父の三十三回忌追善公演にかける想い!「二月大歌舞伎」出演の尾上松緑インタビュー

尾上松緑インタビュー

更新日:2019/02/08

2月2日(土)から26日(火)まで歌舞伎座にて上演される「二月大歌舞伎」では、四代目尾上菊之助(現・七代目尾上菊五郎)、六代目市川新之助(のちの十二代目市川團十郎)とともに「三之助」と呼ばれ絶大な人気を集めながら、昭和62年に40歳という若さで他界した初世尾上辰之助の三十三回忌追善として縁の深い演目が演じられる。そんな初世尾上辰之助を父に持ち、昼の部では『義経千本桜 すし屋』で“いがみの権太”を、夜の部では『名月八幡祭』で“縮屋新助”を演じる尾上松緑さんに「二月大歌舞伎」への想いを聞いてきました。

父 辰之助の盟友でもある仁左衛門・玉三郎と舞台を踏む二月大歌舞伎

尾上松緑インタビュー

――初世尾上辰之助追善公演を迎えるにあたって
父が他界して33年の月日が経ちました。歌舞伎座にお越しになるお客様の中には、父のことを存じ上げないお客様もいるかもしれない。また、父を観たことがない息子、尾上左近(夜の部出演)や後輩たちにも、初世尾上辰之助という役者がこんな役を演じていたんだということが感じられるよう勤めたいとおもいます。

――追善狂言の3演目についてはどのように決まったのか
『暗闇の丑松』は尾上菊五郎の兄さんが過去に父と演じていた作品です。私が出演する演目は、片岡仁左衛門の兄さん、坂東玉三郎の兄さんと父がかつて3人で演じた『名月八幡祭』が先に決まりました。今回ご一緒してくださる片岡仁左衛門の兄さん、坂東玉三郎の兄さんと父がかつて3人で演じたものです。今回の追善にあたり、玉三郎の兄さんが“芸者美代吉”を演じると言ってくださいました。そういうことなら自分も“船頭三次”ででるよと仁左衛門の兄さんからも心強いお言葉をいただき、『名月八幡祭』が演目として決まりました。『すし屋』はどちらかというと祖父(二代目尾上松緑)のイメージが強い作品です。私もいままで演じたことが無く、これを機会に菊五郎の兄さんに教えていただき、音羽屋型の“権太”を勉強したいと思い今回選びました。

夜公演は親子で出演!息子 尾上左近へ繋いでいく想い

――息子(尾上左近)の『當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)』の出演について
現在中学2年生の息子は背も伸び、声変わりの時期でもあります。本人もそれを気にして、彼の祖父である初世辰之助の追善には出られないかもと話していました。そんな折に、中村梅玉の兄さんが「『春駒』をやるので左近もでないか」と言ってくださいました。僕が事情を話し、「ご迷惑になりませんか?」とお尋ねすると「(辰之助の追善なんだから)出してやらなきゃダメだよ」と逆にたしなめられました。梅玉の兄さんにはとても感謝しています。僕が父を亡くしたのが中学1年で、父が演じるはずだった『外郎売(ういろううり)』に出演させていただいたのが、今の息子とほぼ同い年ですから巡り合わせなのかなと思います。

実はシャイ!?な不良少年“権助”は一番共感できる役柄

尾上松緑インタビュー
左)『義経千本桜 すし屋』いがみの権太:尾上松緑
右)『名月八幡祭』縮屋新助:尾上松緑

――『名月八幡祭』“縮屋新助”を演じていた父 辰之助の印象
父の役の中でもインパクトが強い役です。どちらかというと父は、後半に怒りを爆発させるような役を得意とする陰のある役者でした。ただ『名月八幡祭』の“新助”の最後は半狂乱といってもいい。朴訥とした田舎の商人が騙されて、最後に逆上していく凄みが、子ども心にとても印象に残っています。まさか父の盟友であった玉三郎の兄さん、仁左衛門の兄さんと一緒に演じることができるとは思ってもいなかったですが、2人にリードしていただき、役を作っていきたいです。

――『すし屋』“権太”の役柄について
権太、平知盛、狐忠信の『義経千本桜』の主要な3役の中では、もっとも素の自分に近い役だと思います。権太は悪ぶっているけれどもシャイなところがあって、不良少年なりに何とか親不幸を償おうとする心根というのは、僕の心情にとても近いものがあります。プライベートの気持ちと舞台の上は違いますが、(素の自分の持つ気持ちが)舞台の上でも出ればいいと思います。

<尾上松緑プロフィールプロフィール>

昭和50年2月5日生まれ。初代尾上辰之助(三代目松緑)の長男として生まれる。55年1月国立劇場『山姥』の怪童丸で初お目見得。平成3年に5月歌舞伎座『対面』の五郎ほかで二代目尾上辰之助を襲名。平成14年5・6月歌舞伎座『勧進帳』の弁慶、『蘭平物狂(らんぺいものぐるい)』の蘭平ほかで四代目尾上松緑を襲名。荒事や世話物の豪快で男性的な役柄を得意としている。

■公演情報

歌舞伎座『二月大歌舞伎』

歌舞伎座『二月大歌舞伎』
日程/2019/2/2(土)~2019/2/26(火) 昼の部 11:00開演~ 夜の部 16:30開演~
場所/歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)
料金/1等席18000円、2等席14000円、3階A席6000円、3階B席4000円、1階桟敷席20000円
アクセス/東京メトロ日比谷線・都営浅草線「東銀座駅」3番出口より直通
東京メトロ銀座線・丸ノ内線・日比谷線「銀座駅」A7番出口より徒歩5分。
【昼の部】
『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋』
『暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)』
『団子売(だんごうり)』
【夜の部】
『熊谷陣屋(くまがいじんや)』
『當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)』
『名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)』

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※記事は2019年2月8日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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