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いつもの装いに心地よくアクセントをプラスしてくれるのが、おしゃれに差をつけるファッション小物たち。服好きやスニーカー好きの間で今、シューレース(=靴ひも)を変えるちょっとしたアレンジがトレンドになっています。今回は、SNSで注目の国産シューレースブランド「VINCENT SHOELASE」に、シューレースのアレンジ術や、人気のアイテムを聞いてきました。
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例えば、長く履き続けているお気に入りのスニーカー。深い愛着はあるものの、ときには新しい刺激やスパイスが欲しくなるなんてことも。「そんな気持ちが湧いてきたら、シューレース(靴ひも)で変化を付けてみては。シューレースを変えると、全体が明るい印象になったり、キリっと引き締まった表情になったり、シューズの違うよさが見えてくるんですよ」と、「VINCENT SHOELACE」の上野マリさんは話します。
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「VINCENT SHOELACE」は、京都府出身のNABEさん・上野マリさん夫婦が、2014年に立ち上げたシューレースブランド。国内生産にこだわり、コットンをはじめ天然素材を中心に使っています。そのため、自然な風合いがあり、年代物のビンテージシューズとも違和感なく調和。メイン写真に並ぶスニーカーに通されたシューレースは、すべてこのブランドのアイテムです。
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ブランド立ち上げのきっかけは、古いものが大好きという2人がアンティークショップで出合った1950年代のアメリカ製のシューレース。ひと目で気に入ったものの、短すぎて使えなかったそう。「でも諦めきれなくて。そこで、自分たちで作ってみようと決意したんです。とは言え、2人ともシューレースに関しては知らないことばかり。まずはビンテージのシューレースを集められるだけ集めて、切って断面を見たり、編み方や素材を研究したり。靴ひもを製造してくれる工場探しなど、リサーチを積み重ねました」
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最初に完成したのが「H.Cooper」。2人のお気に入りだった杢グレーのパーカーのひもを、シューレースにアレンジしてみたいと思い立ち、試行錯誤の末に完成。コットン100%で、触ると少しふっくらした印象。今ではブランドを代表するアイテムのひとつになりました。
「もともとある“いいもの”を再構築して、日本の高い技術でさらによいものに仕上げていきたい。化繊のシューレースをコットンで再現したり、ありそうだけど実はなかった、ヘリンボーン織りのものを作ったり。染色家さんによる染めシリーズや、リネンやシルクのシューレースも作りました。完成に約1年を費やしたアイテムもありますが、職人さんたちが興味を持って辛抱強くトライしてくれている。心強い存在ですね」
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「VINCENT SHOELACE」の靴ひもは、素材選びへのこだわりや丁寧な仕上げが魅力ですが、それぞれに込められたストーリーもファンに愛される理由かもしれません。好きな映画の主人公や敬愛する憧れの人がスニーカーを履いていたら、きっとこんな靴ひもを選んだはず。2人はそんなストーリーを頭の中に思い描きながら、シューレース作りに励んでいます。そのため、商品にはキーパーソンとなる人物の名前がネーミングされているのです。
「シューレースって、人間に例えると髪型みたいなものだと思います。ちょっとアレンジするだけで、心が不思議と弾んで、お出かけが待ち遠しくなってくるんですよ」
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PHOTO/SAORI KOJIMA WRITING/MIE NAKAMURA(JAM SESSION)
※メトロミニッツ2021年6月号特集「着ることで変わる、日本の服」より転載