東京・銀座の歌舞伎座では5月2日(月)~27日(金)まで「團菊祭五月大歌舞伎」を上演予定。今回は第二部の『土蜘(つちぐも)』に尾上菊五郎さん、尾上菊之助さん、尾上丑之助さんの音羽屋三代、中村時蔵さん、中村梅枝さん、小川大晴さんの萬屋三代が競演するとあって大注目! 上演に先立って行われた合同取材会にオズモール編集部もお邪魔し、舞台にかける思いなどを伺ってきました。
「團菊祭」が3年ぶりに開催。尾上菊五郎・菊之助・丑之助、中村時蔵・梅枝・小川大晴の親子3代2組が競演
「團菊祭(だんきくさい)」とは、明治時代に絶大な人気を誇った九代目・市川團十郎と五代目・尾上菊五郎の功績を称えて行われる、五月大歌舞伎の恒例興行のこと。昭和11(1936)年4、5月に始まって以来、現在まで受け継がれていて、今回は2019年以来、3年ぶりの上演。
第二部では五代目・菊五郎が創作した「新古演劇十種」のうちのひとつ『土蜘(つちぐも)』が上演される。
【あらすじ】
重い病で床に伏せる源頼光のもとへ、家臣・平井保昌が見舞いに訪れ、回復を喜ぶ。薬を届けに訪れた侍女・胡蝶も紅葉の名所の様子を語り、頼光の心を癒した。しかしその夜更け、胸苦しさを覚えた頼光のもとに、智籌(ちちゅう)と名のる叡山の僧が姿を現し、病平癒の祈祷を申し出るが、智籌の正体は頼光の命を狙うツチグモだった・・・。
今回は源頼光を菊五郎さん、智籌に姿を変えたツチグモの精を菊之助さん、智籌の正体にいち早く気づく太刀持音若を丑之助さんの音羽屋三代が演じる。
さらに、時蔵さんの侍女胡蝶、梅枝さんの巫女榊、大晴さんの小姓治郎吉の萬屋三代も揃い、ひと際華やかな演目に。
ひとつの演目に、親子3代が2組出演するのは歴史上はじめて⁉
冒頭のあいさつで、「3年ぶりに團菊祭を上演するにあたり、ぜひ親子三世代で土蜘を上演したいと発案した際に、萬家にも役者が三世代そろっていることに気づき、「一緒に舞台をやらないか」と時蔵さんに声をかけたと語った菊五郎さん。
「ひとつの演目で3世代が2組出演するのは初めてじゃないかな」と菊五郎さんが言うと、「私にとっても思い入れの深い作品で、喜んでやらせてもらいたいとお返事しました。ひとつの演目を息子や孫と一緒に作り上げることができるのは、本当に嬉しいです」と時蔵さん。
菊之助さんは、自身が幼い頃に音若を演じたときのことを振り返り「長袴を履くのも初めてでしたし、大人用の太刀が重くて大変だったことを覚えています。父が演じる智籌の迫力に圧倒されたことも思い出深く、いつか自分も演じてみたいと思っていたので、ようやく夢がかないました」と笑顔を見せた。
胡蝶の華やかな舞や智籌の大胆な舞踊、音楽など見どころ満載
それぞれに今回の役の見せ場を訪ねると、「ずっと場面が変わらない中で、どんな風に舞台が変わっていくかを見てほしい」と菊五郎さん。
時蔵さんは「この作品はお能が原作です。動きにくい衣装を着て踊るのですが、能のように優雅に舞いたいです」と語った。
丑之助さんは「頼光を守るときにバーン!と走るところがかっこいいです。長袴でかっこよく走るのが楽しみです」とコメント。
「智籌は源家に恨みを持っていて、復讐のために現れるんですが、前半のツチグモの怪しさと、後半の豪快さの対比を見ていただきたいです。それから、全体的に曲もとても心地がいいんですね。ストーリーがわからない方にも曲や場の雰囲気を感じていただけると思います。ぜひ肩の力を抜いてみていただけたら嬉しいです」と菊之助さん。
梅枝さんは「私が演じる巫女榊は、物語のなかでも“休憩”といいますか、重厚な空気感を軽くするような役割です。くすっと笑っていただけるような場面を作りたいですね」とコメント。
「なんでツチグモは頼光を恨んでいるの?」と尋ねた丑之助さんに、「頼光の家来たちがツチグモたちを攻撃していたから恨んでいたんだよ。みんなで仲良くできたらよかったよね」と菊之助さんが優しく答えたり、うまく答えられず困ってしまった大晴さんを梅枝さんがフォローしたりと、普段はなかなか見ることができない親子の様子を垣間見ることができた。
かわいい丑之助さんと大晴さんの演技にも注目
今回の作品では、現在8歳の丑之助さん、7歳の大晴さんの演技にも注目したいところ。ふたりとも日々、精力的に稽古に励んでいるという。会見中はシャイな様子を見せていた大晴さんだけれど、丑之助さん曰く「大晴くんはかわいくて、元気いっぱい。親友のように仲良しです!」。楽屋では時蔵さんお手製の歌舞伎の小道具を使って、お芝居ごっこを楽しんでいるそう。
菊之助さんは自身が出演していたNHK連続テレビドラマ小説「カムカムエヴリバディ」と重ね、「ドラマも親子3世代、100年の物語でしたが、歌舞伎にも私の祖父の代からのファンのお客様、これまでの100年を見てくださっているお客様がたくさんいらっしゃいます。ぜひ、これからの100年も楽しみにしていただけるように、私も父から受け継ぎ、息子にも受け継いでもらえるようにやっていけたら」とコメント。
最後に菊之助さんは、こんな言葉で締めくくった。
「歌舞伎の伝統的な演目には、人を大切にしなければいけないというメッセージが込められた作品がたくさん残っています。この『土蜘』を演じながらも、どちらが正しいとか、悪を作って自分が優位に立つのはいけないことではないのか、ということを感じされられています。歌舞伎をご覧になったことがない方にも、難しく考えず、昔の日本人の心に触れていただけるような、エンターテイメントをお届けできたら」
初心者でも、ツウでも!たのしい、OZの歌舞伎案内
“歌舞伎=難しそう”って思っていない? 義理人情、恋愛模様に笑いや涙が詰まったドラマチックな物語や、華やかで大胆な衣装や舞台、演出、そしてなんといっても、伝統芸能を受け継ぐ役者たちの圧巻の演技! 一度観たらハマること間違いなし。そんな歌舞伎の演目や、公演情報、劇場についてご紹介します。
團菊祭五月大歌舞伎
- スポット名
- 歌舞伎座
- 出演者
- 第一部
一、祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)
金閣寺
松永大膳 松緑
此下東吉後に真柴久吉 愛之助
十河軍平実は佐藤正清 坂東亀蔵
松永鬼藤太 左近
狩野之介直信 吉弥
慶寿院尼 福助
雪姫 雀右衛門
二、あやめ浴衣(あやめゆかた)
芸者 魁春
若い女 新悟
同 玉太郎
若い男 鷹之資
同 歌之助
- 第二部
一、歌舞伎十八番の内 暫(しばらく)
鎌倉権五郎 海老蔵
鹿島入道震斎 又五郎
那須九郎妹照葉 孝太郎
成田五郎 男女蔵
桂の前 児太郎
加茂三郎 廣松
大江正広 男寅
小金丸行綱 千之助
荏原八郎 吉之丞
足柄左衛門 九團次
埴生五郎 市蔵
局常盤木 齊入
家老宝木蔵人 家橘
東金太郎 右團次
茶後見 友右衛門
加茂次郎 錦之助
清原武衡 左團次
河竹黙阿弥 作
二、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)
叡山の僧智籌実は土蜘の精 菊之助
侍女胡蝶 時蔵
巫子榊 梅枝
渡辺綱 歌昇
坂田公時 種之助
碓井貞光 男寅
太刀持音若 丑之助
石神実は小姓四郎吾 小川大晴
番卒藤内 萬太郎
番卒次郎 錦之助
番卒太郎 権十郎
平井保昌 又五郎
源頼光 菊五郎
- 第三部
一、市原野のだんまり(いちはらののだんまり)
平井保昌 梅玉
鬼童丸 莟玉
袴垂保輔 隼人
河竹黙阿弥 作
二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
浜松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場
弁天小僧菊之助 尾上右近
南郷力丸 巳之助
忠信利平 隼人
赤星十三郎 米吉
鳶頭清次 橋之助
浜松屋倅宗之助 中村福之助
丁稚長松 亀三郎
番頭与九郎 橘太郎
日本駄右衛門 彦三郎
浜松屋幸兵衛 東蔵
- 公演日程
- 2022年5月2日(月)~27日(金)
第一部 午前11時~
第二部 午後2時30分~
第三部 午後6時15分~
※開場は開演の40分前を予定
【休演】10日(火)、19日(木)
- 通常料金
- 1等席16000円、2等席12000円、3階A席5500円、3階B席3500円、1階桟敷席17000円
- 写真:『土蜘』叡山の僧智籌実は土蜘の精=尾上菊之助(C)松竹
- ホームページ
- 「團菊祭五月大歌舞伎」
WRITING/MINORI KASAI
衣装クレジット
尾上菊之助丈:ライトベージュスーツ132000円、ネクタイ11000円、白シャツ13200円 以上3点/GOTAIRIKU オンワード樫山(Tel03-5476-5811)、シューズ、チーフ/スタイリスト私物
尾上丑之助丈:白シャツ31000円、中に着たカーディガン31000円 以上2点/Bonpoint(info@bonpoint.jp)
ジャケット、パンツ、蝶ネクタイ、シューズ/スタイリスト私物
スタイリスト 中井綾子(crêpe)