“つよぽん”の愛称で日本ワインファンから慕われる小林剛士さんの「室伏ワイナリー」。山梨市牧丘町の室伏の地で、誰もが入手しやすい至福のテーブルワインを目指してワインを造っています。
〈YAMANASHI/WINE〉室伏ワイナリー
昨年10月、山梨市牧丘町の“室伏”(むろぶし)の地に1軒のワイナリーが誕生。“つよぽん”の愛称で日本ワインファンから慕われる小林剛士さんの室伏ワイナリーです。
小林さんは山梨の勝沼醸造、四恩醸造で実績を積み、2016年、自身の会社「共栄堂」のブランド名でのワインを造りを開始。
今までは、三養醸造で委託醸造してワイン造りを続けていましたが、いよいよ自分自身のワイナリーの完成に漕ぎ着けました。
小林さんのワイン造りの根っこにあるのは、農家さんもワイナリーも共に栄えてほしいという思い。同県北杜市の過疎集落、増富に生まれ育った彼にとって田畑が消えることは村が消えてしまうことを意味します。
農家さんとワイナリーの共存は必須。社名に実家が営むよろず屋の屋号、「共栄堂」を使っているのもそのためで、農家さんからの購入ブドウでのワイン造りを大切にしています。
念願のワイナリーを持った小林さん。目指すは食卓に上る日本のテーブルワインです。稀少価値は嫌いだと言い、「バイアスなしに、自分のワイン、日本ワインの本質を見てもらって楽しんでもらえば本物」と言います。
最近の日本の小規模ワイナリーのワインは、極少量生産で入手困難なものが多い中、彼が考える生産量は1アイテムにつき、5000本から1万本です。
さらに飲み手が何本か買えるようらと通常のアイテムは1000円台という嬉しいお手頃価格。少し熟成させたものでも2000円台前半。どんなに高くとも2500円以内に収まるようにしたいそう。
「企業努力をすれば、日本ワインでも農家さんから適正価格でブドウを買って1000円台でおいしいものができるんです」と小林さんは断言します。
そして、2022年1月4日。待望の室伏ワイナリー初仕込みのワインが登場。
白、赤、橙(オレンジワイン)の3アイテムに加え、地域を限定して販売される2アイテムが勢揃い。
野生酵母で造られたワインたちは、彼曰く、「赤は軽く、白は強く」という味わい。
みずみずしい果実味が喉をすーっと通る赤、じんわりと口中で飲みごたえを感じさせる白やオレンジワイン。いずれも親しみやすさだけではなく、魅力ある個性を放っています。
価格や生産量、そして味わいの上でも多くの人が入手しやすい上質なテーブルワインを造っていこうとしている小林さん。
農家さんや飲み手、伝え手への愛情あふれる彼のワインを飲めば、日本ワインに魅力が感じられるに違いありません。
室伏ワイナリー 注目の1本 「K21_FY_DD」
果実味とともに口中で
じわっと広がるうまみ
白ブドウを赤ワインのように醸造した橙(DD)。豊かな果実味に酸が溶け込みバランスが見事。後味にたっぷりうまみが残って満足度抜群。1870円とコスパは極めて高い
DATA
室伏ワイナリー
TEL.非公開
住所/山梨県山梨市牧丘町室伏725 見学不可(ワインツーリズムやまなしのイベント時にはツアーで訪問可)。直売なし。購入可能な酒販店はホームページにて公開
PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI WRITING/MIYUKI KATORI
※メトロミニッツ2022年2月号特集「47都道府県SAKEFILE」より転載