日本フレンチの巨匠に教えてもらう、家庭でできる食品ロスの削減【第2回SDGsイベントレポート】
もったいないとわかっていても、食材を使い切れなかったり、食べ残したり。そんな“食品ロス”を意識することもSDGsの初めの一歩に。
SDGs活動の一環で食品ロス削減に取り組む「ホテルメトロポリタン エドモント」にて“もったいない”食材のアレンジレシピ料理教室を9月下旬に開催。その模様と、ホテルの取り組み、講師シェフのインタビューを紹介します。
更新日:2020/12/08
ホテルが実践する食品ロスを減らす取り組み
食べられるのに捨てられてしまう食べ物が、国内だけで年間約612万トン(※)。国民ひとり当たり、お茶腕約1杯分(約139g)のごはんが毎日捨てられている。こうした状況を危惧し、日本のホテルでいち早く食品ロス削減に取り組んできたのが「ホテルメトロポリタン エドモント」。
きっかけは、2017 年に同ホテルの統括名誉総料理長・中村勝宏さんが飢餓撲滅と栄養状況の改善をめざす「国連食糧農業機関(FAO)」の日本担当親善大使に任命されたこと。ホテルのスタッフに食品ロス削減の意識が広まり、和洋のシェフたちは工夫をこらして、食品ロス削減を心がけたオリジナルの「もったいないメニュー」を考案している。
食べ残しが多くなりがちな宴会では、乾杯後30分、お開き10分前に「食べきりタイム」を設定して料理を残さず食べてもらう「3010(さんまるいちまる)運動」をゲストに呼びかけ。ブッフェや立食パーティーでは料理を一度に大量に用意するのではなく、必要な分だけを少しずつ作るなどして食べ残しの削減をはかっている。そんな取り組みが実り、生ごみの総量が16%も減っているという。
※農林水産省及び環境省「平成29年度推計」より
オズモールとコラボで開催!ブロッコリーを丸ごと使う料理教室
統括名誉総料理長・中村勝宏さんの料理教室「ホテルシェフが教える“もったいない”食材のアレンジレシピ」はオンラインで開催。この日のメインの食材はブロッコリー。「新鮮な国産ブロッコリーは枝や葉がついたまま店頭に並んでいることがほとんど。茎も枝もやわらかく甘みがあって、余すところなく食べられます」
そう話す中村さんが教えてくれたのは、ブロッコリーの房と冷蔵庫に余った野菜で作る「ブロッコリーのスパニッシュオムレツ」と、残った茎、枝、葉を使う「ブロッコリーの枝と茎を利用した豚バラ巻き焼き」の2品。
「ブロッコリーの枝と茎を利用した豚バラ巻き焼き」では、茎の硬い皮を剥いてから茹でる、湯がいた葉を刻んでドレッシングの具材にするなど、捨ててしまいがちな部分を上手に活用。「枝の表面に薄い皮があり、そのままでは口に残って食べにくい。ゆでると薄皮がすーっと剥けますから、しっかり取ってから料理しましょう」。食材を無駄なく、おいしく味わうためには、ちょっとした手間も惜しまずに。
食品ロス問題を中村シェフにインタビュー
1970年にフランスへ渡り、1979年にはパリのレストランで、日本人として初めてミシュランの星を獲得した中村勝宏さん。2008年の洞爺湖サミットでは総料理長を務めた日本のフレンチの巨匠は、どんな思いで食品ロス問題と向き合っているのだろう。
「フランスでは、料理人として与えられた食材を慈しむことをしつけられました。いかに無駄を出さないかを常に工夫し、料理に励んできました。日本にも“もったいない文化”が根付いていますが、その一方で、1980年代以降は飽食の時代。食べたいものがなんでも手に入る状況なのに、食料自給率はわずか37%。先進国では最低水準で、海外からの輸入で食料をまかなっています。日本人はこうした現状を知り、食に対する意識を高めなければなりません。世界には飢餓に苦しむ人々もたくさんいるのですから」
そんな飽食の時代にあって、SDGsやFAOなどの活動で食品ロスの問題が注目され始めたことに期待を感じているという中村さん。「ちょっとしたことをきっかけに食品ロス問題を知ってもらい、無駄をなくそうと思ってくれる人が増えるのはすばらしいこと。当ホテルのスタッフにも意識が広まり、キッチンでは食材を無駄にしないよう、使い切ることが当たり前になりました。その流れを家庭にもつなげてほしいですね」
家庭での食品ロスに関する疑問を中村シェフに教えていただきました
Q.皮など汚れが気になる場合、手洗いで落としにくいときはスポンジなどを利用すれば良いですか?
A.はい、私は家で料理するとき、人参やじゃがいも、大根などはよく皮ごと利用しますが、気になるときは薄い洗剤を付けたスポンジでよく洗ったのち、水洗いを十分にして使用します。桃などのフルーツも皮ごと食べますが、同様によく洗い皮ごと食べます。
Q.長ネギの緑の部分をおいしくできる技があれば知りたいです
A.まず、穂先の痛んだ部分は切り取り、硬くてしまった部分を選びます。それを薄切りにしてうどんの薬味または味噌汁に入れるといいでしょう。または、大きくざく切りにして、白い部分とともにすき焼きなどにも入れて使い切ります。
Q.たまねぎ、じゃがいも、人参の皮がよくでるのですが活用方法はないでしょうか。
A.じゃがいもは茹でたり、フライにする場合、よく洗って皮ごと使用します。玉ねぎや人参の皮が多く出る場合は、鶏ガラなどでスープストックを作るときの香味野菜として使い切ります。
参加したユーザーの声
・SDGsは大きな規模に感じがちですが、一人ひとりが日々の食卓でほんの少し意識することを持続していくことが大切だと感じました。早速食材を買うところから意識を変えています!(29歳・女性)
・期限切れで食材をダメにしてしまうことがあるので、まずはそこから気をつけていきたいです。(37歳・女性)
・野菜を痛めてしまう事があったり、捨ててしまう事があるので、工夫して取り組みたいと思いたした。(36歳・女性)
・普段、捨ててしまう部分も綺麗に洗って、一工夫してあげる事によって美味しい料理になる事を体験し今後、買い物時や料理時も意識してみたいと思いました。(36歳・女性)
・もともとあまり捨てないようにしていたが、買う頻度を増やして、廃棄にならない買い方をしようと思いました。(49歳・女性)
・早速教えていただいたレシピで晩ご飯を作ってみたいと思うぐらいお家にあるもので作れそうだったので、余すところなくお野菜を使い切りたいと思います。今まで捨ててきたお野菜をもう一度捨てる前にネットで検索して、まだお料理で使えるかどうか考えたいと思いました。(31歳・女性)
今日からできること
【まずは日々の買い物を見直してみる!】
「外国の方から日本人は食材を買い過ぎると指摘されることがあります。私も安売りや、おいしそうな食材を見つけると、いろいろ買いたくなってしまうので耳が痛いです。きっと手元に食材がたくさんあると、安心できるからなのでしょう。でも、本当にその食材が必要か、使い切れる量かを考えて、不要なものは“買わない勇気”を大切にしたい。食材をため込むと、最後は劣化したものを使うことにもなってしまいますから。買い物の頻度を増やして、食材はこまめに買い足していくことで、無駄がなくなると思います」と中村さん。
本当に必要かを考えて、“買わない勇気”を出してみよう!
今回の講師
ホテルメトロポリタン エドモント 統括名誉総料理長 中村勝宏さん
飢餓の撲滅と栄養状況の改善をめざす国連食糧農業機関(FAO)の親善大使に就任し、食品ロスの削減に取り組む。
<経歴>
1970年に渡欧後、15年間に渡りフランス各地の名立たるレストランでプロの料理人として活躍し、フランス・パリにあるレストランのグランシェフ時代だった1979年に、日本人で初めてミシュランの星を獲得。2008年の北海道洞爺湖サミットでは総料理長を務める。
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今日から始める小さな一歩
世界とミライとわたし
最近よく耳にするようになった“SDGs”という言葉。
「社会課題の解決」と言われても、ピンとこないけれど、自分の小さな選択と行動が、いつか誰かの笑顔につながるかもしれないから。
その小さな一歩で、私と世界がつながって、きっと昨日よりもちょっといい、大切な人のミライを創れるはず。
この特集をきっかけに、一緒に考えて、今日からなにか行動を始めてみませんか。
PHOTO/MANABU SANO WRITING/MIE NAKAMURA