メトロミニッツ、東京都、国立市、クラシコム、北欧、暮らしの道具店

いい会社を作るために だいじなことってなんですか?~株式会社クラシコム編~

更新日:2024/05/20

ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営。「フィットする暮らし、つくろう。」というコンセプトで、幅広い雑貨やアパレルと、読み物や動画、映画などのコンテンツを展開する「株式会社クラシコム」がだいじにしているのは、“全力で「採用」すること”。

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株式会社クラシコム 代表取締役社長 青木 耕平(右)、取締役副社長 佐藤 友子(左)
PROFILE/兄妹で旅した北欧をきっかけに、2006年に株式会社クラシコムを共同創業。青木さんが代表取締役社長、佐藤さんが取締役副社長兼、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」の店長を務める

初めて会社を訪ねたときから、気持ちいい空気が流れていたクラシコム。風通しのいい空間と、そこで働く社員の笑顔。いい会社の「気持ちよさ」はどうやって生まれているのでしょうか。

佐藤:私たちには、サラリーマンの経験がほぼないんです。長く働けると思える職場に出会えてこなかった原体験があるからこそ、社員のための会社というより、まずは「私たちが働きたいと思える会社」を作ろうと。それが起業した頃からの変わらない思いです。

青木:その上でいちばん大事にしているのは「採用」です。僕たちが社員に約束できるのは、余計な人間関係のストレスがないこと。誰かの顔色を窺ったり、根回ししたりしなければ仕事が進められないような状況は絶対に作りたくありません。そのためにも僕たちがやろうしていること、大事にしていることに自然とフィットできて、居心地よく働けそうな人と共に働きたい。だから採用はいつも必死です。ミスマッチが起きないよう、あらゆる知見と経験と、多数の見る目を総動員して、何度も話し合いを重ねます。


佐藤:時間をかける分、採用した社員の離職率はとても低いですね。たとえ離職しても、社外から仕事を共にし続けるような関係が続く人もいます。

青木:ただ、社員も増え、リモートワークも長くなってきた今は「言葉」で伝えることの必要性を改めて感じています。この間は、企業理念に込めた意味や思いを、90分近く時間をもらって僕から全社員へ話しました。なんでも「話さなくても理解できているだろう」とは思わずに、ちゃんと言語化する必要があると思っています。


佐藤:最近では管理職(マネージャー)に向けて、仕事に対する考え方を伝えるマニュアルを作りました。青木が書いたものですが、あれもこれもと加えているうちに5万字を超えて(笑)、今後、仕事で迷ったときに、教材として使ってもらえたらと思っています。


青木:会社が大きくなれば、それだけ仕事も高度化し、マネージャーに求められるレベルも上がります。その中で僕ら経営陣ができるのは、彼らが業務にできるだけストレスなく携われる道具を用意すること。性能のいいパソコンやプリンターと同じように「言葉」も道具のひとつだと考えています。

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今年、国立駅直結のビルにオフィスを移転。吹き抜けの空間には、個人の作業からミーティングまで、目的に合わせた設備の整う執務スペースが充実し、より働きやすく生まれ変わった

そして採用の次に大事にしているのが「評価」なんですね。

青木:会社の成長のためには、社員が機能する環境が必要です。そのために評価があり、それは給与を決めるためのものではなく、会社と個人の「位置と役割に対する認識のすり合わせ」だととらえています。社員が自分の役割を理解し、それに納得することでやりがいが生まれる。そのための評価を、1年に二度、経営陣と全部署のマネージャーで丸2日かけて行っています。

採用にも評価にも、会社総動員で時間をかけるんですね。

佐藤:それがなにより大事ですから。このふたつがある時期は、私たちが1年で最も疲れる時期です(笑)。

青木:けれどその土台さえ整えば、仕事はスムーズに進んでいきます。いいプレーヤーにいいグラウンドとボールを与えて、適したポジションを決め、あとは自由にパフォーマンスをしてもらう。創業以来、社員は基本的に残業をしない働き方を続けていますが、変わらずに成果が挙げられているのは、それゆえだと思っています。

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この新しいオフィスも、働きやすさが体現された空間ですね。

佐藤:会社を始めた頃に行った北欧での景色が今も記憶に残っているのですが、魅力的な暮らしに対する憧れは、今私たちが届けるサービスの原動力になっていて、そこで働いていた人たちに対する憧れが、今の会社作りにつながっています。20年近くかけて少しずつ、その理想が形になってきました。

青木:よく5年後、10年後はどうありたいかと聞かれるのですが、正直言ってわからないんです。ただ、目の前のことひとつひとつから目をそらさずに、意思決定を積み重ねていくこと。そしてそのプロセスを、しっかりと言葉にして社員に伝えることだけは変わらずに続けたいと思っています。それを繰り返していれば、きっと想像する以上の未来が待っていると信じています。

PHOTO/NAOKI SHIMODA  WRITING/KAORUKO SEYA
※メトロミニッツ2024年6月号より転載 

※記事は2024年5月20日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります