うまいもの探偵団が、毎回東京の気になる街の気になる店へ突撃。一番売れているメニューをお聞きして、おいしいだけじゃない、愛されている理由を探ります。今回は、編集部ふくだが下町の名店『だるま』へ。二代目の店主姉妹が温かく迎え入れてくれる、店の雰囲気も絶品です。
【今月のお店】大衆酒場 だるま(門前仲町)
一番売れているメニュー:牛モツにこみ
探偵団:門前仲町で50年以上にわたり愛される、古典酒場にして名酒場。注文が入るたびに響き渡る「チューハイ、いっぱ~つ!」という、理(あや)さんのかけ声が素敵です。
理さん:ふふふ。先代の、父の時代からの伝統で、アルバイトの大学生が言い始めたそうです。焼酎は濃いめに、1杯ごとに栓を抜いて瓶の炭酸を注ぎます。卓上のレモンやライムのシロップは各自でお好きなだけ入れてね、って。どれも先代から続くスタイル。
探偵団:すっきりとしたチューハイに合うのが、この「牛モツにこみ」。一番人気のメニューですね。
理さん:寸胴鍋で仕込んでいますが、毎日、最初になくなります。これも先代からの看板メニューです。
探偵団:モツがシャクシャクっとして、それでいて、ふっくらとしたやわらかな食感がたまりません。それから、このコクのあるおつゆも。
理さん:下茹でを繰り返して臭みを取ったモツを、継ぎ足し、継ぎ足し大切にしてきたタレでコトコトと煮込んでいます。具材はモツとコンニャクとタマネギの3種類。あとはお味噌とザラメだけ。本当にシンプルです。牛の脂の甘みでコクが出るんですよ。
探偵団:レシピも先代譲りですか?
理さん:シンプルな作り方は変わりませんが、少しだけ私の代になって変えたところもあります。以前に比べて女性のお客さまが増えたので、モツをひと口サイズに切ったり。あと、私は「飲めるにこみ」を目指しているから、前のほうが濃い味だったかも。
探偵団:牛モツにこみは、理さんの担当なんですね。
理さん:はい。ほかにもひじき煮、ぬか漬けなど、あらかじめ仕込みが要る料理は私が。炒めものや揚げものといった、注文ごとに調理するメニューは妹の真(まさ)が、と分担しています。
探偵団:「本日のオススメ」とボードに書かれたメニューも真さん担当?
理さん:ええ。春先なら新タマネギと牛肉の炒めものとか、ホタルイカのぬた和えとか、タケノコの煮物とか。旬のものですね。妹は父親譲りで本当に料理上手。サービス精神も父親似で、ときどき心配になるくらい。「ちょっと大盛りすぎるわよ」ってこっそり耳打ちすることもあるんだけど、彼女は優しいから「いっぱい食べてほしいの!」って(笑)。
探偵団:先ほど常連さんの帰り際に、真さんが手作りのお弁当を渡していましたね。
理さん:父の代から通ってくださるおじいちゃんが、家で食べられるようにね。妹が、いつも白ごはんじゃ飽きちゃうだろうからって、ときおり豆ごはんや炊き込みごはんに変えながら、お弁当を持たせるのよ。先代の頃からの常連さんが多くて、本当にありがたいことです。
探偵団:おふたりとも常連さんにだけでなく、一見(いちげん)さんにも優しいです。
理さん:メニューにない料理でも、リクエストで作ることがあるの。材料があって、調理場が忙しくないとき限定で。忙しいときは誰が相手でも断るから運しだい。だから初めての方も、遠慮せずに聞いてみてくださいね。
大衆酒場 だるま
1971年創業、東京メトロ・門前仲町駅から徒歩3分の大衆酒場。理さんと真さんの姉妹2人が切り盛りするコの字型カウンター席メインの店で、季節の手料理とうまい酒、心地よい喧騒が揃う至福の時間を過ごすことができる。テーブル席あり。
TEL.03-3643-4489
住所/東京都江東区門前仲町2-7-3
営業時間/16:30 ~ 22:00(フード20:50LO、ドリンク21:20LO)
定休日/日・月
※現金のみ
【今月の探偵】編集部員:ふくだ
メトロミニッツの「大地と海の恵み」担当。今年もホタルイカとの再会を大いに喜ぶ昼酒愛好家
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PHOTO/KENSUKE HOSOYA
※メトロミニッツ2023年6月号「うまいもの探偵団」より転載