日本酒を炭酸割りやロックでアレンジ。真野さんの「おさけじかん」
日本酒好きがきっかけで発酵に興味を持った、という真野さんがおすすめしてくれたのは、夏にぴったりな3種類の日本酒。フルーティーな酸味がある「仙禽(せんきん) かぶとむし」、ロックで飲むためにつくられた「玉川 純米吟醸 Ice Breaker」、瓶内発酵させたシュワシュワ感とヨーグルトのような酸味が特徴の「花巴(はなともえ)スプラッシュ」。日本酒というとそのまま飲むというイメージがあるけれど、いろんなアレンジが楽しめるのだとか。
「すっきりとした味わいの『仙禽かぶとむし』は毎夏わたしが楽しみにしているお酒の一つで、冷やしてワイングラスで飲むのがおすすめです。野菜やフルーツとよく合いますよ。『Ice Breaker』はぜひロックで、レモンを絞ってキリリとした味わいを楽しんでください。『花巴』のような濁り酒は炭酸水で割ってハイボール風にすると、夏にぴったりの爽快感。ちょっとクセがあると感じるお酒も、炭酸割りや氷で飲みやすくなるので、試してみてくださいね」
発酵の力で時短&おいしさアップ。食卓がもっと豊かに!
発酵の魅力は?と尋ねると「いろんなメリットがあるんです」と笑顔で答える真野さん。
「わたしは日本酒に欠かせない米麹をよく使うのですが、麹菌に含まれる酵素にはタンパク質をうま味成分のアミノ酸に、でんぷんを甘味のもととなるブドウ糖へと分解する働きがあります。簡単に言うと、いろんな食材の味わいを引き出してくれるので、難しい手間をかけなくてもお料理がおいしくなるんです。時短にもなるし、体にもやさしい、といいことづくめです」
米麹をアルコール発酵させた日本酒と発酵食品の相性はバツグン。ペアリングは味の強さや香りを合わせる方法も一般的だけれど、真野さんはちょっと意外に思える組み合わせもおすすめだそう。
「例えば、こってりとしたお料理にキリッと辛口のお酒を合わせたり、甘いものに酸味や苦味のあるお酒を合わせると、中和してくれる効果があります。これじゃなきゃだめというルールはないので、色々なペアリングを楽しんでもらえたら」
おうちバルを彩る発酵料理レシピ5品(すべて2人分)
玉ねぎ塩麹でガスパチョ
<材料>
トマト 1個
きゅうり 1/2本
パプリカ(黄) 1/2個
にんにく 1/2かけ
バゲット 3cm分
【A】
玉ねぎ塩麹 大さじ1と1/2
米酢 大さじ1
パプリカパウダー 小さじ1/4
オリーブオイル 大さじ1
<作り方>
1.トマトはざく切りに、パプリカはヘタと種とワタを取り除いてざく切りにする。きゅうりは皮をむいて1cm幅に切る(それぞれ、トッピング用に5mm角に切ったものを少し残しておく)。にんにくは皮を剥き、芽を取り除いて包丁の腹で潰す。
2.1の食材とAをミキサーに入れ、なめらかになるまで撹拌する。バゲットをちぎって加え、柔らかくなるまで5~10分ほど置く。
3.再びなめらかになるまで撹拌し、保存容器に移して冷蔵庫で冷やす。
4.器に盛り、トッピング用の野菜を散らし、オリーブオイル(分量外)を垂らす。
【玉ねぎ塩麹】(作りやすい分量)
玉ねぎ 正味300g(大1.5個程度)
米麹(乾燥) 100g
※生麹の場合は110g~120g程度に増やす(水分量を見て調整)
塩 40g
<作り方>
1.玉ねぎはブレンダーかフードプロセッサーにかけてなめらかになるまで撹拌する。(無い場合はおろし器ですりおろす)
2.ボウルに米麹と塩を入れて混ぜ合わせ、1を加えてよく混ぜる。
3.保存容器に移し入れ、少しゆるめて蓋をして、常温で熟成させる。1日1回かき混ぜ、夏場は5日程度、冬場は1週間~10日程度置いておく。炒め玉ねぎのような甘い香りがし、麹の粒が指で簡単にすりつぶせるくらい柔らかくなっていたら完成。
ワンポイントアドバイス
トマトのみずみずしい酸味が仙禽かぶとむしのように爽やかな酸味のお酒とよく合います。朝ごはんにいただくのもおすすめ。また、調味料に使った玉ねぎ麹は、混ぜて置いておくだけでできる万能調味料。保存が効き、ソースやドレッシングの代わりにもなります。
くるみとオレンジの甘酒キャロットラペ
<材料>
にんじん 1本
塩 小さじ1/4
甘酒 大さじ1
オレンジ 1/2個
白ワインビネガー 小さじ2
くるみ 5個
オリーブオイル 大さじ1
イタリアンパセリ 適宜
<作り方>
1.にんじんは皮をむいて千切りにしてボウルに入れ、塩をふりかけてよく揉み込んでおく。
2.オレンジは皮をむいて果肉を取り出す。
3.1に甘酒、2のオレンジ、白ワインビネガーを加えてさっと混ぜる。くるみを手で砕いて加え、オリーブオイルを加えて混ぜたら冷蔵庫で30分以上冷やす。
