メトロミニッツ、東京、カウンター、レストラン

新時代を象徴するカウンター3軒

更新日:2025/04/20

昨今、ワンオペのカウンターレストランが急増しています。カウンターの新たな潮流は、‟サードプレイスのような心地よい空間"へ。カウンターを軸に、趣向を凝らした空間づくりを特徴とする3軒をご紹介します。

ripen

緑道に面した「ripen」。生産者に近い目線で野菜と向き合ってきた白石シェフが作る料理を、コース9品11000円(5品5500円)、2回転目以降はアラカルトで提供

緑と木のぬくもりの空間で
重ねた対話と誠実な料理から
信頼関係を築いていく

ゲストと接しながら料理を組み立てていく──カウンターレストランの最大の喜びはそこにあると言います。

「対話を重ね、相手の好みや背景を知れば知るほど、より満足してもらえるサービスができるんです」と話す白石さん。

何度も足を運びたくなるような空間にしたいと、店内は緑と木の落ち着いた色合いでまとめ、居心地のよさを重視しました。

(左)レストラン然とした雰囲気の中で親しみを感じられるよう、作家のうつわやアルコールの瓶は見せる (右)甘みの強い熟成ユリネを蒸して丸めて揚げた1皿。炭の香りを付けたホタルイカ、イカのワタのソースを流す

空間の上品さや料理への安心感はレストランとして大事にする一方で、「カチっとしすぎないこと」も意識します。

手仕事のぬくもりを感じる作家のうつわを揃え、ざっくり重ねて見せる収納へ。

2回転目以降はアラカルトメニューも展開し、ふらっと1人で立ち寄る人も多いそうです。客席の距離感が近いので会話が生まれやすく、隣り合わせた人同士で話がはずんでそのまま次の店へ、なんて光景もしばしば。

勢いのある個人店が点在する幡ヶ谷エリアで、はしごで料理とお酒を楽しむ店としても地域に根付いています。

ライペン
TEL.03-4500-0350 
住所/東京都渋谷区西原2-32-11 Park Sakura House 102 
営業時間/18:00~23:00(22:00LO) 日12:00〜19:00 
定休日/火

mehishiba

築40年越えのマンションの1階に入居するレストラン。蒸す、茹でる、焼くなどシンプルな調理で野菜の持ち味を引き出した約8品のコースを12000円で提供

誰かの部屋に
招かれたような‟自然"な空間に
レストランをひらく

「mehishiba」が入居するのは、新富町にある築40年以上のマンション。

あくまでマンションの一室という‟自然さ"を活かしつつ、気持ちよく過ごせるレストランをめざしたそうです。

店内に散りばめられた古きよきものたちには鈴木さんの好みが表れていて、あたたかい空気感を醸成しています。

(左)古いものが好きだという鈴木さんが選ぶ品々が店の随所に (右)プンタレッラのシンプルなソテー。クミンや胡椒を効かせたスパイスのソース、菊芋のピュレを添える

空間づくりでは「なにを置かないのか」という選択もとても大切。目に入ると違和感があるプラスチックやステンレス製の調理器具はなるべく用いません。タッパーやボウルは琺瑯を、鍋は作家ものの土鍋をメイン使い。

目の前で野菜を洗い、切り、火入れする──調理から生まれる音や香りもカウンターの醍醐味で、自然な流れを大切に。誰も気付かないような小さなことの積み重ねで、「なんか落ちつく」が作られています。

メヒシバ
TEL.03-4400-4409 
住所/東京都中央区新富2-4-3 京橋ダイヤモンドマンション1F 
営業時間/19:00〜23:00(22:00LO) 
定休日/火

restaurant origami

外苑前の「restaurant origami」は、魚と野菜の扱いに長けたイタリア料理店。メインが選べる12品のコース11000円、グラスワイン1100円~を用意する

気持ちいい清潔感と
「気にかけてもらう」
安心感を届ける

長年、キッチンから客席が見えない店で働いていた天野さん。「独立は必ずカウンターの店で」と決めていたそうです。

天野さんにとってのカウンターの魅力は、“目の前のあなたに料理を作る”という本質を味わえること。その感覚を大切に、コースのメインは3〜4種類の中から、〆のパスタの量も選べるようにして、オーダーメイドのような楽しみを展開します。

(左)元々ハイチェアだったものを座りやすさを考慮して脚をカット。傾斜が付いた座面で、長時間座っていても疲れない。ひじ掛けで空間を仕切り、安心感を高める (右)皮目を焼いた鰆のカルパッチョ。プチヴェールや芽キャベツなど春野菜とフキノトウのソースを添えて

途中でお腹が苦しそうなら量を調節するなど、即座に反応を落とし込めるのもカウンターならではの仕事。「気にかけてもらっている」という安心感が居心地のよさを生みます。

料理ができる過程を楽しめるのも、食べ手にとって魅力的な食体験。見て、聞いて、香って、「あれが私のお皿かな?」と待ち遠しい時間は、料理をもっとおいしくさせてくれます。

レストラン オリガミ
TEL.03-6683-2852 
住所/東京都港区南青山2-22-14フォンテ青山103 
営業時間/17:00~ 22:00(21:30LO) 土・祝18:00~※土・祝のみランチ12:00~、13:00~
定休日/日、ほか不定休あり

PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI,TARO OTA WRITING/NANAKO AOKI
※メトロミニッツ2025年5月号より転載 

※記事は2025年4月20日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります