毎月案内人をお招きし、思い入れのある場所を教えてもらうこの企画。今月は、スウェーデン出身の日本茶インストラクターで、国内外でお茶の魅力を広めているブレケル・オスカルさんです
日本茶の深遠を知った表参道
価値観を変えるような
新しい出会いに満ちた街
日本茶の奥深さをもっと知りたいと思い、岐阜大学に留学したのが12年前。ワインのように生産者独自の作り方や、土壌、気候が反映されたお茶を探し求めていましたが、日本茶はブレンドして作るのが一般的。期待するものには巡り会えずにいました。留学期間も残り3週間に迫ったとき、大きなきっかけをくれたのが表参道の日本茶専門店「茶茶の間」です。
シングルオリジンの茶葉を広めたパイオニア的存在で、1種類の茶葉を4種類の淹れ方で楽しませてくれます。そこには淹れ方も香りも、まったく知らない世界が広がっていて、お茶の概念が一気に覆されました。
東京は伝統と革新が共存する街。お茶の生産地ではありませんが、だからこそ、消費地としての新しい価値観が息づいている。それを実感させられる出会いでしたね。5月は新茶の季節。今しか飲めないお茶もあるので、ぜひ訪れて欲しいです。
以来、私にとって表参道は、人生の転機をくれた特別な場所。「茶茶の間」以外にも、そんな新しい発見に満ちたお店をたくさん見つけました。
「ユウチャ」は、中国茶・台湾茶の専門店。一番好きなのは緑茶ですが、烏龍茶や紅茶も同じお茶の木から作られる仲間。
歴史的にも密接な関係があるので、日本茶にハマった人なら、こちらもきっとおもしろいはずです。
今日は疲れたな、というときに欠かせないのが、東京三大豆大福に数えられる「瑞穂」。
お餅、餡、豆の繊細な味わいがお茶にぴったりで、1日のご褒美にいただけば、疲れも一気に吹き飛びます。
「トーキョーウイスキーライブラリー」は、1300 種類の世界のウイスキーが並ぶバーラウンジ。
ここは、お店の方と会話をしながら、いろいろな銘柄を少しずつ味わってみるのがオススメです。
環境に優しい素材にこだわるウェルフードのマーケット&カフェ「インパーフェクト表参道」。
ここのグレーズドナッツは、自宅でお茶を楽しむときの定番のお茶うけ。こっくりと甘いナッツとお茶は、意外と相性がよいんですよ。
「太田記念美術館」は、浮世絵専門の美術館。文化的なインプットをしたいときにふらっと訪れます。
そこで楽しみなのが企画展。6月26日まで開催している「北斎とライバルたち」展には期待を寄せています。
こういった名店を見つけるコツは、看板を見逃さないこと。慣れた道ほど意識して、探検気分で興味のあるものを探してみてください。
私はそうやってこの街の奥深さを知りました。あなたがまだ曲がったことのない角の先に、新しい扉が開かれているかもしれませんよ。
今月の案内人/OSCAR BREKELLさん
高校時代に日本茶に魅せられ来日。岐阜大学への留学、一般企業に勤めた後、日本茶インストラクターを取得。静岡県茶業研究センターなどを経て独立し、講演やメディア出演、出版を通じて日本茶の魅力を発信。日本茶ブランド「センチャイズム」のプロデュースも行う
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Photo/MASAHIRO SHIMAZAKI Text/RYO ISHII
※メトロミニッツ2022年6月号「東京巡礼」より転載
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