民藝、オズモール、鳥取県、ミントチュチュレザー

花のような籐細工が可憐。鞄職人が手掛けるレザーブローチ/鳥取県・米子市「花結びのブローチ」

更新日:2022/02/20

ローカルに暮らすあの人が教えてくれる、町で生まれた手仕事もの(=民藝ちゃん)の話。今回は鳥取県・米子市で作られる、花結びのブローチを紹介。鳥取県の芸術・文化を扱うウェブサイト「+○++○(トット)」を運営する水田美世さんが、民藝ちゃんにまつわるローカルの物語をお届けします。

一子相伝の籐細工を継いだ鞄職人がつくるブローチ

「近所に素敵な鞄づくりをする人がいるの」。イラストレーターをしている幼馴染の友人が、珍しく弾む声で川口淳平さんのことを教えてくれたのはもう10年も前のこと。私たちが通った小学校のすぐそばに店舗兼工房があり、私はすぐに出かけた。

その店は決して広い訳ではないけれど、しんとして且つ伸びやか。無駄無く整えられた什器には、川口さんがデザインし、成形し、縫って仕上げた革製の鞄や財布などが、静かに呼吸するように佇んでいた。全てにおいて、同じ人間の芯のある美しさの基準から生まれ存在するもの達。息を飲むとはこういう時に使うんだと、合点がいった。

後から知ったのだが、この少し前から川口さんは革に加えて籐(とう)での鞄製作を視野に、お隣の島根県は松江市で江戸時代から続く長崎家6代・長崎誠さんに弟子入りしていた。長崎さんの気負いない朗らかな籐細工に魅せられ、何よりも、一子相伝の「花結び」編みが跡継ぎのない当代で途絶えることへの憂いに背中を押されたのだ。

花結びには6弁の花模様が緻密に並ぶ。1つひとつの花目がぷっくりと主張し、かわいらしさに加えて無音の迫力にも満ちている。川口さんの作る花結びを身に付けるとき、美しさへの希求とその覚悟を、ほんの少しだけ一緒に背負えるようで、なんだか嬉しい。

文・水田美世

民藝ちゃんDATA

■教えてくれた人/水田美世さん
2008年から8年間、埼玉県川口市で学芸員として勤務の後、出産を機に鳥取県米子市へ帰郷。2017年より県内の芸術・文化を扱うウェブサイト「+○++○(トット)」を有志で運営する
>>+○++○

■作った人/川口淳平さん
1998年に広島県三原市で鞄の製造を始める。2004年に鳥取県米子市で「ミントチュチュレザー」を開店。2009年より籐細工職人の長崎誠氏に弟子入りし、2015年より籐鞄の販売を始め現在に至る

■買えるところ/ミントチュチュレザー
TEL.0859-32-8650
住所/鳥取県米子市上福原3-8-7 Nハウス102
営業時間/13:00~19:00
定休日/水 ※その他不定休あり。来店の際は営業日をご確認ください
>>ミントチュチュレザー

PHOTO/MANABU SANO
※メトロミニッツ2022年3月号「わたしの町の民藝ちゃん」より転載

※記事は2022年2月20日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります