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毎月案内人をお招きし、東京の思い入れのある場所を教えてもらうこの企画。今回は中華料理を軸にイベントやツアーなど幅広く活動する編集者サトタカさんが中華目線で、昔から地元の生活に根差してきた韓国文化が残る三河島の街をご案内。住所で言うと荒川区西日暮里あたり、繊維街として有名な日暮里駅からも歩けるエリアです。
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外食派も自作派も楽しめる!オールドコリアンタウンを中華目線でぶらり旅。
世の中がこんな状況になる前は、月に一度は中国に行って、現地の取材やローカルフードツアーを企画したり、日本国内も北から南まで飛び回っていたのですが、コロナ禍で生活が一変。自由にお出かけもできないならばと、運動不足の解消のためにも、「半径2キロの旅」と名付けて自宅周辺の散策を始めたんです。
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そんな中で魅了された街が、今回ご案内する「三河島」。私の自宅から約2キロ。繊維街で有名な日暮里駅や西日暮里駅からも近く、少し離れた駅からの散歩も楽しいエリアです。
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あまり知られていないかもしれませんが、三河島は戦前から続くオールドコリアンタウンで、暮らしに根づいた韓国文化が感じられる街です。散策してみると、中華料理的な目線からも新たな発見がたくさんあって、知れば知るほどおもしろいところなのです。
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例えば「丸萬商店」は昭和26年創業で今年70周年を迎える老舗韓国食材店。表通りからは一見わかりませんが、一歩足を踏み込めばまさに異空間。「三河島朝鮮マーケット」と呼ばれるエリアの突き当たりに軒を構えています。約30種類は揃っているキムチやオリジナル冷麺も人気ですが、中華料理的ポイントは、他の精肉店ではなかなかお目にかかれない皮付き豚バラ肉を塊で売っているということ。生はもちろん店内で茹でたものも売っていますので、東坡肉(トンポーロウ)や回鍋肉(ホイコーロウ)など、自宅で本格的な中華料理を作って楽しむことができるのです。
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また、三河島には「韓国式中華料理」が食べられるお店がいくつもあります。天津飯や広東麺など日本で独自に発展した「日式中華」があるように、韓国でも独自に発展した「韓国式中華」があります。「漢江(ハンガン)」は、中華料理歴35年というご主人が腕を振るう店。チュンジャンという甘味噌ベースの餡を混ぜて食べる「ジャジャン麺」、赤くて辛いスープの韓国式「チャンポン」、韓国式酢豚「タンスユク」などがセットメニューで味わえます。どれも日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、これもまた中華。ローカライズされた中華と食文化の多様性が感じられます。
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その他にも、食べて良し、買って良しのお店が多数。立ち食いそばで有名な「仲屋製麺所」は、併設されている直売所でワンタンの皮や餃子の皮が買えたり、注意深く探ってみると中華的発見があちらこちらに。自分で料理を作る人にも、外食が好きな人にも、新鮮な発見がある三河島界隈。ぜひ保冷バックを持って、お腹を空かせてお出かけください。
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今月の案内人/サトタカさん
茨城県出身。中国料理探訪家。各地の中華料理店や中国の現地情報などを紹介するWEBマガジン「80C(ハオチー、https://80c.jp/)」のディレクターを務めるほか、多方面で執筆を行い、中華料理の魅力を伝えている
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PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI TEXT/SHINO KAWASAKI
※メトロミニッツ2021年5月号「東京巡礼」より転載