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どうなった?「年収の壁」103万円。106万円、130万円の違いも。働き方で収入変わるの?【マネートピックス2025/働き方編】

更新日:2025/01/16

最近よく聞く「103万円の壁」って、なに?と思っている人も多いはず。ほかにも、106万円・130万円・150万円の壁があり、この壁を超えるか超えないかが働き方にも影響を及ぼすのに、違いがよくわからないという声が続々。そこで、これらの「年収の壁」について、ファイナンシャルプランナーに「ここだけは押さえておきたい基本」を教えてもらいました!

変わりゆく「年収の壁」。“103万円”はどうなる?

変わりゆく「年収の壁」103万円。どうなるの?

「2024年末に出された令和7年度税制改正大綱では、年収103万円の壁を123万円に引き上げることが明記されました。金額はまだ決定ではありませんが、恐らく引き上げはなされ、所得税や住民税の減税に繋がる見込みです。いわゆる<年収の壁>と呼ばれる壁は、【税金の壁】と【社会保険の壁】の2種類に分けられます。まずは103万円の壁が該当する【税金の壁】について学びましょう」(風呂内さん)

【税金の壁】※金額・計算方法は2024年12月時点のもの
◆100万円の壁(住民税)
年収が100万円(自治体によっては98万円など)を超えると住民税が発生。収入に関係なく支払う「均等割(年額4000〜6000円程度・自治体により異なる)」と98万円を上回る金額に税率10%をかけた「所得割」で構成され、翌年に支払う

◆103万円の壁(所得税)
年収が103万円を超えると所得税(所得の額により税率最低5%~最高45%)が発生。例えば104万円の場合は約500円(年額・1万円×税率5%)

◆150万円の壁(配偶者特別控除)
年収が150万円以下であれば、配偶者が38万円の所得控除(所得税率5%の場合、住民税と合わせて年間5万2000円の減税)を受けられる。150万円を超えると段階的に控除額が減り、約201万円でゼロに。※控除を受ける配偶者の合計所得が900万円以下の例

「住民税や所得税は収入の総額に対してではなく、壁を超えた金額に税率をかけて負担します。本人として“かえって手取りが減ってしまう”ということは起こりません。配偶者控除や配偶者特別控除は特に配偶者の年収や税率が高い人は気になるかもしれませんが、そもそも所得が高い人の控除額は少なく、所得1,000万円を超える人は利用できません。利用できるケースでも控除額が減るときは本人の年収が増えている時なので【税金の壁】は超えたとしても家計全体としては手取りを増やせるケースが多いでしょう。ただし、配偶者の勤務先から家族手当が出ている場合、それがなくなる基準を【税金の壁】にそろえていることがあるため、あらかじめ確認しておきたいところです」(風呂内さん)

手取りへの影響が大きいのは、106万円と130万円の「社会保険の壁」

手取りへの影響が大きいのは、106万円と130万円の「社会保険の壁」

「もうひとつの【社会保険の壁】は、壁を超えると公的年金や公的健康保険の保険料支払いが生じるというもの。確かに手取りに影響しますが、106万円と130万円では意味合いが違うため注意が必要です」(風呂内さん)

【社会保険の壁】
◆106万円の壁
51人以上の企業に週20時間以上勤務し、年収が106万円(月8万8000円×12か月)以上になる人が対象。配偶者の社会保険上の扶養から外れ、勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入義務が生じる

◆130万円の壁
従業員数50人以下の企業に勤務している人などで年収130万円以上になると、配偶者の社会保険上の扶養から外れ、国民年金や国民健康保険に加入して自分で保険料を支払う

「年収やお住まいの地域にもよりますが、社会保険料が引かれる前と同じ手取り金額をキープするには20~30万円程度、多く稼ぐ必要があります」(風呂内さん)

今後、106万円の「社会保険の壁」も見直しの流れが

今後、106万円の「社会保険の壁」も見直しの流れが

「社会保険の壁を超え、手取りが減るのを防ぐため<働き控え>をする人も。人手不足が深刻な中、国は<働き控え>改善のために社会保険の壁の見直しや撤廃を視野に動き出しています。2024年10月、106万円の壁の条件である企業規模を<101人以上から、51人以上へ>と改正し、社会保険の適用が拡大されたばかり。さらに従業員数51人以上や年収106万円という条件も撤廃して、週20時間以上勤務の条件だけを残す検討も行われています。

国は、より多くの人が働いて社会保険(厚生年金や健康保険)に加入することを目指しています。その理由は、以下のような老後の年金受給額にあります」(風呂内さん)

【年金受給額の目安】
◆厚生年金加入の会社員や公務員(第2被保険者)・・・月10~15万円
◆夫(妻)に扶養される配偶者(第3号被保険者)・・・月5~6万円
◆国民年金加入の自営業者(第1被保険者)・・・月5~6万円

「第2被保険者に比べ、第1・3被保険者が受け取れる金額は半分以下。専業主婦(夫)や自営業者の老後の安心のためにも見直しが急がれています」(風呂内さん)

壁を気にせず、どんどん働くことも視野に検討を

「壁」を気にせず、どんどん働くことも視野に検討を

「【社会保険の壁】のうち、106万円の壁は超えた方がいい壁とも言えます。手取りが減るという目の前のデメリットはありますが、中長期的に考えると、106万円以上収入を得て配偶者の扶養を外れ、自身の勤務先の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入した方が以下のようにメリットが大きい可能性があります」(風呂内さん)

【社会保険加入のメリット】
◆年金受給額が増える
例えば月収8万8000円で厚生年金保険料を月8100円支払った場合、1年加入で年金受給額が年5200円、10年加入で年5万2800円アップし、これが生涯続く

◆傷病手当金がもらえる
業務外の病気やケガで休業した場合、4日目から通算1年6か月、給料の3分の2程度が受け取れる

◆出産手当金がもらえる
出産42日前~出産56日後まで、給料の3分の2程度が受け取れる

◆保険料を勤務先が半分負担してくれる
社会保険料の半分は会社が負担し、残りを給料天引きで自分が負担。国民年金や国民健康保険の全額自己負担よりも保険料が軽減される

「【106万円の壁】を突破して社会保険に加入すれば、手厚い保障を受けることができます。注意が必要なのは130万円の壁です。国民年金や国民健康保険の保険料を負担するにも関わらずメリットが増えないため、壁だと感じるのも頷けます。一方で、社会保険の適用範囲は拡大傾向で、時給も上昇していることを考えると、壁の中に収まる働き方は、今後、かなり限定的になっていく可能性があります。壁を突破する働き方を目指し始めた方が、長期的に考えるとメリットが大きくなりそうです」(風呂内さん)

【働き方編】ココがポイント!

□年収の壁には、税金の壁(100万円・103万円・150万円)と社会保険の壁(106万円・130万円)の2種類がある
□手取り減少という観点だと税金の壁はあまり気にしなくていい(勤務先の家族手当は要確認)
□社会保険の壁、106万円と130万円では意味がまったく異なる
□社会保険の適用は拡大傾向。壁を超えるメリットが大きくなっていく可能性が高い

教えてくれた人

●風呂内亜矢(ふろうちあや)さん。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP ®認定者。26歳・貯蓄80万円でマンションを衝動買いしたことをきっかけにお金の勉強を始める。現在、複数の投資を行うとともに、マスコミにも多数登場し、お金に関する情報をわかりやすく発信。著書に「マンガでカンタン!NISA・iDeCoは7日間でわかります。」(Gakken)ほか。日常の記録にお金の情報を交えるYouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」も更新。

【マネー特集】新・ライフスタイルのお金と暮らし

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※記事は2025年1月16日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります