VOICE OF CHEESE 日本のチーズ職人「百人百話」 Vol.5 北海道・道南エリア 日本チーズの“こえ”に出会う旅

更新日:2019/06/04

今、着実に盛り上がりを見せている日本のナチュラルチーズ。国内の工房数は10年前の倍近くに増加し、国際コンクールで入賞を果たすチーズが続々と現れています。生乳を発酵・熟成させて作るナチュラルチーズは、自然の力と職人の製造技術のたまもの。そして何より作り手の想いが込められていることが、美味しさの必須条件です。チーズが生まれる現場から、作り手の“こえ”をお届けする本連載。

VOICE 17 北海道・長万部町「川瀬チーズ工房」川瀬昭人さん

(画像左)「納得のいくチーズを作るには変えていくことも必要。おいしいと言ってもらえるチーズを目指して毎回、試行錯誤です。」/「川瀬チーズ工房」川瀬昭人さん(画像右上)ハードチーズ「富野」は約20kg。長期熟成のタイプを美味しく作るにはこの大きさも大切な要素だそう(画像右・中央)ジロールという削り器で削った「フリル」。薄くすると香りが一層際立つ(画像右下)むっちり柔らかく芳醇な香りの「長万部ウォッシュ」842円/100g(左・中央)半年以上熟成し、木の実のような風味を持つ「富野」 842円/100g(右)

海に面した町、北海道の長万部で初のチーズ工房を営む川瀬昭人さんは、毎朝、工房の近くにある実家の牧場から生乳を運び、チーズを作っています。実家は代々100年以上続く川瀬牧場。今はお兄さんが中心となり、牛のエサの草を育む土から改良を重ね、約80頭の牛を育てています。

昭人さんは何らかの形で酪農に携わる仕事をと、酪農の学校へ進学。大手乳業メーカーに勤め、配達と営業を経て製造に携わります。チーズ製造を担当していましたが、メーカーの主力はクリームチーズ等のフレッシュタイプ。

学生の頃、研修で訪れたフランスで長期熟成のハードチーズ・コンテの美味しさに衝撃を受けていた昭人さんは、そんなチーズを作りたいと、本格的にチーズ作りを学ぶことに。北海道・十勝の工房、共働学舎で2年間学んだ後、2017年春にチーズとジェラートの店をスタートさせます。

念願のハードチーズは、牧場がある地名「富野(とみの)」と名付けられました。「富野は6カ月間熟成させるため、作ってから結果が分かるのは半年後。時間はかかりますが、将来的にはもっと長く熟成させたものも作りたい」と昭人さん。

また、2018年秋に開催された「ジャパンチーズアワード2018」ではセミハードタイプの「フリル」が銀賞を受賞しました。「真面目な人とよく言われますね。誠実な人なので、誠実なチーズですよ」と、話してくれた奥様・美和さんの温かな言葉に、昭人さんへの信頼が伝わってくる気がしました。

(画像左)「香りが素晴らしい。旨味と塩味のバランスがとれていて、料理に使うのにも良いですね」と、西麻布のフランス料理店「オルタナティブ」のシェフ斉藤貴之さん(右)(画像右上)右上のスプーンから時計回りにクリームチーズ、富野/TOMINO、長万部ウォッシュ、ブラン、長万部ラクレット、中央がフリル(画像右下)工房はコンビニだった建物を改装

川瀬チーズ工房

TEL.01377-6-7280 
住所/北海道山越郡長万部町字長万部431-14
SHOP/直売あり。その他、長万部「長万部観光協会」などで販売

VOICE 18 北海道・せたな町 「村上牧場レプレラ」村上健吾さん

(画像左)「せたなの風土を完全に表現したい。牛飼いだからこそできる、"牛ありき"のチーズ作りです。」/「村上牧場レプレラ」村上健吾さん(画像右上)村上牧場は2019年1月公開予定の映画『そらのレストラン』のモデルになっている(画像右下)「カリンパ」907円/100g

山の上に広がる牧場と、その向こうに望む日本海。そんなせたな町の絶景の中で牛たちは草を食み、牛と共に村上さん家族は暮らしています。50haの青々とした緑の地で50頭の牛を完全放牧。その放牧乳の良さを伝える手段として村上さんのチーズ作りはスタートしました。

現在作るのは「モッツァレラ」、モッツァレラを乾燥・熟成させた「スカモルツァ」、ハードチーズの「カリンパ」の3種。どのチーズも黄色の濃さが印象的。これは牛がカロテンをたくさん含む青草を食べて育ったというしるしでもあります。

牛飼いとチーズ作り、1人で両方を担っていますが、あくまでも牛ありき。「牛飼いもチーズも、日々淡々とできて、家族との時間が作れる。それが良いですよね」と、村上さんは穏やかに話します。

(画像上)工房は今年で10周年。奥様と共に(画像下)チーズにはブラウンスイスとジャー ジーの生乳を使用

村上牧場レプレラ

TEL.0137-87-2009 
住所/北海道久遠郡せたな町瀬棚区西大里359
SHOP/直売あり

VOICE 19 北海道・八雲町 「チーズ工房小栗」小栗美笑子さん

(画像左)「小栗牧場産のミルクをチーズにして、お客様に届けられることがとても嬉しいんです。」/「チーズ工房小栗」小栗美笑子さん(画像右上)牛を育てるのはご主人、隆さんの担当。(画像右下)「ペレ」1080円/100g

「牛が本来の食事である草を食べ、太陽を浴び、自分の足で歩いている。この風景から生まれたミルクで作るチーズを届けたいし、私も食べたいの」と話す小栗さん。北海道で放牧酪農と言うと、必ずと言っていいほど名前が上がるのが小栗牧場。

放牧に踏み切ったきっかけは牛の病気と、時代に先駆けて放牧酪農をしていた方との出会いだったと言います。苦労の末、牛はぐっと健康になり、家族にも余裕が生まれました。そんな放牧した牛の乳を使ったチーズ作りは自宅の鍋で家族用に作った"台所チーズ"に始まります。

本を読み、製造を繰返し、ついに2004年には小さな工房を設立。自家製梅酒で磨いたオリジナルのチーズ「ウメ」を作るなど、好奇心いっぱいで勉強熱心。「毎年1年生よ」と小栗さんは微笑みます。

(画像上)熟成中の「ペレ」。牧草の名前を冠したセミハードタイプのチーズ(画像下)小さな工房では6種類のチーズが作られている

チーズ工房小栗

TEL.0137-64-3436 
住所/北海道二海郡八雲町春日164-8
SHOP/直売あり。その他、八雲「A・COOPやくも店」、「八雲交流情報物産館丘の駅」、札幌「チーズの店コンテ」などで販売

VOICE 20 北海道・八雲町 「八雲チーズ工房」髙橋静さん

(画像左)「八雲産の生乳で、八雲の人にも安心して食べてもらえる、優しいチーズを作り続けています。」/「八雲チーズ工房」髙橋静さん(画像右上)気に入った写真を参考に建てたという工房(画像右下)「カマンベール遊楽部(ゆうらっぷ)」1404円/140g

木立に囲まれた黄色のログハウス。まるで絵本の中かと思う場所に工房はあります。酪農業に惹かれ、高校の時に岩手県から北海道酪農発祥の地・八雲に渡った髙橋さん。

実習のためノルウェーに3年程暮らし、チーズがいつも食卓にある生活を過ごしたそう。その時の経験に思いを馳せ、1996年、45歳の時に長年勤めた職を離れてチーズの道へと一念発起。自宅の地下に構えた工房では、1回に200リットルの八雲産の生乳を原料に、週2~3回のペースで製造が行われています。

カマンベールは優しく爽やかなミルクの風味、熟成が進むにつれて味わいは増していきます。「凝ったものはないんですよ」と、控えめに話す髙橋さんですが、そんな気取らなさも地元の方に愛される理由の1つかもしれません。

(画像上)優しい甘さに飲み口はさらり。ドリンクヨーグルトも作る(画像下)チーズの種類はカマンベール、さけるチーズ、モッツァレラ等

八雲チーズ工房

TEL.0137-62-4653
住所/北海道二海郡八雲町上八雲461-6
SHOP/直売あり。その他、八雲「A・COOPやくも店」、「八雲交流情報物産館丘の駅」などで販売

【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」

今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、 日本で唯一の北海道産ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約40工房、年間 300種類以上のチーズを取り揃えています。

TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休(2018年12月31日~2019年1月11日までお休み)

【終了しました】2019年2月12日(火)開催! 北海道・道南エリアのチーズを味わうディナーイベント

イベント名
共創料理 with オルタナティブ
開催場所
オルタナティブ(東京都港区西麻布3-1-19 小山ビル2F)
開催日程
2019年2月12日(火)
開催時間
19:00~21:30(予定)
料金
3000円(ウェルカムドリンク、チーズ食べ比べ、全5皿のコース)
募集人数
18名(抽選) ※着席スタイル
メトロミニッツWEB「一流の料理人がいる名店案内」に加盟するレストランと、日本各地の生産者とのコラボレーションによるイベント「共創料理」。第5弾は取材陣とともに北海道を訪れたフランス料理店「オルタナティブ」の斉藤貴之シェフが腕を振るいます。まずは「川瀬チーズ工房」の川瀬さんのお話をお聞きしながら、ウェルカムドリンクとチーズの食べ比べを。その後、斉藤シェフがそのチーズを使用して作る全5皿の特別コースが登場します。
メトロミニッツ「家飲み革命」特集

家飲み革命

デジタル雑誌
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後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」

Photo 保苅徹也 Text 足立唯
※メトロミニッツ2019年1月号「家飲み革命」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください

※記事は2019年6月4日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります