スープ、スープ作家、有賀薫さん

【特集・スープ】スープ作家・有賀薫さんが一生作り続けたいと思うスープ

更新日:2022/12/24

長年スープを作り続け、SNSを中心に発信しているスープ作家の有賀薫さん。その有賀さんに、人生の最期まで伴走してほしいと願うスープを聞きました。時代とともに変化する暮らしのスタイルやリズム。その中でスタンダードとして残っていくスープや、試行錯誤の末にたどり着いたというレシピとは?












変化する時代と暮らしに応用がきく、基本のスープを

スープ、ポトフ、スープ作家、有賀薫さん

「父が汁物好きで、家のごちそうのひとつが水炊きでした。私も子どもの頃から鶏のスープが大好きです」
スープ作家の有賀薫さんが、生涯作り続けたいスープとして選んだのは、鶏とかぶのポトフ。
「ポトフは料理家になる前から作ってきましたが、なかなか定番化できなかった料理です。具の煮え具合が揃わない、野菜が煮崩れるなど意外に難しい。試行錯誤して、最初に肉を煮て、後で野菜の煮え加減を調整するスタイルに落ち着きました」

ひと口飲むと、鶏のうまみやネギの香り、それぞれの輪郭がはっきりとしたおいしさに驚かされます。
「鍋に材料を入れて、水を加え、煮て、味を調える。ポトフはすべてのスープの原型といえます。その本質は、肉や野菜のうまみを水から煮て引き出すこと。とてもプリミティブですよね。でもそれで十分においしい」

ニンジンだけ、豚とジャガイモだけと使う食材を絞り、味付けは基本的に塩、胡椒。ときには少しのバターやオイル。蒸し焼きにしたり焼き付けたりして素材の持ち味を引き出す、有賀さんのレシピは実にシンプルです。現代の外食では濃い味が流行し、家庭でも顆粒だしやスープの素が重宝される中で、そのミニマルなスープが支持を集めてきました。とはいえ、市販の固形スープを使うこともあります。ただ、効果的に使えばうまみをぐっと底上げできる一方、量が多いとせっかくの素材の風味を覆い、画一的な味になりかねません。
「それは逆に不自由ですよね。具は違うのにスープの味がいつも同じになってしまうと、読者の方から相談が寄せられることも多いです」

スープ、スープ作家、有賀薫さん
「かぶの煮え具合が最も重要。ソーセージは皮が弾けないよう最後に」と有賀さん

今年9月、有賀さんは自身のスープレシピの集大成ともいえる本『ライフ・スープ』を出版しました。
「タイトルには、読む人の『生活の中にあるスープ』にしてほしいという思いを込めました。生活って人それぞれですよね。好き嫌いがあるかもしれないし、小さな子どもがいたり、あるいは子どもが独立して夫婦だけになったり。1人世帯も増え、現代は生活様式が多様です。ポトフの原理もそのひとつですが、その人の生活に応用できる、スープの考え方を伝えることを大切にしました」

目指したのは、多くの人が好むレシピを時代に合うようアップデートし、新定番として定着させること。
「スープという料理は現代の食卓に合っています。簡単で失敗しにくく、温め直せばいいから家族が時間差で食べるときにも便利。子どもからお年寄りまで皆が食べやすく、しかも鍋ひとつでできるから、作るのも片付けるのも楽。油はあまり使わずヘルシーで、いいこと尽くめ。私は人生の最期まで、自分がおいしいと思える味の料理を作り、味わっていきたい。この気持ちは多くの人が共感してくれると思います。そのための手がかりを見つけてもらえたら」

鶏とかぶのポトフの作り方

スープ、スープ作家、有賀薫さん

材料

○材料(2人分)
鶏もも肉・・・1枚(約350g)
塩・・・小さじ1と1/2(約2%)
胡椒・・・少々
かぶ・・・4 個
(大きいものなら2個を半分にする)
長ねぎ・・・1 本
にんにく・・・1 片
水・・・1200mL
ソーセージ・・・2 本

スープ、スープ作家、有賀薫さん

手順1

鶏もも肉は塩と胡椒をすりこみ冷蔵庫に1~2 日置く。かぶは皮をむき、葉は1~2個分をざく切りにする。長ねぎは白い部分を4つに切る。にんにくは皮をむく

スープ、スープ作家、有賀薫さん

手順2

半分に切った鶏、にんにく丸ごと、長ねぎの青いところ少々を鍋に入れ、水1200mLを加えて火にかける。アクが出たらすくいとり、弱火に落として20分ほど煮る。ふたはせず、水があまりに減るようなら少し足す

スープ、スープ作家、有賀薫さん

手順3

かぶと長ねぎを加え、柔らかくなるまで15 ~ 20 分ほど煮込む。最後にかぶの葉とソーセージを加えて煮る。味を見て塩と胡椒で調える

ライフ・スープ
くらしが整う、わたしたちの新定番48品

代表作『スープ・レッスン』シリーズの最新作。現代にフィットする48 レシピを提案。プレジデント社 刊

有賀 薫

ありが かおる
シンプルで作りやすいスープのレシピや暮らしの考え方を発信。『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』( 文響
社)ほか著書多数

PHOTO/TARO TERASAWA Text/ATSUSHI SATO
※メトロミニッツ2023年1月号特集「人生に、スープを」より転載

※記事は2022年12月24日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります