「働く」と「暮らす」と「楽しむ」。その全部が近く、うまく溶け合っている街、代々木上原。わざわざ訪れたいと思える高いセンスとクオリティを持っているのに、どこか気取らない雰囲気もあって、地元に根付いたふだん使いできるお店も多く点在している。そこで今回は、この街に暮らす人たちに愛される名店カフェを3つご紹介! 肩ひじ張らずに地元民の気分で訪れてみて。
SIGOURNEY Bake&Coffee
パンとお菓子のいいとこどり。朝ごはんにもおもてなしにも使えて、パクリと食べれば、ジワリと心が晴れる。暮らしにストックしたい、とっておきのベイク。「パティスリーじゃなくてベーカリー。家っぽい素朴な感じが好きなんです」とは、店主の笹垣武さん。もとはイギリスのセレクトショップのカフェで働いており「イギリスの文化に親しんだので。ま、行ったことはないんですけどね」と目を細め笑う。
外はザクッ、中はフカッとしたスコーンや、もっちり食感のキャロットケーキ、ごろごろナッツのレーズンバターサンドなどがにぎにぎしく並ぶさまは、旅で見つけたら「当たり!」と叫びたくなるお店そのもの。「ただですね」もうひとりの店主、杉誠さん。「今はどっちかと言えば、オリジナルになってます。「これはどうかな?」とふたりで言いながら、日々いろんなことを試してるので」。
そう、シガニーらしいチャームなポイントは、店主ふたりのコンビネーション。コツコツと職人気質の杉さんと、心地よい気働きがさえる笹垣さん。たがいの役割はありつつも、ときに混ざり合い、補い合う。そんなふたりと心近い常連さんとの関係によって、おいしいやさしい空気が醸されている。笹垣さんは言う。「代々木上原住民は、みんなでこの街を大切にしようとしている人が多い気がしますね」。
◆もっと知りたい名店のワケ
Q1.居心地のよさの秘密は?
A.これまでいろんなサービス業を経験してきたので。そこに共通する「いかに快適に過ごしてもらえるか」を常に考えている気がします。
Q2.自分たちらしい味わいとは?
A.イギリスをルーツに、スパイスが好きなので、ときにはアジアやインドのエッセンスも取り入れたり。それがシガニーらしさになるのかなと。
Q3.どんなお店にしたいですか?
A.1日中使ってもらいたい。1日に2回来てもらえるようなお店にしたいと思っています。実際にそういうお客様もいらっしゃいます。
DATA
住所/東京都渋谷区上原1-17-7 フレニティハウス2F
営業時間/10:00~18:00
席数/18
定休日/不定(休業日はSNS で要確認)
アクセス/代々木上原駅より徒歩3分
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ひとりで作業に耽ったり、ふたりで打ち合わせがてらランチしたり、親子でスイーツを分けっこしたり、仕事帰りにお酒を飲みつつまったりしたり。どんな人も、どんなときも、どんな使い道だって分け隔てなく「いいよ」と、やさしく受け止めてくれる。そんな懐の広さはファミレスにも近いけれど、ふと見ればおしゃれな映画が流され、耳をすませば気分のいい音楽がかかっている。ワインはすべてオーガニックで、奥のオープンキッチンをのぞけば、熟練のシェフがしゃにむにフライパンを振っている。つまりは界隈に暮らす人たちにとってありがたさしかない、上質の使えるカフェなのだ。
ただ、始まりは原宿。2000年頃に起きたカフェブームど真ん中のとんがった店だった。そこから15年前に山手通り沿いに移転。インテリアデザイナー五十嵐久枝さんが手がけたクリーンな内装は、積み重ねられた年月によって、テーブルよろしくカドがとれ、よりローカルと生活に密着した存在となった。
メニューはハンバーグやオムライスなどの洋食から、お魚や唐揚げなどの定食もの、はたまたフォーなどアジア系まで多岐にわたる。帽子がトレードマークの店主、溝田さんは言う。「あまりこだわりすぎず、気持ちいい感じがいいかなって」。
そのおおらかなスタンスこそが、居心地を生んでいるとするならば。
◆もっと知りたい名店のワケ
Q1.どんなお客さんが多いですか?
A.女性ひとりでも気軽に食事ができたり、くつろいだりできるような雰囲気を心がけています。また場所柄、音楽関係の人も多いですね。
Q2.居心地のよさの秘密は?
A.まずはこの広さがあると思いますね。席がゆったりしていて、パーソナルスペースが保たれている。駅前のお店ではなかなできないと思います。
Q3.今後、お店としてのあり方とは?
A.実はこの店とiPhoneの歴史がちょうど同じなんですよ。15年ですごく変化して、バラバラで細分化されてきた状況に合わせないとね。
DATA
住所/東京都渋谷区元代々木町55-7 桜苑マンション1F
営業時間/12:00~25:00(L.O.24:15)
席数/54
定休日/火曜
アクセス/代々木八幡駅より徒歩5分
LIFE
もともと白と赤と黒で塗られていた立て看板は、今やペンキがごっそり剥がれ、年季の入った木目がむきだしになっている。それは「人生」というお店の名前に、みるみるふさわしくなってきている。
代々木エリアのカルチャーの先っぽをゆくアニキ的な存在として、メディアなどでもおなじみのスターシェフ、相場正一郎さん。氏が18年前、代々木八幡につくった最初のレストランが「ライフ」だ。コンクリートの壁や床にみずから古い板を打ち付け、「TRUCK FURNITURE」の家具を置き、集めていた本やレコードを飾り、仲間のデザイナーと一緒につくった雑貨や洋服をディスプレイする。そんな好きなもの尽くしの空間で供されるのは、イタリアのフィレンツェで修行した、本場仕込みのイタリアン。どこか懐かしさを感じるのは、実家で営むお惣菜屋さんから伝わる、少し甘い味付けゆえ。肩ひじ張らず、気がねなく食べ、飲み、笑い合える、食を囲む場。
相場さんは言う。「リニューアルを何度も考えるんですけど、いくら新しいことをしても、さらに新しいものができる。ならばいい意味で維持したいと思うようになりました」。
ただ姿形は変わらずとも常にアップデートし、心はクリエイティブでいたいという相場さん。それはまさに、人としてのよりよき人生と同じかもしれない。
◆もっと知りたい名店のワケ
Q1.今、人気のメニューはなんですか?
A.ブラータチーズでしょうね。季節に合わせたフルーツと一緒に盛られていて、とろっとなる瞬間が映えるのか、写真を撮られる人も多いです。
Q2.最近ハマっていることは?
A.カメラです。新刊「道具と料理」(ミルブックス)では、コラムの執筆だけでなく、料理を作って、撮影もして、と全部セルフでやりました。
Q3.ここで長くやっている強みとは?
A.地域を理解していることでしょうね。古いお店たちとの横のつながりもありますし、新しいお店の情報も入ってくる。街をずっと見ているところ。
DATA
住所/東京都渋谷区富ヶ谷1-9-19 1F
営業時間/11:45~14:30、18:00~22:00
席数/45
定休日/火曜
アクセス/代々木八幡駅より徒歩3分
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※オズマガジン2022年3月号「東京小さな店めぐり」の記事を一部転載
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オズマガジン2022年3月号は「東京小さな店めぐり」特集
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PHOTO/YUKIHIRO SHINOHARA、MASAHIRO SHIMAZAKI、WRITING/MITSUHARU YAMAMURA