人間VS鯉の世界。代々続く、因縁の対決やいかに!

更新日:2019/02/19

第43回 恋する歌舞伎は、博多座開場20周年三月花形歌舞伎で上演予定の「鯉つかみ」に注目します!
日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう・・・なんて思ってない? そんな歌舞伎の世界に触れてもらうこの連載。古典ながら現代にも通じるストーリーということを伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

恋する歌舞伎 第43回
『鯉つかみ』

鯉つかみ

【1】ムカデ退治の水面下、登龍を阻まれた鯉キングたちの復讐劇が始まる。

滋賀の三上山には、大きな百足(むかで)が生息している。この大百足が毒を吐くと田畑が荒れるので、百姓たちは困り果てている。そのために、年に一度村から生贄を捧げ治安を維持しているのだった。しかし今年は、俵藤太(たわらのとうた)という男が、宝剣「龍神丸」を使って大百足を退治することに成功。大百足は大量の血を吹き出して息絶えた。

ところがこの大百足退治によって被害を被ったのは、琵琶湖に住む“鯉”の王族達だった。
琵琶湖の水中では、鯉王の息子が龍に変じる祝宴が開かられている。すると突然、水中が血潮で赤く染まり始める。これは先ほど退治された大百足の毒の血潮だったのだ。不浄の血で汚れてしまっては龍に変じることはできない。息子の登竜を願ってやまなかった鯉王は、百足を倒した俵藤太を恨み「藤太のことを末代まで呪う」という誓いを立てる。このため、藤太はこれから鯉の精に悩まされることになるのだった。

鯉つかみ

【2】姫が恋にうつつを抜かしている中、お家は宝を盗まれ大騒動!

時は移ろい、ここは京都の清水寺。俵藤太の末裔「釣家」の息女・小桜姫(こざくらひめ)の一行が花見を楽しんでいる。姫の美しさに心を奪われた信田清晴が一緒に花見をしたいと所望するが断られてしまうので、清暙の家来たちが強引に姫を連れ去ろうとする。と、そこへ志賀之助(しがのすけ)という男が現れ、姫を助けそのまま去っていく。正体はわからないが勇敢なこの男に、姫は一瞬で心を奪われてしまった。
しかしこの運命的な出会いをよそに、悪事を企む者たちが宝剣・龍神丸を狙ってうごめいていた。関白中納言橘広継は、手下の刑部という男や釣家の裏切り者の家臣を利用して、宝物蔵から龍神丸を奪う。しかしそこへ釣家の奴(やっこ)・瀬田平が追いかけてきた。両者は激しく切り結ぶが、最終的には突然現れた志賀之助らしき男に龍神丸を奪われてしまうのだった。

鯉つかみ

【3】恋わずらいの相手は鯉だった!?愛しい彼は一体どこに

龍神丸が盗まれた釣家の屋敷では、家臣たちが刀の行方を探している。一方、小桜姫は志賀之助を想うあまり床に伏してしまい、志賀之助を夢にまで見るほど。夢から覚めた姫はこの再会が現実でないことに落胆をするが、今度は本物の志賀之助が現れる!喜ぶ姫は、奥で逢瀬を楽しむのであった。
とそこへ、関白家の使者たちがやってきて「龍神丸を献上せよ」と迫られる。困っている釣家の面々の元へ、瀬田平が龍神丸を持参するので安堵をするが、刀を抜くと嵐が起き、奥で密会を楽しむ姫たちが障子に映し出されてしまう。しかし驚くことに、姫ともう一方の影は、志賀之助の影ではなく、なんと大きな鯉の影なのだった。

鯉つかみ

【4】恨みをもった鯉の逆襲。水中の戦いの軍配はどちらに上がる!?

実はこの志賀之助の正体は、琵琶湖に生息する鯉の精の化身。釣家への積年の恨みから、釣家を滅亡させようと志賀之助に化けて現れたのだった。
そこへどこからか矢が放たれ、見ごと鯉の精に命中する。この矢を放った者こそ、本物の志賀之助。彼は水中へと逃げていく鯉の精を追いかけていく。

とうとう琵琶湖までたどり着いた志賀之助の前に、大鯉が現れる。雨が降りしきる中、両者一歩も譲らず激しく戦うが、ついに志賀之助が止めを刺すことに成功。因縁の人間と鯉の争いに終止符を打つのだった。

『湧昇水鯉滝(わきのぼるみずにこいたき)鯉つかみ(こいつかみ)』とは

本作は明治9(1876)年11月大阪角座初演の「新舞台清水群参(しんぶたいきよみずもうで)」が元になっている。さらに「湧昇水鯉滝」の外題で大正3(1914)年9月、東京本郷座で初演。上演を繰り返している。

2019年 『三月花形歌舞伎』

監修・文/関亜弓
歌舞伎ライター・演者。大学在学中、学習院国劇部(歌舞伎研究会)にて実演をきっかけにライターをはじめ、現在はインタビューの聞き手や歌舞伎と他ジャンルとのクロスイベントなども行う。代表を務める「歌舞伎女子大学」では、現代演劇を通して歌舞伎の裾野を広げる活動をしている。

イラスト/カマタミワ

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※記事は2019年2月19日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります