毎月案内人をお招きし、思い入れのある街を教えてもらう連載企画。最終回となる今回は、実用性のない発明品を「無駄づくり」と称して発表している、コンテンツクリエイターの藤原麻里菜さんがご登場。創作活動にインスピレーションを与えてくれるという、秋葉原の魅力を語ります。
街じゅうにあふれる、
人それぞれの〝好き″や情熱が
「無駄づくり」を刺激する
私が手がけている「無駄づくり」は、「無駄なこと」を「モノ」として作ることで、新しい価値の創造や、未来へのインパクトが起こせるんじゃないかな、というプロジェクトです。
例えば「強制笑顔マシーン」は、機械が自分の口角をむりやり上げるというデバイス。無表情がコンプレックスだったことから思いついた機械ですが、ネガティブな感情やモヤモヤを「モノ」にすることで客観視したり、面白さに昇華させることを軸に、日々「無駄」の制作に勤しんでいます。
秋葉原はその「無駄づくり」のための材料を見つけたり、インスピレーションを与えてくれる街です。もともと秋葉原のシェアアトリエで「無駄づくり」の制作をしていて、そこで受付のアルバイトもしていました。機械工作についても、そこで同僚や会員さんからアドバイスを貰ったり。自分のアトリエを持ったいまでも、秋葉原には通っています。
何を作る、何が好き、何に向かう・・・秋葉原は「自分の目的」を持っている人、それに対して何も厭わない情熱を持っている人が多く集まる街だと思います。だからこそ専門性の高いお店がたくさんあるし、同時にそれが一般にも開かれているのが、すごく魅力的に感じます。
「無駄づくり」に必要な電子部品や基盤、ハンダなどは、秋月電子や千石電商といったパーツショップで購入しています。秋月電子は抵抗やモーターのような基本的なパーツが必ず揃っているし、千石電商は機材のツマミ( ノブ)だけでも7種類とか、独特のパーツがたくさんあって。ただ、どちらも専門性が高いお店なので、最初は緊張しました(笑)。でもその独特の空気感が、みんな居心地よくなっていくんだろうなって。
東京ラジオデパートも、昭和を感じるビルの中に、私には分からないようなパーツや古い機材を売ってるお店がたくさん入っていて。秋葉原は「こんなパーツがあるなら、あのマシンが出来るかも」「これは何に使うんだ!?」ってガジェットやパーツが店頭や店先に並んでいるので、想像力が膨らみます。だから、街を歩いてお店で直接見ることは、私の創作にとってすごく大事ですね。
買い物のついでにゲームセンターに寄って休んだり。ご飯を食べる場所も多いし、クラブやバーもあったり、昼だけじゃなく、実は夜も楽しめる街だと思います。
秋葉原はたくさんのモノと文化が、お互いに干渉せずに受け入れあう、寛容な街だと思います。ノビノビとそれぞれが存在して、楽しくみんなが過ごせる場所。時代とともに移り変わる街だけど、その部分はこれからも変わらないで欲しいですね。
今月の案内人/藤原麻里菜さん
コンテンツクリエイター、文筆家。不必要なものを形にした作品をYouTubeで発表し、国内外で人気を博す。著書に『考える術―人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(ダイヤモンド社)、『無駄なマシーンを発明しよう!―独創性を育むはじめてのエンジニアリング』(技術評論社)ほか。2022/6/21(火)~ 30(木)、西武渋谷店でファッションと「無駄づくり」をテーマに企画展「MUDA COLLECTION 2022 Summer -Let’s wear useless things-」を開催
YouTube 無駄づくり / MUDAzukuri
Instagram @mudazukuri
Twitter @togenkyoo
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- 藤原麻里菜さん 公式サイト
Photo/SHIN HAMADA(Portrait), KAZUHITO MIURA , KATSUMI SATO Text/SHINICHIRO“JET”TAKAGI
※メトロミニッツ2022年7月号「東京巡礼」より転載
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