初心者で予備知識がなくても十分に楽しめるのが落語の魅力だけど、よく聞くようになると注目すべきポイントが分かってくる。仕草、目線、声の強弱、顔の向きなど演じ分けについて少しでも知っていたら、よりおもしろさを実感できて噺の世界に入り込めるはず。見方・聞き方のポイントをおさえて、もっともっと落語を楽しんじゃおう!
寄席育ちの実力者・古今亭菊之丞さん
1人で何役も!登場人物の演じ分けを味わおう
声色や仕草を交えて、老若男女すべての登場人物を演じ分ける落語家は、どんなシーンでも動くことなく、背景も使わずに演じている。登場人物が大勢出てきても、演者は1人だけ。聴き手は想像力を駆使し頭の中に絵を描き出すことにより、極上の笑いが生まれます。この演じ分け、声を変えているのかと思いきや、実は声や口調の変化は極力避けながら演じ分けているそう。
首を左右に動かして「上下を切る」のが約束事
注目すべきは、噺家の顔の向き。顔を左右に向けて話すことで登場人物を演じ分けている。これを「上下(かみしも)を切る」と言います。右を見てしゃべる人物と、左を見てしゃべる人物は別の人物。客席から見て噺家が右を向いてしゃべるのを「上手に切る」と言い、身分・立場が低い人や子供など年下の人を演じているとき。逆に客席から見て左を向いてしゃべるときは「下手に切る」と言い、殿様や旦那など身分や立場が上の人を演じている。噺家がどちら側を向いているか、気を付けて見てみよう。
演じ分けには細かなしぐさや表情も重要!
扇子と手ぬぐいを使い、せりふ、仕草、表情、視線が一体となって噺を盛り上げ、どんな場面でも描き出せるのが落語家です。おいしそうに蕎麦を食べたり、うどんをフーフーと息で冷ましたり、ズズーッとすすったり・・・。さらにお酒を飲んだり、着物を着たり脱いだり、くしゃみをしたり、暑さ寒さまで。また、目線で距離感も表現している。遠い人に呼び掛けるときは、目線をやや上にして大きな声を出す。仕草があまりにも自然だから想像力が刺激され、まるで目の前でその出来事が起こっているような感覚にさせてくれる。これらのポイントを頭に置きながら聞いてみると、もっと落語の世界が広がるかも。
WRITING/MACHIKO MIYATA
【特集】気軽でたのしい!ハマル落語
若者の間で、空前の落語ブーム到来!と騒がれている近年。それならどんなものか聞いてみたいけど、なんとなく敷居が高そう・・・と思っている人も多いのでは? でも大丈夫、予備知識は不要です。頭を空っぽにしてぼーっと噺に耳を傾けていると、いつの間にかクスっと笑えたり、お腹がよじれるほど大笑いしたり、身を乗り出して夢中になっている自分に気付くはず。今まで経験したことのない新たな世界に、即ハマること間違いなし!