VOICE 01 北海道・足寄町 「しあわせチーズ工房」 本間幸雄さん
目指しているのは"土地の味を作る"こと。ここには素晴らしい酪農家がいて最上級の牛乳があるからです
「私が好きなチーズは、コンテやグリュイエールのような複雑さと長い余韻を持つもの。でも駆け出しの頃は理想の味が出せず悩むこともありました」。そう話す本間幸雄さんは、銅釜と直火を使った伝統的な製法でチーズを仕込む注目の若手職人。高校時代からチーズ職人に憧れ、卒業後は各地の工房でチーズ作りに邁進してきました。試行錯誤しながら本間さんが行き着いた味の決め手は、原材料である生乳の質。
実は、日本の牛乳のほとんどは牛舎で育つ牛のもので、広大な北海道でさえ、放牧牛は全体の1割にも満たないそう。「自分が好きなヨーロッパのチーズは、放牧された牛の生乳で作られることがほとんど。そこで各地の農家さんに放牧牛の牛乳を分けてもらって作ったら、とにかく美味しくて! 牛乳のことを何も知らなかったんだとショックでした」。そんな本間さんが酪農の勉強のため門を叩いたのが、現在の工房の隣にある「ありがとう牧場」。
牧場主の吉川友二さんは、自然に近い状態の牧草地に牛を放牧し、四季に沿った循環型農業を実践する酪農家です。「吉川さんの牧場の牛乳は草の香り。上手く熟成させると、それがより強く感じられます。今は自分が好きなタイプのチーズにこだわるより、土地の個性を表現する方が面白い」。
本間さんの代表作「幸(さち)」は一昨年のJapan Cheese Award 2016で金賞を受賞。のびのび育った牛の牛乳の香りと旨みが凝縮されたチーズには、足寄の自然が詰まっています。
しあわせチーズ工房
TEL.0156-26-2585
住所/北海道足寄郡足寄町茂喜登牛141-4
SHOP/直売あり(訪問の際は要連絡)。その他、札幌「ブーランジェリーコロン」、「フーズバラエティすぎはら」、帯広「藤丸百貨店」などで販売
VOICE 02 北海道・足寄町「ありがとう牧場」 宍倉優二さん
フリーカメラマンからチーズ職人へ転身し、右ページで紹介した「ありがとう牧場」で働く宍倉優二さん。酪農の仕事とチーズ作りを両立させる、日本でも数少ない職人の1人です。
「自然環境の中に身を置きたいと農業の道へ進んだ時、初めて本格的なナチュラルチーズを食べ、その美味しさに衝撃を受けました。そして牛を育てながらチーズを作る、フランスのフェルミエ(農家製チーズ工房)の暮らしに惹かれるようになったんです」。
現在、手掛けているのはブルーチーズのみ。「1種類だけというスタイルが、物ごとを突き詰めたい自分の性格に合っている気がします」。そんな宍倉さんが目指すのは、バターのような口溶けとミルク感を持つチーズ。「初夏にたっぷり牧草を食べた牛の牛乳で作るチーズは、香りが最高。季節によって味が違うのも、チーズの面白さだと実感しています」
ありがとう牧場
TEL.0156-26-2082
住所/北海道足寄郡足寄町茂喜登牛98-4
SHOP/直売なし。「道の駅 あしょろ銀河ホール21」などで販売
VOICE 03 北海道・足寄町 「あしょろチーズ工房」佐々木 司さん
酪農王国・十勝には、全国で唯一JAが運営するチーズ工房が。その「あしょろチーズ工房」に所属する佐々木さんは、十勝の有名チーズ工房出身の実力派職人です。
現在は町内の農家から届く牛乳で、常時10種のチーズを生産中。「種類が多いのは、自分の好みのチーズに出合ってほしいから。小規模ながら生産量も保ち、誰もが食べやすく価格も抑えめのチーズを作る。そしてチーズの魅力を知ってもらうことが、私たちの使命なんです」。
独自の工夫は、主力商品の「ころ」にも。棒状のモッツァレラチーズをカットし、約2週間転がしながら熟成させたこちら、まるでホタテの干し貝柱のような食感と、噛めば噛むほどあふれ出る旨みが特徴。ユニークなネーミングと見た目が相まって、幅広い世代に人気だそう。「足寄は同世代の職人が活躍する場所。刺激を受け合えるいい環境です」
あしょろチーズ工房
TEL.0156-25-7002
住所/北海道足寄郡足寄町中矢673-4
SHOP/直売なし。足寄町内のAコープ、直売所「寄って美菜」などで販売
VOICE 04 北海道・帯広市 「十勝加藤牧場」加藤佳恵さん
300頭以上の牛を飼育する「十勝加藤牧場」。そのうち120頭が茶色い毛色のジャージー牛です。ホルスタインに比べ搾乳量は減るものの、その分脂肪分が高い濃厚な牛乳が採れるのがジャージーの特徴。
「30年前に父が『これからは量より質の時代』と、他に先駆けジャージー牛を飼い始めたのが原点です」と語るのは、その牛乳でチーズを作る加藤佳恵さん。現在は月1回、市の研修施設内の工房でゴーダチーズを仕込みます。
製造を始めて数年、「まだ試行錯誤中で、納得いかない味の時も多くて」と謙遜する加藤さん。ゴーダ1種に絞っているのも、チーズ製造の基本となる種類ゆえ。「でも私たちは、ジャージー牛の牛乳の美味しさを一番知っている。だからこそできるチーズがあるはずだと信じています」。来年には牧場の敷地内に工場を新設予定。加藤さんの夢は広がります。
十勝加藤牧場
TEL.0155-60-2107
住所/北海道帯広市美栄町西8線130
SHOP/直売なし。帯広市内の「藤丸百貨店」などで販売
【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」
今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、 日本で唯一の北海道産ナチュラルチーズ専門店「チーズの こえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約35工房、年間 300種類以上のチーズを取り揃えています。
TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休
【終了しました】2018年10月6日(土)開催! 北海道のチーズを味わうランチパーティ
- イベント名
- 共創料理 with ロッツォシチリア
- 開催場所
- ロッツォシチリア(東京都港区白金1-1-12 内野マンション 1F)
- 開催日程
- 2018年10月6日(土)
- 開催時間
- 11:30~14:30(予定)
- 料金
- 3000円(ウェルカムドリンク付き着席ランチ)
- 募集人数
- 25名(抽選)
- メトロミニッツWEB「一流の料理人がいる名店案内」に加盟しているレストランと、日本各地の様々な生産者とのコラボレーションによる特別企画「共創料理」。その第1弾となる本イベントで腕を振るうのはシチリア料理の名店「ロッツォシチリア」の中村嘉倫シェフ。取材陣とともに北海道の生産者を訪ね、その高い品質に「日本のチーズの概念が変わった!」とも。イベントでは中村シェフが「しあわせチーズ工房」のチーズを使用して作る1日限りの特別メニューや、今回ご紹介した4生産者のチーズ食べ比べを、「しあわせチーズ工房」の本間幸雄さんのお話をお聞きしながら楽しめます。
メトロミニッツ2018年9月号「遠征レストラン」
- デジタル雑誌
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こちらもチェック!メトロミニッツ「日本チーズの“こえ”に出会う旅」関連記事
後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」
Photo 松園多聞 Text 唐澤理恵
※メトロミニッツ2018年9月号「遠征レストラン」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください