北陸唯一のウイスキー蒸溜所で快進撃を続けるブレンダーを訪ねて_MEETS SAKEBITO Vol.04

更新日:2021/04/20

日本の酒が生まれる地を訪ねる連載「MEETS SAKEBITO」。今回の舞台は、富山・砺波市「三郎丸蒸留所」。北陸唯一のウイスキー蒸溜所が今、世界から注目を集めています。快進撃を牽引する若き5代目を訪ね、いざ春めく富山・砺波平野へ。

SAKEBITO Vol.04 富山・砺波市「三郎丸蒸留所」稲垣貴彦さん

1987年富山県出身。大阪大学卒業後、外資系IT 企業に就職。2015 年に帰郷、曾祖父が始めたウイスキー造りを引き継ぐ。「三郎丸蒸留所」ブレンダー兼マネージャー。「常に考えるのは、昨日よりよくするためなにをすべきか。だから今後も“完成”はあり得ません」

1862年創業の老舗酒蔵「若鶴酒造」がウイスキー造りを始めたのは1952年のこと。「曾祖父の代から半世紀以上続く価値あるものを、後世に引き継がなければ」。

5代目の稲垣さんはそんな想いを胸に、老築化した建物に手を入れ「三郎丸蒸留所」を再建、設備を次々と入れ替えて蒸溜所を生まれ変わらせました。

が、単なる改修に留まらないイノベーションこそ稲垣さんの真骨頂。それを後押ししたのが、地元・富山が誇るものづくりの伝統と豊かな自然です。

右上/敷地内のショップ「令和蔵」では人気銘柄の有料試飲も可能。写真はシングルモルト「三郎丸0 THE FOOL」500 円(15ml) 左上/もろみに重層的な味わいを持たせるため、木製発酵槽を導入 右下/熟成庫には、既に県産ミズナラ材の熟成樽が並ぶ 左下/多くのウイスキーファンが訪れる注目の蒸溜所

銅製が常識とされてきたポットスチル(蒸溜器)に、隣町・高岡市の伝統技術である鋳造を活用することを思い付き、専門家と実験・検証。

銅90%、錫8%の合金がウイスキーにより良い効果を与える事実を突き止め、世界初の鋳造製ポットスチルを誕生させました。

ウイスキーの熟成樽は、木工の街・南砺市の職人が県産ミズナラ材を用いて作る計画が進行中。

さらに「いつか、立山連峰に眠るピート(泥炭)を使った地元産モルトのウイスキーを造りたい」という野望も。正真正銘メイドイン富山のウイスキーが世界を驚かせる日も近いかも!

「三郎丸蒸留所」で生まれたウイスキー

サンシャインウイスキー プレミアム
2530円(700ml)

1953年から造る定番銘柄に、2016年稲垣さんが新たなブレンドを誕生させた。「三郎丸」らしいスモーキーさが際立つ、デイリーに楽しめる1本

若鶴酒造 三郎丸蒸留所

TEL.0763-37-8159(予約センター)  
富山県砺波市三郎丸208 
※入場無料・試飲付きの見学可能(要予約)

PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI TEXT/ RIE KARASAWA
※メトロミニッツ2021年5月号「MEETS SAKEBITO」の記事転載

※記事は2021年4月20日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります