東京のまんなかに 僕たちが日本中から集めたもので 小さなお店をつくります
僕らはやっぱり編集者で
誰かの喜んだ顔が見たいのです
ときどき「どんな人が編集者に向いていますか?」という質問を受けます。そのたびに考え込んでしまうのですが、ひとつだけ言えることがあります。それは自分の興味関心、新しく発見したことを他人に伝えることが好きで、それに共感してもらえたときに、「でしょ?」といって喜べる人です。かんたんに言うと誰かに行きつけのお店に連れて行ってもらったあなたが「おいしい!」と喜んだときに「でしょ?」と言われたら、その人は編集者の小さな資質があると思ってもいいと思います。
日本中を旅するように過ごす日々の中で、編集者として今まさに日本の地域のおもしろさを感じています。なかでもこの2年でいちばん興味を持ったこと、そしてなによりも地域のポテンシャルを強く感じるものがあります。それがワインです。
フランスやイタリアに比べたら日本ワインの歴史なんてまだ生まれたてみたいなものだし、実際10年前まで日本のワインといったらほとんど地域の土産物の域を出ていませんでした。でもここ数年の日本ワインの勢いは、このタイミングで飲めていることが幸せだったと10年後にきっと思うと思います。山形、岡山、北海道…いまや日本ワインの勢力図は大きく変わろうとしていて、ワイナリーがない県はもう佐賀だけ。日本中でワインが作られるようになりました。でもひとつ言えるのは、それはほとんどその土地から出てきていません。それらは作り手に俗人化されることで個性が生まれ、今の状況を生み出しているのです。当然その生産量はたいてい、少ない。そしてそういう人はいま、地方でワインを作っています。
「いい街に必ずあるものはなんですか?」。これもよく聞かれる質問です。僕は必ず「いいパン屋さんですかね」と答えるようにしています。みんなちょっと期待外れな顔をするのですが、僕にとってみればいいパン屋さんがあるだけで、その街はいい街。いいパン屋さんというのは、街を変えてしまうくらい力があると思います。
誤解を恐れずにいえば、ブドウを育ててワインを醸造する人も、酵母をおこしてパンを作る人も、どちらも求道者。他者との相対ではなく、自分の絶対軸を持ち合わせています。そのような人種の人たちが、その土地の風土や文化、テロワールに目を向けずに生きることはまずありません。おのずとその「場所に根差した」ものが生まれ、育っていきます。そしてその目線で捉えれば、日本の地域は多くの可能性で溢れています。
誤解されたくないのは、地域と東京を比べ、どちらが優れているとか劣っているとかを論じたいのではありません。東京はインフラが充実した、世界中のイイモノが集まるターミナル都市です。東京はなにかが生み出される場所(もちろん多くの素晴らしいものが生まれていますが全体として)ではなく、集まる場所なのです。
でも前述したように、いまの地方の勢いや胎動を受け止められるだけの情報も手段も、東京には足りていません。それくらい地域の変化が大きいのだと感じます。
今回その東京のまんなか、銀座で、日本中から集めたワインとパンを販売しようと思います。
どうして僕らがイベントをするのか? それはシンプルです。みなさんに僕たちがローカルで出会った良いものを「体験」してほしいからです。雑誌は「情報」は届けられるけど、「体験」は届けられない。だから場所が必要なのです。そしてもう何度かここで書いていますが、僕は編集長の次は「店長」がしたいと思っています。お店がやりたいのです。
会場はまさにお店です。いちばん大切なのは実は「什器」で、今回はそこもこだわっています。浅草橋にある会社を訪ね、コラボレーションしてもらいました。いいお店って、まずは居心地ですから。
手前味噌なことをいうと、これだけのワインとパンが全国から同じ場所に集まることはなかなかないと思います。みなさんに楽しんでいただけたらと、いま準備しています。僕らは会場でみなさんが「おいしい!」って笑う顔を見て、ただただ「でしょ?」と小さくほくそえみたいのです。あるいは直接そう伝えたいだけなのです。
SPECIAL EVENT■GINZA SIX × Metro min.
4/28-30開催_ローカルなパンとワインを三原テラスで!
GINZA SIXの2Fにある憩いの空間「三原テラス」にて、フルカワが集めたローカルのパンと、お酒担当の松島がセレクトした日本ワインをグラス提供で販売いたします。ぜひお越しください!!
日時:2023/4/28(金)~30(日)11:00~17:00
場所:GINZA SIX 2F 三原テラス(東京都中央区銀座6-10-1)
参加:無料(予約不要・自由参加)
※小雨の場合は決行、荒天の場合は中止となります
※メトロミニッツ2023年5月号より転載