うまいもの探偵団が、毎回東京の気になる街の気になる店へ突撃。一番売れているメニューをお聞きして、おいしいだけじゃない、愛されている理由を探ります。今回は編集部ふくだが「レストラン サカキ」へ。編集部にもファンが多い、京橋の老舗が誇る一番人気とは?
【今月のお店】レストラン サカキ(京橋)
一番売れているメニュー:千葉県産林SPF豚のポークジンジャー
探偵団:ランチタイムの長い行列が、京橋の日常風景でもある「レストラン サカキ」。編集部から近くてよくお邪魔するものの「ポークジンジャー」はいつもメニューに取り消し線が引かれていて。てっきり提供日が限られた「幻のメニュー」だと思っていました。
榊原シェフ:いえいえ、毎日提供していますよ。脂がのったリブロ―スを分厚く切り出すため、1日に15人前ほどしか用意できない。だから、開店直後に売り切れてしまうんです。
探偵団:確かに厚さ2センチはありますね。しかも軽く手のひらサイズ! この見ための迫力以上に、いただいてみてびっくりしたのが肉の上品さ。繊維質をほとんど感じない、しっとりときめ細かい舌ざわりは感動的です。
榊原シェフ:千葉県産の「林SPF」という銘柄豚にこだわっています。脂が甘くておいしいことに加えて、火を入れてもパサつかずジューシーに仕上がるんですよ。
探偵団:たしかに脂が甘い! けれど、全然しつこい感じがしません。
榊原シェフ:肉をソテーする際に、焼き切ることが秘訣(ひけつ)です。脂をしっかりと外に出すことで、くどさがなくなり、その脂が今度はソースに溶け込んで、うまみになる。ソースは、タマネギや生姜、ニンニクなどの野菜のすりおろしに、醤油、酒、みりんを加えた生姜焼きベースです。
探偵団:カリッと焼きあげた肉の表面にソースがからんで、ごはんがもりもり進みます。ごはんに合う洋食ですね。そして、お米がまたおいしい。
榊原シェフ:千葉県鴨川市でとれた長狭米(ながさまい)のコシヒカリです。つけ合わせはジャガイモのピュレと、モヤシ炒め。ボリュームのある豚肉が食べやすいよう、水分が感じられるものを合わせています。使うのは、毎朝、市場から仕入れる新鮮な国産野菜です。リーズナブルさが期待される平日のランチでも、質のよい国産食材を選ぶのは、味を第一に考えているからこそ。
探偵団:この内容で、ライスとスープが付いて1400円ですか・・・!?
榊原シェフ:長年ひいきにしてくださるお客様も多いですし、お値段すえ置きで頑張っています(笑)。京橋はオフィス街ですから、昼休みにさっと食べて帰る会社員の方が多い。ハンバーグやエビフライなどの王道の洋食メニューに、穴子のフライや牡蠣のムニエルといった季節のメニューを加えながら変化を出しています。反対に、ディナーは自分の本領であるクラシックなフレンチで、自分が作りたいと思うものを提供しています。昼も夜も共通しているのは、僕自身が本当においしいと思うものを出したい、ということ。
探偵団:その思いがこの街で働く人をはじめ、大勢を幸せにしていますね。
榊原シェフ:京橋も再開発が進み、昔ながらのお店が消えゆく一方で、複合施設が誕生し、新たな盛り上がりが生まれています。銀座でもなく日本橋でもなく、京橋へ足を運んでもらいたいから。おいしい料理を提供できるよう、これからも踏ん張りつづけていきますよ。
レストラン サカキ
1951年創業。4代目の榊原大輔さんは、四谷のフレンチの名店に勤務したのちに、南仏を中心に3年半にわたり本場で修業。店を継いだ2003年から、夜は本格フレンチを、平日昼は伝統的な洋食をブラッシュアップしたメニューを提供している
TEL.03-3561-9676
住所/東京都中央区京橋2-12-12 サカキビル1F
営業時間/11:30 ~ 13:30(LO)、18:00 ~ 20:30(LO)
定休日/日・祝
【今月の探偵】編集部員:ふくだ
メトロミニッツの「大地と海の恵み」担当。牡蠣フライの季節の終わりを惜しむ昼酒愛好家
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PHOTO/KENSUKE HOSOYA
※メトロミニッツ2023年4月号「うまいもの探偵団」より転載