metro min.編集部が独自にセレクトした名店と、日本各地のチーズの生産者とのコラボレーションによるイベント「共創料理」。第10弾は取材陣とともにチーズ工房を訪れたイタリア料理店「イル プロフーモ」の永原武史シェフが腕を振るいます。まずは「THE CHEESE GUY」のジョン・デイビスさんのお話をお聞きしながら、ウェルカムドリンクとチーズの食べ比べを。その後、永原シェフがそのチーズを使用して作る全4皿の特別コースが登場します。
場 所/イル プロフーモ(東京都中央区日本橋人形町2-33-4 BPRレジデンス人形町)
日 時/2019年10月19日(土)11:30~14:30(予定)
料 金/3000円(ウェルカムドリンク、チーズ食べ比べ、全4皿のコース、食後の飲み物)
募集人数/16名(抽選)※着席スタイル
応募締切/2019年10月4日(金)
イベント実施の様子
- 概要
- 沖縄県・南城市「THE CHEESE GUY」ジョン・デイビスさんのチーズへの想いを聞きつつ、イタリア料理店「イル プロフーモ」の永原武史シェフによる、「THE CHEESE GUY」のチーズを使用した特別料理を味わった。
- 参加者の感想(抜粋)
- とっても美味しかったです。ジョンさんのチーズを買いに沖縄まで行きたくなりました。
まず、料理が素晴らしい。そして主催者の強い思いを同じテーブルの上で聞かせていただくのが、とても良かったです。最後に、バジルチーズには感動しました。
メトロミニッツ2019年10月号「TOKYO温故知新」特集
2019年9月、2020年を間近に控え、東京の各街で様々な開発が進行している中で立ち上げた特集が「TOKYO温故知新」でした。新しいものへの期待が高まる一方、過去の風景への愛着も交錯する、そんな時に生まれたテーマが「故きをたずねて、新しいものの価値や魅力を再発見してみよう」。新しいものが生まれてはすぐに過去になり、その時代、1つひとつの積み重ねがやがて歴史になってきますが、一度、過去を振り返ってみることで、今のものの価値や魅力を再発見してみませんか?というご提案です。今回は、150周年、130周年など、今年、節目を迎えた店・場所・モノやコトなどを中心にご紹介していきます。
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後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」
Photo 松園多聞 Text 唐澤理恵
※メトロミニッツ2019年10月号「TOKYO温故知新」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください