VOICE 09 北海道・旭川市 「伊勢ファーム」伊勢昇平さん
冬はマイナス30℃を下回り、夏は35℃に達する日もあるほど寒暖差が激しい旭川市江丹別町で「世界一のチーズを作る!」と宣言するのが、「江丹別の青いチーズ」を手掛ける伊勢昇平さんです。
酪農を営む両親のもと帯広畜産大学に進学、卒業後は有名チーズ工房で基礎を学び、フランス修業経験も持つ伊勢さんですが、「昔は親の仕事が嫌で。地元にもコンプレックスがありました」と語ります。「自分を肯定したくて世界を目指そうと考えた時、いいなと思ったのがチーズ職人の道でした」。
幸い、放牧地で青草を食べて育つ実家の牛の生乳は、風味豊かでチーズ向き。完成したブルーチーズは独特の香りが苦手な人でも食べやすいと好評で、国際線ファーストクラスの機内でも提供されるように。
「でも美味しいチーズなんてヨーロッパには山ほどある。江丹別でしかできない、絶対替えの利かないチーズを作りたい」。現在取り組むブルーチーズの“アレンジ熟成”はその真骨頂。「地酒の酒粕で覆ったり、地元産ワインに浸したりして追熟させます。美味しいだけでなく、他にはない付加価値を付けたいんです」。
そして次なる目標は「江丹別を世界一面白い場所にすること」と伊勢さん。「周りを巻き込んで“田舎の存在意義”を示したい。実際に知人が移住して店を開くことが決まっていますが、僕のチーズはそのプラットフォーム。この街自体がブランドになったら面白いでしょう」。美味しいチーズには、熱きフロンティア精神も詰まっているのです。
伊勢ファーム
TEL.0166-73-2148
住所/北海道旭川市江丹別町拓北214
SHOP/直売あり(伊勢ファームショップ「カウ&カーフ」)その他、東京・愛宕「フェルミエ」、北海道・札幌「北大マルシェCafé&Labo」などで販売
VOICE 10 北海道・興部町 「ノースプレインファーム」大黒宏さん
オホーツク海に近い「ノースプレインファーム」は、飼料から加工品まで有機認証を得た牧場。一方、1990年代初頭にいち早くチーズ作りを始め、かの「生キャラメル」を最初に発売するなど、酪農の6次産業化の先駆者としても有名です。
現在は120ヘクタールの牧場で育つ50頭の牛の生乳から、7種のチーズを製造。代表の大黒宏さんは「牛が草を食べ、糞が土に還り草となる。そんな循環が一番自然」と語ります。驚くほど香り豊かな有機生乳で作るチーズは、牧草が茂る夏、雪に閉ざされる冬といった気候風土を反映し、季節で味が変化。
「でも土地の個性が出ているかと言えば、まだまだ。地域の味を作るには、第一次産業から加工、小売・流通までを町で担わないと」。真のテロワールの表現を目指し、地元密着型店舗や媒体作りに邁進するなど、飽くなき挑戦は続きます。
VOICE 11 北海道・興部町 「チーズ工房 アドナイ」堤田ひかるさん、 まことさん、もといさん
近隣の牧場から届く生乳でチーズを作る、生粋の職人一家が堤田家。元々乳製品メーカーの社員だった父・克彦さんが興部町へ移住し、ゼロから工房を始めたのが1994年のこと。
当初「10人中2人が気に入ってくれればいい」と考えていたチーズは料理人たちに支持され高評価を受けてきましたが、目下のところ目指すのは、美味しさはもちろん「できる範囲で生産量も増やし、価格も手頃なもの」と克彦さん。根底にあるのは、日本でもチーズがもっと一般的に食べられる存在になればという強い想いです。
フレッシュからウォッシュ、セミハードまで揃う15種のチーズを始め、ヨーグルトや本格的な焼き菓子まで、選ぶのが楽しくなる品揃えの豊富さも出色。寡黙ながら情熱的な克彦さんの志を継いで現在製造を担うのは、若き三兄弟。今後の活躍に注目が集まる気鋭のチーズ工房です。
VOICE 12 北海道・美深町「きた牛舎」島英明さん
父が牛の仲買人だったという島英明さん。人と牛が共に暮らす原風景を残したいと、会社勤めを辞め、2010年にチーズ工房を設立しました。
今では日々、隣接する「島牧場」で朝搾乳された生乳を新鮮なうちに仕込み、6種のチーズを作ります。中でも自信作は、加熱するととろりと溶ける「牧場のラクレット」。「美深の名産品・ジャガイモと合わせ、地元の方々にも食べてもらいたくて」と島さん。ジャガイモはもちろん、パンに載せても、もちろんそのままでも。多彩な味わい方が楽しめます。
自分のチーズを“おとなしい味”と表現する島さんですが、つまりそれは、誰にとっても食べやすい優しい味ということ。「野菜や塩とさっと和えるだけでも十分美味しい。難しく構えることなく、毎日の食卓で気軽に食べてほしいんです」。甘いミルクの風味に、島さんの温かい人柄が重なります。
【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」
今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、 日本で唯一の北海道産ナチュラルチーズ専門店「チーズの こえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約35工房、年間 300種類以上のチーズを取り揃えています。
TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休
【終了しました】2018年11月24日(土)開催! 北海道のチーズを味わうランチパーティ
- イベント名
- 共創料理 with イズム
- 開催場所
- イズム(東京都渋谷区神宮前3-39-9 ヒルズ青山B1F)
- 開催日程
- 2018年10月27日(土)
- 開催時間
- 11:30~15:00(予定)
- 料金
- 3000円(ウェルカムドリンク、チーズ食べ比べ、全6皿のコース)
- 募集人数
- 18名(抽選) ※着席スタイル
- メトロミニッツWEB「一流の料理人がいる名店案内」に加盟するレストランと、日本各地の生産者とのコラボレーションによるイベント「共創料理」。第3弾は、取材陣とともに北海道を訪れたフランス料理店「イズム」の原田隼太郎シェフが腕を振るいます。まずは「伊勢ファーム」の伊勢昇平さんのお話をお聞きしながら、ウェルカムドリンクとチーズの食べ比べを。その後、原田シェフが「伊勢ファーム」のチーズを使用して作る全6皿の特別コースが登場します。
東京のパン
- デジタル雑誌
- 購入はこちらから
こちらもチェック!メトロミニッツ「日本チーズの“こえ”に出会う旅」関連記事
後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」
Photo 松園多聞 Text 唐澤理恵
※メトロミニッツ2018年11月号「東京のパン」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください