高知,カルタ

VOL.42_高知県編_ローカリズム~編集長コラム【連載】

更新日:2024/06/20

高知県の魅力はどっぷりと浸るとじわじわ沁みてくる

高知,カルタ

大好きで10年通う高知県の
魅力を集めたカルタを作ります

 高知県の北部に本山という山間の小さな町があります。その町のJOKI COFFEE(ヨキコーヒー)というカフェが大好きで、よく通っています。通っているといっても年に1~2回ですが、そこを訪ねるために本山に行くと言うと、高知を知る人からはたいてい怪訝な顔をされます。というのもその本山町のある嶺北というエリアには観光的なランドマークもないし、なにか有名な施設があるわけでもありません。高知県で暮らす人も、観光客も、高知県内で最後まで訪れないエリアとさえ言われます。でも僕はその嶺北という場所が大好きです。そこにはただただ田舎の風景が広がり、町の暮らしがあります。そしてそのカフェでぼんやりとコーヒーを飲む時間のことを僕はいつも心のどこか見える場所に置いて、都会で暮らしています。それが「そこにある」ことが、僕たちが生きていく上でとても大きな力になることを知っているからです。

高知,カルタ

 そのカフェの前には美しくふつうの川が流れ、対岸の牧草地で牛が草を食んでいる向こうに、深い緑に覆われた四国山地が連なっています。棚田から生まれる世界的に評価されるお米があり、テロワールを大切に日本酒を造る古くからの酒蔵があります。

 何年か前の夏にその町に滞在したことがありました。カフェでコーヒーを飲み、やることがなさすぎていつもは食べないスイーツを食べたりしました(そこで食べた文旦タルトの衝撃よ…)。河原で水切りをして遊び、散歩をし、夜は地元のお酒で酔っぱらって、星が見える山小屋みたいなバンガローで眠りました。絵に描いたような夏の太陽と川のキラキラと、やることのない暇で自由な時間が過ぎていきました。そこを通り過ぎるのではなく、そこに「滞在する」ことで、ずっと早回しにして進んでいた時間がゆっくりになったあの経験は、忘れられない夏の思い出として今も心に居座っています。

 もちろんそこでゆっくりしたからと言って僕の毎日のスピードが変わるわけではないし、僕に課せられたタスクが減るわけでも、人生が大きく好転するわけでもありません。でもそこには確かに僕たちの毎日を「豊か」にしてくれる、僕たちが根源的に求めている時間が存在するのは確かです。求めているにもかかわらず、ほかのことに時間を使いすぎて忘れてしまっている、あるいは諦めてしまっている時間のこと。

 その町で僕はいつも思います。たぶん僕たちが「やらなくてはいけない」と勝手に優先順位を上げているものの中には、「別にやらなくてもいいこと」もけっこう含まれているかもしれないなと。そしてどうしてそれをやらなくちゃいけないと思うかと言うと、たぶん僕たちはあまりに同じ場所で、同じ思考回路を使い、同じ人たちと生きているからなのです。

高知,カルタ

 高知県のことを好きな理由をよく尋ねられます。たくさんあるのですが、いちばんはそこで「どっぷり」とその日常に隠れるように過ごすことが好きなのだと思います。高知県というのは結局のところ田舎です。でもその田舎を「どっぷり」と体験すると、そこには抜け出せない魅力があります。先のニュースで実に日本の40%以上の市町村が消滅可能性自治体として発表されたように、言うなれば日本のほとんどの地域は「田舎」と呼ばれるエリアです。でも田舎にこそ急ぎすぎた僕たちが日々の豊かさを取り戻せるコンテンツが多く現存していることを僕は経験的に知っているし、その中でも高知県の田舎は「スペシャル」な豊かさを秘めている、そんな風に感じます。言葉を変えるとそれは「極上の田舎」と呼べるかもしれません。

 ただそれは「ふつう」であるがゆえに言語化も難しく、そして通り過ぎるだけではそのよさがわからないという側面があります。だからこそ、そこに「滞在」する時間を作れるかどうかで、その田舎の価値をきちんと享受できるかどうかが変わってくるのです。

 そのスペシャルな田舎のコンテンツを伝え、残すべく、高知の「田舎のコンテンツ」を集めたカルタをメトロミニッツで作ることになりました。ぜひみなさんにも参加していただけたらと思います。

高知県の田舎のカルタをつくっています

メトロミニッツ編集部では、高知県出身者や高知県好きのみなさんから、高知県の「田舎あるある」を集めて、高知県の田舎カルタを作ることになりました。完成は秋を予定しており、完成後にはカルタ大会も企画しています。カルタのコンテンツ採用者の中から抽選で、高知の田舎を「どっぷり」体験できる素敵なプレゼントも準備しています。詳細は下記より。ぜひみなさまの応募をお待ちしています!

※メトロミニッツ2024年7月号より転載 

※記事は2024年6月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります