売上=使えるお金ではないことに注意!
まず氏家さんが注意すべきと話すのが、銀行口座に振り込まれたお金の考え方。
会社員の場合、口座に振り込まれた金額=すべて使っていいお金というのが当たり前の感覚。
「会社が支払った給与や手当から、社会保険料や税金などをすべて差し引いた金額が、銀行口座に振り込まれているからですね。だいたいの金額を毎月差し引いておいて、年末が近づくと『年末調整』で金額の調整をする仕組みになっています」(氏家さん)
それに対して、フリーランスや自営業の場合は、口座に振り込まれる売上=使えるお金ではないことに注意が必要。
「売上から事業のための原材料費、通信費、事務所代などの必要経費、社会保険料、税金などを差し引いた残りが自分の暮らしに使えるお金となります。
『毎月の生活費が20万円だから、独立したら、月に20万円は売り上げよう』なんて思っているととんでもないことになります」と氏家さん。
「自営業の場合、納税の手続きも自分で行うことになります。確定申告の時期になると、1年間の売上にまつわる資料、経費にまつわる資料をすべて整理して書類にまとめ、税務署に提出します。お金や数字は苦手、なんて言っていられないので勉強が必要ですね」(氏家さん)
社会保険が変わるため、民間保険などで備えることも必要に
そして、フリーランスや自営業になると大きく変わるのが、社会保険。会社員のときに「厚生年金・健康保険組合・雇用保険」に入っていた人は、自営業になると「国民年金・国民健康保険」となり、雇用保険からは外れるそう。では具体的にどんな変化があるの?
「国民年金になると、老後の年金額が減少します。国民年金の上に乗っていた厚生年金部分が無くなるからです。老後だけでなく、死亡した場合の遺族年金や、障害を負った場合の障害年金も減少します。年金が手薄になる分、さまざまな備えを民間保険等で補っておく必要があります」と氏家さん。
健康保険が変わるとどんな影響があるの?
「国民健康保険になっても、病院の窓口で支払う負担額や、1カ月の医療費が高額になった場合の高額療養費の制度は同じです。ただし、国民健康保険になると傷病手当金が無くなります。病気やケガの治療で働けなくなっても、会社員や公務員は、最長1年6ヵ月まで給与の3分の2が受け取れますが、自営業者にはそれがありません。
雇用保険からも外れるので、自分の事業がつぶれても失業給付はもらえません。失業給付はあくまでも雇用されている人のための制度なのです」
働けなくなったときへの備えは、会社員のときと異なり自ら行うことが必要になりそう。
老後資金は「小規模企業共済」と「iDeCo」で節税しながら準備して
社会保障という意味では、会社員や公務員に比べると「手薄い」印象の自営業。もともとは先祖代々の土地や店舗を引き継いで、老後は家業を継いだ子どもの世話になって、ということでこうした制度設計になっていると思われますが、パソコン1つで会社を飛び出し、ひとり働くイマドキの自営業にとっては、なんとも心細い状態。
「そんなフリーランスの方に、ぜひ若いうちから利用してほしいのが、小規模企業共済とiDeCoの制度です。小規模企業共済は、小規模な会社の役員や個人事業主が、退職金づくりのために利用できる公的な制度です。ひと月当たりの掛け金は1000円から7万円まで。元本保証で利息はほとんど期待できませんが、掛け金が全額所得控除になるので節税効果があり、退職か廃業時に受け取ります」(氏家さん)
「iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金。自営業者の場合、ひと月当たり6万8000円まで拠出でき、掛け金は全額所得控除になるため節税効果が期待できます。元本保証の商品も選択できますが、投資信託で運用益を狙っていきましょう。途中引き出しはできず、60歳以降に受け取ります」と氏家さん。
仕事の自由度が高いフリーランスや自営業。老後も自由に安心して暮らせるように、制度を活用して自助努力で準備していきましょう。
教えてくれた人
氏家祥美(うじいえよしみ)さん
ハートマネー代表。
ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。家計の見直し相談や講演活動を通じて、お金の基礎知識を伝えている。お金だけじゃない『幸福度の高い家計づくり』を総合的にサポートしている。zoomなどを使ったオンラインでの家計相談も受付中。
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