山形県、山形市、プルピエ、POURPIER、ナチュラルワイン

春の山形旅02_温かなワイン食堂で、ナチュラルワインと季節の料理を

更新日:2022/04/20

山形の夜がいっそう楽しいのは、心からくつろげる最高の酒場があるから。繁華街から少し離れた「プルピエ」では、店主とシェフが探し歩いた、志高い生産者のワインと食材を提供。おいしさはもちろん、お店の雰囲気を愛する人々で今宵もにぎわいます。

ナチュラルワインと気まぐれキッチン プルピエ

山形県、山形市、プルピエ、POURPIER、ナチュラルワイン
サクラマスのミキュイ1200円。絵画的な美しさの盛りつけも魅力

旅先にあったらうれしい、
そんな酒場が山形にあります

 旅の終わりも近づいてきた。おいしくて居心地のいい、あのワイン食堂に寄って帰ろう。食堂なんて言ったら怒られるかな。でもあの温かい、打ち解けた雰囲気はついそう呼びたくなる。山形を訪ねたら必ず寄りたいお店のひとつなのだ。

 日替わりのメニューを見ればサクラマスがあり、やっぱり県人に愛されてるなあ・・・としみじみ。「低温調理で半生状態にして、春菊とウコギのオイルを敷いています」とシェフの武田悠(ゆう)さん。ウコギは木の若芽でほろ苦さが身上、山形では春の定番食材だ。軽くゆでてオリーブオイルと合わせミキサーにかけている。散らされるのはレモンと赤ワイン酢でマリネした「おとめ心」、山形生まれのイチゴである。甘酸っぱいフルーツとウコギのほろ苦さ、なめらかで繊細なサクラマスの食感がなんとも楽しい掛け算だった。

 鹿肉のローストを頼むと、付け合わせにはイタリア野菜に並んでコゴミやウルイが並び、存在感を見せる。どれも赤ワインソースに全然負けない。添えられたフキノトウのピュレをちょっと鹿肉につけて食べれば・・・ああ、未知のおいしさだ。山菜ってもっと自由に使っていいんだな。

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たっぷり山菜が付け合わせの、石巻・小野寺さんの鹿のロースト2800円。宮城県のFattoria AL FIORE 2018 年メルローと

 ワインは料理に合わせて店主の佐藤洋一郎(よういちろう)さんに選んでもらうが吉。造り手がどんな思いで育てたワインか、いつも気さくに教えてくれるから。ちなみにお店では山形産食材とナチュラルワインを中心にしつつ、県外のものも供されている。「日本各地を旅してご縁のできた生産者さんたちの、心ある食材もどんどん紹介していきたいんです。彼らの志も伝えたくて」と佐藤さん。

 おや、ふとキッチンを見れば山菜のシドケをミキサーにかけている。どうするんですか? 「パウンドケーキにするつもりなんです、まだ試作中ですけどね」と。うーん、これは気になりすぎる。春のうちにもう一度訪ねなければ!

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【取材ノートから】上/店主の佐藤洋一郎さん(左)とシェフの武田悠さん、共に今年36歳になる 下左/お店は山形市の繁華街から離れたエリアにある。「わざわざうちを目指して来てくれるお客さんを増やしたかったから」と佐藤さん。彼が選んで注いでくれるワインを飲みたくて、武田さんの料理を食べたくて集まる客で、きょうも店はにぎわう 下右/佐藤さんに、山形県のワイナリーから「ゆっくり飲みたい夜」をテーマにセレクトしてもらった3本。右から酒井ワイナリー「名子山2019」、DROP「bourgeonement2020」、タケダワイナリー「ヴァン・ド・ミチノク」。グラスワインは500円~、ボトルワインは4000 円~

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【取材ノートから】路面の大きな窓から光が降り注ぐ店内では、不定期でイベントも開催している

DATA

TEL.非公開 
住所/山形県山形市桜町2-42
営業時間/日~木18:00~24:00(23:00LO) 金・土~ 25:00(23:30LO)
定休日/月
※予約・問い合わせはSNS のDM で(Facebook: プルピエ“Pourpier”/ Instagram: @pourpier_naturalwine)

文・白央篤司

はくおうあつし フードライター。「暮らしと食」、郷土料理をテーマに執筆。『オレンジページ』、CREA WEB、ハフポストなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)、『自炊力』(光文社新書)など

PHOTO/TAKANORI SASAKI
※メトロミニッツ2022年5月号特集「水のこと、考えてる?」より転載

※記事は2022年4月20日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります