東京で日本ワインが飲めるお店もどんどん増えています。今のうちにチェックしておきたい最新店をご紹介。店主のこだわりが感じられる日本ワインのセレクトにもぜひご注目ください。
〈中野〉taner, / 2024.04 OPEN
国をまたぐ多層的なフレンチと日本ワインがマッチ
「taner,」を切り盛りする2人は異色の経歴を持ちます。オーナーの塚越慎之介さんはソムリエやパティシエとして経験を積み、ドリンククリエイターとしても活躍。
シェフのレオンハルト・天沼・ジュリオさんは日本やドイツ、スイス、香港などで長く生活。現地のフレンチやイタリアン、鮨店などで腕を磨いてきました。
海外の食文化に深く関わってきたレオンハルトさんの料理は、クラシカルなフレンチもあれば、ハーブを効かせたパスタ、トルコの冷前菜のメゼなど幅広い顔ぶれ。
国をまたぐ多層的なおいしさを、塚越さんが選び抜いた日本ワインが際立たせます。
蝦夷鹿に合わせた山梨のワイナリーの「B453」には、塚越さんの祖母の畑のブドウも使われているそう。丸みのあるやわらかな甘みが、蝦夷鹿のクセがなく優しい風味に寄り添います。
「SABI」は適度な酸化熟成により、まろやかな甘みとうまみが生まれ、チーズたっぷりのパスタと相性抜群。
「透き通った先に広がる豊かな味。軽やかなのに余韻が残る。そんな日本ワインの魅力を料理に合わせて伝えたい」と塚越さんは言います。
〈神泉〉haku / 2024.07 RENEWAL OPEN
若い世代も通う日本ワインと和小皿料理のバー
高田馬場と北参道で約7年間、「日本ワインSirocco」を手がけていた岩間芳樹さんが、神泉のワインバー「haku」のリニューアルとともにマネージャーに。
ラインナップに磨きをかけ、100種ほどのボトルと約10種のグラスワインを提供。新たな日本ワインファンを増やしています。
「神泉は若い世代が集まる場所であり、日本ワインを知らない方も多い。魅力を伝えられるよう、わかりやすい1本から複雑な風味のものまで、セレクトには今までの経験を総動員。
初めて飲んで気に入り、産地などで飲み比べされるお客様もいて嬉しいですね」と岩間さん。同じワインでも抜栓してから時間経過で変わる味を求め、連日通う客もいるほど。
「フードは和小皿料理を提供。優しい味わいが多い日本ワインは、繊細な和食によく合います」と岩間さん。
この日のグラスワインの「ウッディ・ルージュ」はサクランボやバニラのような香りがあり軽やか。あっさりと仕上げられた角煮にぴったり。
「北醇」は甘みと渋味が、コクのある鶏味噌とトロッとした甘みのある揚げナスの味わいを引き立てます。
「日本ワインだから、生産量が少ないから、高いという言い訳はしたくない。誰でもが手に取れるワインにしたくて」。栽培、醸造そして販売まで一貫したワイン造りが始まります。
〈代々木上原〉 tutti & 灯 / 2024.10 RENEWAL OPEN
ワイナリーへの思いをはせる女将のカウンター
神泉「buchi」や目黒「キッチン・セロ」などの人気店を立ち上げ、「女将」の愛称で親しまれてきた岩倉久恵さん。
この10月に、1階のイタリアン惣菜&酒場の「tutti」と2階の自身のワインバー「灯」を融合し、多彩な楽しみ方ができる店をプロデュース。
日本ワインは20年近い付き合いがある約15ワイナリーを中心に厳選。
「100回飲み、101回目にも飲みたくなるのがいいワインだと思うんです。親しく付き合い、現地を訪れ、応援し続けてきた造り手ばかり。じっくり彼らの話をしながら、お客様の気持ちをワイナリーのある遠くの場所まで連れて行けたら」と岩倉さん。
なかでも“長年の相棒”と話す1本がタケダワイナリーの「サン・スフル」。デラウェアの甘い香りが感じられ、飲み口はドライ。
「ルバイヤート」は産地ではおなじみの1升瓶で仕入れ提供。飲みやすく心地よい果実感も。
フードは仔羊の水餃子やプーアール胡桃など岩倉さんが手がけてきたお店の名物が集結。さらに名店出身の職人が作るピッツァも登場。国産とイタリア産の粉をブレンドした香り高くモチッとした生地が絶妙です。
※紹介している料理とワインはすべて取材時(2024年10月)のもので、現在のラインナップとは異なる場合があります
PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI WRITING/ATSUSHI SATO
※メトロミニッツ2024年12月号より転載