4.器に盛り、お好みでイタリアンパセリなどのハーブを添える。
ワンポイントアドバイス
こちらも仙禽かぶとむしとのペアリングがおすすめ。甘酒のやさしい甘さが調味料の役割を果たしてくれています。冷蔵庫で5~7日間は保存できるので、常備菜にもぴったり。オレンジの代わりにグレープフルーツを使ったり、レーズンやクミンを加えたりとアレンジを楽しんでも。
マッシュルームの酒盗入りタパス
<材料>
ブラウンマッシュルーム 10個
にんにく 1かけ
パセリ(みじん切り) 大さじ2
酒盗 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1.5
<作り方>
1.マッシュルームは軸を手でポキっと外す。軸とにんにくはみじん切りにする。
2.マッシュルームの軸、にんにく、パセリ、酒盗を混ぜ、マッシュルームに詰める。
3.耐熱容器に乗せ、全体にオリーブオイルをかけ、オーブントースターで8~10分ほど焼く。
ワンポイントアドバイス
きのこと酒盗の旨みが絶妙にマッチした、イチオシのおつまみです。酒盗の代わりにアンチョビや塩辛を使ってもOK。純米酒などザ・日本酒!といった味わいのお酒とよく合います。
鯖とマーマレードのリエット 即席ザワークラウト添え
<材料>
【鯖とマーマレードのリエット】
鯖水煮缶(水気を切った状態) 100g
クリームチーズ 50g
マーマレード 大さじ1
【即席ザワークラウト】
紫キャベツ 100g
塩麹 大さじ1
米酢 小さじ2
粒マスタード 大さじ1/2
バゲット 6切れ
ディル 適宜
<作り方>
1.クリームチーズは常温に戻しておく。
2.紫キャベツは千切りにし、ボウルに入れて塩麹を加えて手でしっかり揉む。しんなりしたら米酢と粒マスタードを加えて混ぜてビニール袋に入れ、しっかりと空気を抜いて封をし、冷蔵庫で30分以上冷やす。
3.1のクリームチーズをゴムベラでなめらかになるまで練り、鯖缶とマーマレードを加えてほぐしながら練る。
4.バゲットをこんがりと焼き、2と3を盛り、ディルを散らす。彩りでマーマレード(分量外)を飾る。
ワンポイントアドバイス
リエットもザワークラウトも混ぜるだけのお手軽おつまみ。マーマレードの甘さとサバの独特の旨みをクリームチーズがまろやかに中和しています。ザワークラウトは常備菜にもおすすめですよ。今回紹介したどのお酒にもよく合います。
豆腐と白みそのティラミス
<材料>
絹ごし豆腐 1/2丁
白みそ(西京味噌など甘口のタイプ) 大さじ1.5
クリームチーズ 50g
レモン汁 大さじ1
はちみつ 小さじ2
鈴カステラ 12個
インスタントコーヒー 大さじ1
お湯 大さじ4
ココアパウダー 適量
ミント 適宜
<作り方>
1.豆腐は重石を乗せて1時間以上置き、しっかり水切りする。クリームチーズと白みそは常温に戻す。インスタントコーヒーをお湯で溶き、濃いめのコーヒーを作る。
2.1の豆腐、クリームチーズ、白みそをボウルに入れる。はちみつとレモン汁を加えてブレンダーにかけ、なめらかになるまで攪拌する。
3.鈴カステラは手でこまかくちぎってボウルに入れ、コーヒーを2~3回に分けて注ぎ、その都度さっくり混ぜる。
4.ココットなどの容器に3の半量を敷きつめ、2の半量を重ねる。さらに残りの3、2を重ねて平らにならし、ラップをかけて冷蔵庫で1時間以上冷やす。
5.ココアパウダーを茶こしに入れて4に振りかけ、お好みでミントを添える。
ワンポイントアドバイス
おすすめは花巴とのペアリング。デザートですが、甘さ控えめでお酒に合う味わいに仕上げています。鈴カステラを混ぜる工程は、混ぜすぎると粘りが出てしまうためさっくりと。ぜひ、素材の良いお豆腐とお味噌でつくることをおすすめします。
教えてくれたのはこの人:発酵料理家・真野遥(まのはるか)さん
日本酒に合う料理の提案を中心に、レシピ開発や執筆、日本酒と発酵食料理のペアリングが学べる料理教室を主宰。全国の酒蔵、味噌蔵、醤油蔵などの醸造所を訪ねてまわり、各地でつくられる日本酒の魅力や発酵料理の楽しさを伝えるべく幅広く活動中。現在は東京と京都の2カ所に拠点を置き、京野菜作りにもチャレンジ中。著書に『手軽においしく 発酵食のレシピ』(成美堂出版)がある。
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飲んだら幸せ!おさけじかん
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PHOTO/KAZUHITO MIURA WRITING/MINORI KASAI