こんな年にもブドウは育ち 今年はどんなワインを 飲ませてくれるのだろう
ワインと果物と風の町で
僕たちのツアーをつくりました
「笛吹」と聞いて思い出すのは昔読んだグリム童話「ハーメルンの笛吹き男」。その不思議で少し怖い話のことが僕は大好きでした。山梨出身の作家、深沢七郎が小説のモチーフにした、町を流れる美しい笛吹川の由来の物語も寓話的で、笛吹とはどんな場所なのだろうと、ずっと頭の中にこの町がありました。
日本ワインに興味を持つようになり、念願かなって降り立ったこの町には、11のワイナリー、そして石和温泉という素晴らしい温泉がありました。日本ワインと温泉。この季節になんというパワーワードでしょう。僕たちはなんとかこの町を読者のみなさんと一緒に体験すべく、ツアーを企画しました。山梨県は日本ワインの生まれた場所。それは脈々と受け継がれ、現在の日本ワインの人気は周知の通りです。でも情報過多の現代を生きる愚かな僕たちはますます即物的になり、その過去にあった苦悩や苦労、物語に思いを馳せる時間を失ってしまいました。
今回のツアーでは、その山梨ワインの「今」を作ってきた人たちを訪ね、その思いを聞く時間を作りました。例えば「日本ワインの夜明け」などの著書を持つ仲田さん、そしてワインツーリズムを主宰し、「フォーハーツカフェ」で山梨ワインの魅力を伝え続ける大木さん、この2人も来てくれます。個人的な意見ではありますが、この2人がいなかったら山梨ワインはまだ今とは違う場所にいたのではないでしょうか。
ツアーでは、この町を代表するワイナリーを訪ね、飲み、伝道師たちから山梨ワインの話を聞き、温泉に入ってのんびりします。8名の小さなツアーですが、まずはテストとしてやってみます。
さて、メトロミニッツはこの号で、創刊20 年を迎えることができました。あなたが読んでいるこの240号は1 冊の本ですが、その間には239冊分のクリエイターや、関わってくれた取材先の方々のご協力がありました。そしてもちろん、読者のみなさまあってこそ。その感謝を込めて、11 月25 日から小さなイベントを開催します。この笛吹市のツアーも、会場限定での販売とせていただければと思います。僕も店頭でお待ちしています。20 年のお礼を直接お伝えできたらと思います。
Illustration/YOSHIE KAKIMOTO
※メトロミニッツ2022年12月号より転載