毎回案内人をお招きし、思い入れのある場所を教えてもらうこの企画。今月の案内人は、イタリア料理をはじめ、あらゆる食の本質を「食と酒、人」という視点で見つめ、発信してきた文筆家・井川直子さんです。
下町と大人の街が混在する中にさまざまなイタリアがある
イタリアは、私にとって縁の深い国です。旅行でイタリアに行き、1人の日本人コックに出会ったことがきっかけで『イタリアに行ってコックになる』という本を書きました。そこからさまざまな執筆の依頼を受けるようになり、今の私につながっていますから、イタリアは文筆家としての私の原点だと言えます。
そして白金は、約10年間住んでいた親しみのある場所。白金と言うとセレブの街という印象があるかもしれませんが、白金には白金台エリアと白金高輪エリアがあり、白金高輪エリアは町工場も多く、下町のような雰囲気があるんです。私は町工場の建築を見るのが好きで、今でもよく散歩をしています。
そんなときによく立ち寄るのが、この「ドロゲリア サンクリッカ」。日本ではここでしか買えないイタリア食材が揃うお店で、カフェスペースのメニューもどれも美味。朝はタマゴサンドとカプチーノ、夕暮れどきはスプマンテに生ハムと、いつ行っても楽しいお店です。
ワインショップ「ボッテガ ヴィーニ」は、店員さんのお話にイタリアの生産者への愛があふれていて、白金にいながらにして「ここはイタリアの葡萄畑と直通だ」と感じられる店。
本場さながらのシチリア料理が味わえる「ロッツォシチリア」は昨年でオープンから10年。南イタリアらしい色気があって、いつ行ってもハッピーになれます。
そんな白金高輪エリアに比べ、白金台エリアは少し落ち着いた雰囲気。プラチナ通りは春の新緑の時期も気持ちよく、私たち家族のお気に入りの散歩コースです。
昨年10月、プラチナ通りの裏路地にオープンした「三和(さんわ)」は、螺旋階段を下りた地下にあり、白金台の大人にぴったりのレストラン。炭火焼のお肉が絶品です。
プラチナ通りを抜けた先にある「ア・レガ」はローマスタイルのピッツアを一切れから買うことができ、お散歩の合間の定番立ち寄りスポット。
「ア・レガ」の並びにある「トラットリア ダル・ビルバンテ・ジョコンド」は、今年でオープン10年目のトラットリア。今は現地イタリアに行けなくて寂しいですが、ここに行けばイタリアがあります。
移り変わりの早い東京の中で、白金には長く続くお店がたくさん。「流行り」ではなく「いいもの」を追いかける人たちに愛されて、粒揃いのお店たちが息づいています。日常のあらゆる場面に合わせて、白金のイタリアを楽しんでください。
今月の案内人/井川直子さん
文筆家。2003年に『イタリアに行ってコックになる』を上梓。これを機に、食と酒まわりの「ひと」をテーマに書籍、雑誌などで執筆を行う。最新刊『シェフたちのコロナ禍』(文藝春秋)は、34人のシェフの闘いを捉えたルポルタージュ
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Photo/MASAHIRO SHIMAZAKI, KYOKA MUNEMURA Text/SHINO KAWASAKI
※メトロミニッツ2022年3月号「東京巡礼」より転載
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