歌舞伎をもっと身近に感じてもらうべく、難しそうなストーリーを現代風にアレンジしてお届けする「恋する歌舞伎」。今回は、江戸時代、お正月に上演するのが吉例となっていた、曽我兄弟の仇討を素材にした作品「曽我物」を3つご紹介。歌舞伎ライター・関亜弓さんのわかりやすい解説と、思わず笑ってしまうカマタミワさんの超訳イラストとともに歌舞伎の世界を楽しんで。
「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」
華やかなパーティーをぶち壊しにきたのは、節度ある長男と血気盛んな次男坊!
工藤祐経(くどうすけつね)の館では、富士の巻狩り(※)の総奉行に任じられた工藤が祝宴を催し、多くの大名が集まっている。そこへ兄の曽我十郎(そがじゅうろう)と、弟の曽我五郎(そがごろう)の兄弟が工藤との対面を願いでる。2人の父・河津三郎は18年前、祐経に闇討ちをされたという恨みがあるため、その仇を討とうと、五郎は工藤に詰め寄るが・・・。ストーリーの続きは動画でチェックしてみて。
※四方から狩り場を囲み、獲物を中に追い込んで捕らえる狩のこと
「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」
江戸でいちばんケンカっ早い伊達男。真の姿は不良かヒーローか!?
江戸でいちばんの賑わいをみせる歓楽街・吉原。曽我五郎は源氏の宝刀・友切丸(ともきりまる)を探し出すために、侠客・助六(すけろく)に成りすまし、吉原に出入りし、あちこちで喧嘩を売っては相手の刀を見定めている。吉原で豪遊する老人・意休(いきゅう)は、助六の恋人であり、吉原一の花魁・揚巻(あげまき)にご執心。揚巻や助六にむかって、助六の悪口を言っている。もちろん助六と揚巻は黙っていない! 美しく活気あふれる“江戸”の物語を、まずは、イラスト動画で楽しんで。
歌舞伎十八番の内「矢の根(やのね)」
ビジュアルも振る舞いも規格外!仇討まっしぐらな次男のお正月とは
曽我五郎が敵の工藤祐経を討つため、矢の根(矢の先端)を研いでいると、大薩摩文太夫(おおざつまぶんだゆう)が年始の挨拶にやってきて、宝船の絵を置いていく。五郎が砥石の下に絵を敷き、これを枕に昼寝をすると、兄の十郎が夢に現れ、敵の工藤に捕らえられたので助けて欲しいと告げる。目を覚ました五郎は馬に乗り、馬の背に積んであった大根を鞭(むち)にして、工藤の館をめざすのだった。五月人形に見立てた五郎の扮装や錦絵のような演出、豪快な荒事など、歌舞伎の魅力が詰まった一幕。
「寿曽我対面」も上演!歌舞伎座『九月大歌舞伎』
歌舞伎座『九月大歌舞伎』には、吉右衛門、梅玉、玉三郎や幸四郎、松緑、猿之助、菊之助など豪華な役者が出演する。上演されるのは、曽我兄弟が父親の敵を討つが相手は一枚上手だった「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」、男と女の心のすれ違いを描いた「色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)」、名月の夜に起きた温かい家族の物語「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」、恋に悩む娘の舞踊「鷺娘(さぎむすめ)」。1部につき1幕のみの上演で料金もリーズナブルなので、これを機に憧れの歌舞伎デビューをしてみては?
【特集】初心者でも、ツウでも!たのしい歌舞伎案内
“歌舞伎=難しそう”って思っていない? 義理人情、恋愛模様に笑いと涙が詰まったドラマチックな物語や、華やかで大胆な衣装や舞台、演出、そしてなんといっても、伝統芸能を受け継ぐ役者たちの圧巻の演技! 一度観たらハマること間違いなし。そんな歌舞伎の演目や、公演情報、劇場についてご紹介します。