
働くための最低限の住まいから、暮らしを楽しむ住まいへ、今、社員寮は変化しています。なかでも住環境のよさがピカイチと評判の、伊藤忠商事の社員寮へ。その住み心地を聞きました

「ナナメの関係」を生む
暮らしながらつながる空間
総合商社の伊藤忠商事には、新入社員のほぼ全員が社員寮に暮らすルールがあります。2018年に、それまで首都圏にあった4つの寮をひとつに統合して生まれたのが、ここ神奈川県・日吉にある男性社員寮。
暮らしやすさにこだわった寮は、福利厚生の目的だけでなく、ひとつ屋根の下で暮らすことで生まれる価値を若手社員の早期育成や、強い一体感の醸成に活かす狙いもあるとのこと。入社2年目の高橋一誠さんに住み心地を聞きました。

「関西出身で就職を機に上京しました。東京でひとり暮らしをするつもりだったので、社員寮の存在はありがたかったです。清掃が行き届きいつも清潔感があること、食堂のごはんがおいしいこと、洗濯代行サービスがあること、どれも満足です。
家事に手間をかけず、仕事だけに打ち込める環境が、慣れない業務の多い今はなおさら助かっています。なによりいいのは、同僚とコミュニケーションが取れること。普段は社外向けの営業職で、の近い社員と話をすることが少ないので、寮での暮らしは貴重な機会です。
特に食堂と大浴場、談話スペースでは顔を合わせる機会が多く、会話が広がります。毎日同じくらいの時間に入浴し、食事をとる、生活リズムの近い社員とは自然と距離も縮まります」

吹き抜けの建物は人の声や気配が適度に感じられ、暮らしながらつながる空間。談話の最中に知り合いが通りかかれば声をかけ、紹介し合う。そうやってタテ(部署)やヨコ(同期)だけでない「ナナメの関係」が築かれることも、寮の目的だと言います。
「顔見知りが増えると、新しい仕事で一緒になったときにも心強いです。業務には必要なちょっとした質問を、顔を合わせたタイミングで気軽に聞くこともあります」

社員寮には社員OBが頼れる寮長として常駐し、仕事の相談役のような存在に。毎朝の出勤時には玄関に立ち、一人ひとりに「行ってらっしゃい」と声をかけてくれるとか。そうしたやりとりが暮らしの中にあることも、笑顔が生まれる理由なのかもしれません。
「仕事はハードなこともありますが、帰ってくれば同じようにがんばる仲間がいることが励みです。『調子どう?』と声をかけ合うだけで元気が出ます」

取材中も聞こえる社員の明るい話し声。共同生活で培われる明るい空気は、そのまま社風につながっているように感じました。
伊藤忠商事株式会社
総合商社。世界61カ国に約90の拠点を持ち、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品、食料、住生活、情報、金融の各分野において国内、輸出入及び三国間取引を行うほか、国内外における事業投資など、幅広いビジネスを展開
PHOTO/NAOKI SHIMODA WRITING/KAORUKO SEYA
※メトロミニッツ2025年3月1日増刊号より転載