19世紀末、ロンドンの名門ホテル「サヴォイ」の料理長オーギュスト・エスコフィエが、世界的オペラ歌手ネリー・メルバのために考案した桃のデザート、ピーチメルバ。その味わいの中心となるのは、桃のコンポートとラズベリーです。この夏、ピーチメルバをベースに作られた、2つの美しいパフェをご紹介。王道にして永遠のコンビネーションを、目と舌で、ご鑑賞ください
グラスデザートの名手が生みだす
爽やかな酸味と香気に際立つ桃の余韻
カウンターでいただくグラスデザートの先駆者、吉岡浩太 さんが今夏の「桃のパフェ」で主役に据えたのは、ラズベリーのグラニテ(氷菓)と桃のコンポート。
「そのままで十分おいしい桃に主張の強い食材は不要。その繊細な風味を引き立てるのは、やはりラズベリーです。そして、どんなによい桃でも甘みや香りのピークは短いもの。常にベストな状態で提供する上で、コンポートは理に適っています」と吉岡さん。
グラニテと一緒にふるふるのコンポートを頬張れば、甘酸っぱいラズベリーのあとから立ち上がってくる、桃らしさ際立つ桃の味わい。
さらに青ゆずのアイスクリーム、パッションフルーツのジュレ・・・、爽快な香りと酸味の階層のなかで桃の余韻が続きます。
アトリエコータ 神楽坂店
TEL.03-5227-4037
住所/東京都新宿区神楽坂6-25
営業時間/テイクアウト&カフェ:9:00~19:30 カウンターデザート:平日 11:00~18:30 土・日・祝 10:30~
定休日/無休
※桃のパフェ1700円の提供は8月中旬まで(予定)
文豪たちが愛したクラシックホテルが
大切にする、古くて新しい価値観
桃ゼリーと生クリームの下に敷いたラズベリーソースを「はかなく淡い桃の味を酸味で引き締める、いわば“ 赤いレモン果汁” のような存在」と話す、ペストリー・シェフの安﨑正平さん。
目指したのは「フレンチ・デセールの王道を行きながらも、食べる人の心をつかむ華やかな第一印象と現代の味覚に受け入れられるおいしさ」。
精巧な桃の飴細工や、生桃以上にフレッシュさを感じる桃のコンポートも然り。
煮るかわりに真空パックを使い、浸透圧の限界までシロップを浸み込ませた桃は、加熱しないので香りも芳醇。
底のカスタードにも桃のクレームリキュールをわずかに加えることで、最後まで桃の気配をまとわせます。
説明は割愛しますが、サーブにも驚きの演出が。
コーヒーパーラー ヒルトップ
TEL.03-3293-2834
住所/東京都千代田区神田駿河台1-1 山の上ホテル B1F
営業時間/11:30 ~ 21:00(20:00LO、ドリンク20:30LO)
定休日/無休
※白桃パフェ2200円(税・サ込、数量限定)の提供は8月末まで
PHOTO/SAORI KOJIMA TEXT/METROMIN.
※メトロミニッツ2022年8月号特集「桃に恋して」より転載