日本の酒が生まれる地を訪ねる連載「MEETS SAKEBITO」。今回の舞台は、下町の“聖地”の直営ブルワリー、東京・両国の「両国麦酒研究所」。マニアもうなる骨太なビールを手掛ける、29 歳の気鋭ブルワーを訪ねました
SAKEBITO Vol.02 東京・両国「両国麦酒研究所」小林裕貴さん
クラフトビール好きに“聖地”を問えば、確実に名が挙がるビアバー「麦酒倶楽部ポパイ」。常時約70種が繋がれるタップ、温度・ガス圧・注ぎ方まで考えて提供されるビール・・・店内には、創業者・青木辰男さんが確立した独自のこだわりが詰まります。
そんな店の新たな挑戦が昨年スタート。徒歩10数分の場所に「両国麦酒研究所」を開き、生産者としても業界を刺激してきました。醸造担当は、農大で酵母を研究後、青木さんの下で経験を積んできた生え抜きのブルワー・小林裕貴さん。
そして酵母は、まさにこの場所を象徴するキーワード。他社の多くが市販の酵母を何度か再利用して仕込む中、ここでは自家培養の酵母を仕込みのたびに添加し使います。さらに水は装置を通してミネラルを除去した軟水にし、ビールのスタイルごとに適した硬度に調整。
そうして生まれる“ポパイによるポパイのためのビール”は、どれもクリアでしっかりとしたうまみの核が。青木さんから「職人肌」と評される一方、「自由度の高さこそビールの魅力」と小林さん。技術と創造性で、聖地に新風を吹き込みます。
「両国麦酒研究所」で生まれたビール
ケープコッドフォグNEIPA
920円(500ml)
美しいオレンジ色と霧がかったような濁りが印象的なNEIPA(ニューイングランドIPA)。フルーティーな香りが際立ち、ほどよい甘さと苦みが調和する
PHOTO/SAORI KOJIMA TEXT/ RIE KARASAWA
※メトロミニッツ2021年3月号「MEETS SAKEBITO」の記事転載