「グラシエ」とはアイスクリーム専門の職人資格を保有したシェフのこと。季節を問わずアイスクリームを楽しむフランスでは、「グラシエ」の資格も持つパティシエが多いそう。日本でも最近になって、グラシエの修行を積んだシェフによるアイスクリームが楽しめるようになっている。
今回は、そのグラシエが作るアイスはなにが違うのか、スイーツジャーナリストの平岩理緒さんに話を伺った。
グラシエってどんな職種?
グラシエとは、一言で言うと「アイスクリーム職人」のこと。アイスクリーム専門の職人資格を保有したシェフを指す。
「フランスに限らず、ヨーロッパでは『パティシエ』『グラシエ』『ショコラティエ』『コンフィズール』の4つのの資格がそれぞれ別なので、複数取っている職人が多いです。たとえば、ベルギーのピエール・マルコリーニはショコラティエとして有名ですが、実は、グラシエの資格も持っているんですよ」と平岩さん。
フランスのお菓子屋さんでは、焼き菓子や生菓子のほかに、夏はアイスを販売することが多く、通年で扱う店も少なくないとか。
「アイスってフランス人の生活にとても密着している存在なんです。夏に限らず冬でも食べますし、“アントルメグラッセ”と言われるようなアイスケーキも1年中売っている店が多いですね。最近パリではM.O.F.を持つグラシエによるアイス専門店が増えてきていています」。
フランスの有名なグラシエの中には、コンサルティングや技術指導など、世界を舞台に活躍する人物も多いそう。
グラシエのつくるアイスはなにがちがう?
ジェラートやソフトクリームなどさまざまなアイスがあるが、グラシエのつくるアイスはなにが違うのだろうか。
「グラシエはパティシエの修行もされていることがほとんどなので、ケーキの要素を感じるのが大きな特徴でしょうか。たとえば、フランスの伝統的なデザートで桃とフランボワーズ、バニラアイスクリームを使った『ペーシュメルバ』を再構成したものだったり、お酒との合わせ方もとても上手ですね。フランス菓子作りで蓄積してきたノウハウをアイスに応用されている方が多いと思います」。
グラシエのつくるアイスの楽しみ方は
日本でも、ここ10年くらいでさまざまなアイス店がオープンし、この5年ほどでアイスも扱うパティスリーが増え、気軽にグラシエのアイスを楽しむことができるようになった。
グラシエのつくるアイスの楽しみ方について、平岩さんは「まず、ミルクかチョコ系を楽しんでみるのがおすすめ」と話す。
「ミルクとかチョコレートはベーシックで変化の少ない素材なので、その店の空気の含ませ方とか滑らかさの特徴がわかりやすいんです。フレッシュフルーツが入っているアイスは、製造技術以上に、完熟度など、状態に左右されます」。
また、お菓子屋さんがつくるアイスだからこそ、その店のシェフならではのスペシャリテの味があるのだそう。
「たとえば、巣鴨にあるパティスリー・ヨシノリ・アサミの浅見シェフは、他店ではあまり見ないアマゾンフルーツを使った『クプアス』というアイスや、シェフが経験を積んだアルザス地方のお菓子でスパイスの効いた『パン・デピス』を使ったアイスなど、このシェフだからこその味わいを知るのも楽しいです」。
平岩さんは「シェフのスペシャリテがわからなければ、ぜひお店の方に気軽に聞いてみて」とも。いわば、シェフの歩んできた道が現れるのがスペシャリテ。そのシェフだからこそつくれる特別なアイスを味わいながら、グラシエの世界を覗いてみては。
今食べてみたい「日本で活躍するグラシエのアイスクリーム」3選
【巣鴨】パティスリー・ヨシノリ・アサミ
巣鴨の「パティスリー・ヨシノリ・アサミ」。2011年にM.O.F.コンクールのグラシエ部門で、外国人として初めてファイナリストになる快挙を遂げた浅見欣則シェフのアイスクリームが味わえる。本場フランスでも評価されたアイスを味わってみて。
【中央林間】MAISON GIVRÉE
中央林間にある江森宏之シェフのパティスリー「MAISON GIVRÉE(メゾン ジブレー)」。M.O.F.フランス最高職人フランクフレッソン氏に師事し、採れたてフルーツを使ったスイーツづくりを学んだ江森シェフによる、こだわりアイスを召しあがれ。
【仙川】LA VIEILLE FRANCE
木村成克シェフによるアイスクリーム・シャーベットを専門にした「LA VIEILLE FRANCE(ラ・ヴィエイユ・フランス)仙川店」。パリの老舗店「LA VIEILLE FRANCE」で修行を積んだ木村シェフのつくるアイスクリームは、本場フランス仕込みの濃厚な味わい。
教えてくれた人 平岩理緒さん
- PROFILE
- スイーツジャーナリスト®。マーケターとして食品メーカーなどのプロモーション、リサーチを担当し、商品開発・販促に関わった経験を生かし、独立。菓子の基礎知識を製菓学校で学ぶ。
1カ月に200種類以上のスイーツを食べ歩き、雑誌やWEB、ラジオ、TV等で、スイーツを中心とする「食」の情報を発信。執筆のほか、セミナー講師、イベント司会、企業の商品開発コンサルティングまで幅広くこなす。主な著書・監修本は『厳選ショコラ手帖』(世界文化社)、『厳選スイーツ手帖』(世界文化社)、『東京最高のパティスリー』(ぴあ)など。
【特集】夏のひんやりスイーツ2019
夏の太陽がジリジリ照りつけると、ひんやり冷たいスイーツが恋しくなる。そこで、なめらかな口どけのアイスクリームや行列のできる有名店のかき氷、ビタミンたっぷりのサマーフルーツなど、東京で味わえる最新のひんやりスイーツをご紹介します。
PHOTO/KAZUHITO MIURA WRITING/KIMIKO OHKATSU