バレエ

華やかなバレエのルーツと歴史に迫る(1)|バレエの起源から第2の誕生まで

更新日:2020/06/15

バレエは、台詞や歌詞を伴わない舞踊劇であり、踊り・音楽・美術・衣装・舞台装置などすべてを含めた総合舞台芸術。イタリアの宮廷から発生し、フランスに移入され、ロシアで発達した。日本にはロシア経由でもたらされ、近年では老若男女を問わず楽しまれている。バレエを観たことがあっても、そのルーツを知らない人もいるのでは? そこで今回は、発祥から500年を経てもなお愛され続けるバレエの歴史をご紹介します。

東京バレエ団 ブルメイステル版『白鳥の湖』 Photo by Kiyonori Hasegawa

~バレエの起源から第2の誕生まで~

バレエ

【第1の誕生】バレエの起源はイタリア。豪商や貴族の宴会の余興だった

バレエは“3度生まれた”とも言われていて、最初に誕生した後に2回生まれ変わり、現在私たちが観るようなバレエの形式となった。まずは1回目の誕生、バレエの起源から紐解いていこう。

15世紀頃のルネサンス期のイタリアでは、東方貿易によって富が集積し、豪商や貴族の館では盛んに宴会が催されていた。その宴会では余興として、演劇や詩の朗読・器楽・歌、そして舞踊からなる、バラエティショーのような催しが上演された。この催しは「バロ」や「バレット(小さなバロ)」と呼ばれ、これがバレエの起源とされている。現在の舞台でも、バレエダンサーたちは貴族のようなお辞儀(レヴェランス)をするが、それはこの伝統の名残なのだとか。

このバレットはヨーロッパ各国の宮廷へと普及していったが、最も豊かに発展したのは、ヨーロッパ最大であったフランス宮廷である。今では「宮廷バレエ」と呼んでいるが、これは踊りだけでなく、イタリアのバレット同様、演劇・音楽・舞踊からなるバラエティショーであった。

バレエ
ルーブル美術館中庭のルイ14世乗馬像

【第2の誕生】宮廷バレエから劇場へ、「演劇バレエ」の誕生

宮廷バレエが繁栄の頂点に達したのは、ルイ14世の時代。彼は少年時代からバレエダンサーとして舞台に立っていた。何かにつけ自分を太陽に例えたことから“太陽王”とも呼ばれるが、バレエにおいても好んで太陽の役を演じた。ルイ14世は、1661年には舞踊教師の組合である王立舞踊アカデミーを、1672年には王立音楽アカデミー(現在のパリ・オペラ座)を創立し、バレエの普及に大きく貢献した。しかし、彼が中年になって肥満のために舞台を引退すると、宮廷バレエは急速に衰退し、バレエはその舞台を宮廷から劇場へと移し、以後は劇場芸術として発展していくこととなる。

18世紀前半には、「オペラ・バレエ」というジャンルが確立した。オペラが中心でバレエは付属であったが、18世紀中頃にオペラに隷属していたバレエは反乱を起こし、歌も台詞も排除した「非言語舞台芸術」として独立した。こうしてバレエは、バレエのみで上演されるようになったのだ。これがバレエの第2の誕生であり、「演劇バレエ(バレエ・ダクシオン)」と呼ぶ。

バレエ

監修|鈴木 晶(すずき・しょう)

法政大学名誉教授、早稲田大学客員教授、舞踊評論家。東京大学文学部ロシア文学科卒、同大学院博士課程修了。著書に『バレエ誕生』『オペラ座の迷宮』『バレリーナの肖像』(いずれも新書館)、『バレエの魔力』(講談社)など。訳書に『ディアギレフ』(みすず書房)、『ニジンスキーの手記』(新書館)ほか多数。ミュージカルやフィギュアスケートも研究している。

【特集】小さい頃からの女性の憧れ!麗しきバレエの世界

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東京バレエ団 ブルメイステル版『白鳥の湖』 Photo by Kiyonori Hasegawa

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Production Cooperation/SHOU SUZUKI、WRITINGS/MEGUMI OGURA

※記事は2020年6月15日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります