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昭和レトロな喫茶店がいくつもあり、手の込んだラーメンが日常で、目立たぬ酒場が感動的。和歌山のいいものは主張しない。歩く速さだから、見つけられるものばかり。
歩いて食べて、休んで飲んで
ゆっくり歩きたくなる城下町
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虎伏山にすっくと建つ和歌山城が、街から見える。穏やかなこの街の朝は、「珈琲るーむ 森永」のモーニングから始まった。
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さて、昼は? 和歌山ラーメンの老舗にして、揺るがぬ黒帯「山為食堂」か。はたまた、うどんの新星「うどんの大田萬」か。弾力のある麺に甘辛く炊いた和牛肉、などの発想がじつにそそるのだ。
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海の方へ向かうと、大正期の建築「旧西本組本社ビル」。建物の中にある「ノルム」では、メイド・イン・和歌山の洋服を見つけた。
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店員から聞いた密やかな無人販売所で桃を買ったり、ぶらぶらして汗をかいたら「幸福湯」でジェット風呂。湯上がりは「ビーンズ」で有田川町のクラフトビール「ノムクラフト」のジャーマンIPA。気分上々で「ブリッジ」へ流れ込み、グルーヴのある焼鳥と、まさかのピッツァを味わう。
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昼も昼とて、「酒の道場」は13時から開いている。酒屋角打ちの域を超えた、いぶし銀の居酒屋。「南方」「太平洋」「超久」といった和歌山の地酒を、好みを聞きつつ選んでくれる店主の温厚なお人柄、常連たちの愛ある会話も心地よい。
コンパクトな街は、どこへでも歩いて行ける。歩いて、食べて、休んで、飲んで。普段より少しゆっくりぶらぶらしたい。
PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI WRITING/NAOKO IKAWA
※メトロミニッツ2024年8月号より転載