入手困難な状況が続くジャパニーズウイスキーですが、なんと、国内ほぼすべての蒸留所を揃えるバーが新宿にあるのです。しかも2店も。稀少銘柄の飲み比べも夢じゃない。バーの扉の先は、日本全国の蒸留所につながっています
〈新宿〉Shot Barゾートロープ
「国産ウイスキーはますます多様でおもしろくなっています」
開店は2006年。堀上敦さんは、ウイスキー人気の低迷期、しかも認知度が低かった国産ウイスキーに特化したバーを開きました。
「ニッチな隙間産業ですね、なんて言われたものです。でも90年代半ばに飲んだ“駒ヶ岳”や“秩父”が驚くほどおいしくて!口当たりのやわらかさに衝撃を受けました」
世の中の流行と逆行するようなジャパニーズウイスキー専門バーは、未知の酒を味わえる稀有なバーとして知られるようになります。
今や国内のウイスキーの全蒸留所のボトル、400 本以上を常備。そこに、開店時から日本各地の蒸留所に足を運ぶ堀上さんの話が添えられれば、目の前の1杯はさらに輝きを増し、味わいも深くなるというもの。
激動するジャパニーズウイスキーを見続けてきた堀上さんは、その魅力をこう語ります。
「ひとつの蒸留所が造るラインナップの多様性や面白さが圧倒的。スコットランドの各蒸留所は原酒を販売し、ブレンデッドウイスキーの原料を造る役割も担っているので、自身のテイストを守っています。それに対し、日本はひとつの蒸留所が多様なタイプを造っているのが面白い」
ほかの蒸留所と原酒を交換してブレンドする“原酒交換コラボ”のボトルが登場してきたのも新しい動き。
「蒸留所が増加する中、自社内だけでなく他社の蒸留所とヴァッティングすることで、さらに日本のウイスキーに多様性が出るでしょう。未来がますます楽しみです」
Shot Bar ゾートロープ
TEL.03-3363-0162
住所/東京都新宿区西新宿7-10-14 ガイアビル4 3F
営業時間/17:00~23:45
定休日/日・祝
〈新宿〉BAR 新宿 ウイスキーサロン
「造り手にエールを送るアンテナショップ的バーです」
オーナーバーテンダーの静谷和典さんは、日本に10人しかいないウイスキーの国内最難関資格試験「マスター・オブ・ウイスキー」取得のスペシャリスト。
2014年にスコッチウイスキーメインの新宿「BAR LIVET」を、2019 年にジャパニーズウイスキーとカクテル中心の「BAR 新宿ウイスキーサロン」をオープン。
「2016年頃から国内蒸留所の設立が続きました。しかも、僕と同世代の30代半ばの造り手が多く、とても親近感が湧いたんです。彼らが頑張るウイスキー造りを新宿から応援したい、願わくば蒸留所に足を運んでいただきたい、という想いから、ある種、アンテナショップ的役割を果たそうと思ったのです」。そう、静谷さんは語ります。
その想いを体現するべく、現在稼働中で熟成3年以上のボトルをリリースする国内全蒸留所のウイスキーを揃え、飲み比べの“フライトセット”を16種用意。初心者からウイスキーファン垂涎のセットまであります。
では、静谷さんが思うジャパニーズウイスキーの魅力とは?
「焼酎を寝かせていた樽で熟成させる『嘉之助蒸溜所』や、熟成庫のバリエーションを持つ『長濱蒸溜所』。鋳物のポットスチルを使う『三郎丸蒸留所』など、蒸留所ごとに個性的なキャラクターが確立されているところですね」
北から南。これだけ蒸留所が増えると、「出身地の銘柄を飲んでみよう」なんてトライも。あなたのゆかりの地のウイスキーにも出会えるはず。
BAR 新宿 ウイスキーサロン
TEL.03-3353-5888
住所/東京都新宿区新宿3-12-1 佐藤ビル3F
営業時間/18:00~翌1:30(LO)
定休日/無休
PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI WRITING/YUMIKO NUMA
※メトロミニッツ2021年12月号特集「日本のウイスキーツーリズム」より転載