親の介護で働けなくなる!?知っておきたい介護のリスク
まだ先のことと考えがちな「親の介護」問題。いつまでも親には健康で元気でいてほしいものだけれど、いつか来るその時に備えて、かかる費用や、やるべき準備について、知っておいて損はないはず。オズモール読者のアンケートからは、リアルな介護事情が見えてきます。
更新日:2020/03/26
知っておきたい“介護”のハナシ
介護を必要とする人が右肩上がりに増加中
厚生労働省が調べたデータによると、要介護・要支援と認定されている人は、右肩上がりに増加しています。2000年の介護保険スタート時には256万人でしたが、2014年には606万人と、14年間で236%という驚きの増加率に。
これは、介護保険制度が広まって、より多くの人に利用されるようになったことが要因のひとつとしてありますが、ほかにも、高齢化が進むなかで介護を必要とする人が増えていることも大きな要因となっています。
すでに、団塊の世代(1947年~1949年生まれ)の人々が70代になっていますから、今後はますます介護を必要とする人が増加していくでしょう。
介護の約6割が同居の親族によって担われている
要介護者がますます増えていくと予想されるなか、気になるのは、誰が介護を担っているの?というところではないでしょうか。
厚生労働省のデータによると、平成28年の段階で介護を担っていたのは、「同居」の親族が約6割。その内訳を多いものから見ていくと、配偶者が25.2%、子が21.8%、子の配偶者が9.7%という結果に。
介護保険が普及して、民間の介護事業者によるサービスの利用は増えているものの、まだまだ実態としては、同居の家族による介護が主流であることがわかります。
また、別居の家族による介護も12.2%とあり、親と別居しつつも遠距離介護でしのいでいる人の姿も見受けられます。
働き方が変わったと回答した人は4割以上!
オズモール読者のうち介護経験者に、「介護を始めたことで働き方に変化があったか」を聞いたところ、57%は変化なしと回答しているものの、それ以外の4割以上の人は働き方になんらかの変化があったと回答しています。
そのうちもっとも多かったのが「時短勤務など、労働形態を変更した」で全体の14.5%。また、8.7%の人が「退職をした」と回答しています。
また、「自由業だったが全面的に休業」「まだ就職していなかったのでそのまま家で介護するようになった」など時間の自由がきくからこそ介護要員となったと思われる回答や、「介護休暇取得」「残業ができなくなった。年休をよく取得するようになった」のように、働き方は大きく変えないまでも、休業を取得したり残業を減らしたりと収入減につながっている回答も目につきました。
介護に関する不安の1位は「費用について」
アンケートに答えたオズモール読者のうち82.8%を占める介護未経験の人に、将来の介護に関する不安を聞いてみたところ、「介護にかかる費用」が不安の1位となりました。
公的介護保険制度のおかげで、原則自己負担1割で介護サービスを利用できるとは言うものの、介護保険だけではカバーできない費用がたくさんあるのが実情です。
そこで、介護費負担を減らすために家族間で介護を行おうと思うと、第2位の「介護にかかる時間」への不安や、5位の「仕事が続けられるか」といった不安にもつながってきます。
実際、時短勤務や退職など働き方を見直すことになると、介護にかかる支出は減らせるかもしれませんが、自分の収入源を招くことになります。いずれにしても、介護にかかる費用は大きな不安要因となることがわかります。
親の介護とお金について
公的介護保険制度があるから介護に費用はかからない?
公的介護保険制度は、「社会全体で介護を支え合う」というコンセンプトのもと2000年に発足しました。40歳になると誰もが公的介護保険に加入することになっていて、会社員等は給与から介護保険料が差し引かれます。
ところが、どんな原因でも要介護・要支援と認定されれば介護保険を利用できるのは65歳になってから。40歳以上65歳未満の間は、加齢による特定疾病が原因で要介護・要支援認定を受けた時にだけ介護保険が利用できます。
介護が必要な度合いは7段階(要支援1-2、要介護1-5)で判定され、介護の必要度が高い人ほどより高額な限度額が設定されます。限度額の範囲内での利用であれば、介護サービス費の9割が介護保険の負担となり、自己負担額は1割になります。ただし、制度のスタート当初は全員が自己負担1割でしたが、近年は所得によって2割負担、3割負担となることも。
公的保険でカバーできないもの
公的介護保険制度はありますが、自己負担になる費用もいろいろあります。まずは公的介護保険の自己負担額。自己負担1‐3割といっても、毎月積み重なればけっこうな負担となります。さらに、公的介護保険の枠を超えて利用した介護サービス費は全額自己負担に。
掃除や洗濯、買い物、薬の受け取りなどの「生活援助」、食事の介助や入浴介助などの「身体介護」はいずれも介護保険が利用できますが、同居の家族がいる場合には、生活援助が適用対象外となることも。
また、親もとに通いながら遠距離介護をする場合、新幹線代や飛行機代などの交通費の負担もばかになりません。
介護費用の自己負担額は平均で約500万円に
生命保険文化センターが平成30年に行った調査によると、介護にかかった自己負担額の平均は月額7.8万円、介護にかかった平均期間は54.5カ月という結果に。両者を掛け合わせると、介護にかかる費用は425万円と計算できます。
さらに、同調査によると、介護にかかった一時的費用の平均額は69万円とあり、こちらも足し合わせると、介護の平均額は494万円ということに。介護の自己負担額は500万円というのがひとつの目安となるでしょう。
親が民間の介護保険などであらかじめ備えていてくれると介護する側としても経済的な心配が緩和されます。親に潤沢な財産がある場合には、民間の介護保険で備えなくてもいいでしょうが、親が認知症になった後に子どもが親の預貯金を引き出すのは簡単ではありません。日頃からまめにコミュニケーションをとり、早め早めの準備を心がけましょう。
まとめ
介護は他人ごとではありません。ある日突然やってくるその日に備えて、今から親と話し合い、心づもりをしておきましょう。公的介護保険だけではカバーできない費用もたくさんあります。介護のために自分が働き方を変えることは、介護費用の負担を減らせはするものの、大きなリスクとなります。選択肢のひとつとして、民間の介護保険でいまから備えることも検討してみましょう。
PR/東京海上日動
WRITING/YOSHIMI UJIIE