生きていたら実現できなかった!?相田みつを美術館館長に聞く、相田みつをの素顔

更新日：2021/10/05

力強く、温かみがある独特の書体と、だれにでもわかりやすい言葉で、見る人の心に寄り添い、「明日もがんばろう」という力を与えてくれる相田みつをさんの作品。
そんな相田さんの長男であり、有楽町にある「相田みつを美術館」の館長でもある相田一人（かずひと）さんに、作品の魅力やお父さんとのエピソードなどを伺いました。

一文字ずつ、魂を込めて書かれた相田みつを作品

「父はとにかく仕事が第一。仕事場にこもっているときは怖くて声をかけられませんでしたねぇ」と幼少期を振り返る相田一人さん。
「父が書く字は個性的なので、さらっと書いているように見えるかもしれませんが、ひとつの作品を仕上げるまでに相当の時間をかけています。先に言葉（詩）を考えるのですが、父によると完成までに10年かかった詩もあるそうです。詩が完成したら、今度はそれを何度も何度も、アトリエが紙で埋もれるほど書き、これはと思う1枚だけ残す。少し時間を置いてもう一度見て、納得したら落款を押して額装し、納得できなければまた書く。この繰り返しでした」

書に対してとてもストイックで、既に売れた作品を買い戻したこともあるのだとか。失敗作をお風呂の薪の代わりに燃やすのは一人さんの役目だったそう。
「父の口癖は『これはよく書けた、納得のいく書というものは1点もない』。実は同じサイズの作品はひとつもなく、余白もミリ単位までこだわって、紙を自ら切っているんですよ」

「美術館なんて作ろうと思うな」と言っていたみつをさん

みつをさんが60歳のときに初めて出した本がミリオンセラーにもなった『にんげんだもの』。シンプルでやさしい言葉が心を打つと徐々に知られるようになり、勢力的な活動が期待される中、みつをさんは67歳で急死してしまった。
「生前、父はよく『美術館なんて作ろうと思うなよ』と言っていました。世の中に必要とされるものであれば自然と残るし、必要でなければどんなにがんばっても残らないから、と。でも、本が読まれるようになるほど誤解をされることも増えて、本当の父の姿を知ってもらうために原作に触れていただきたいと思って美術館を作ったんです」

世の中に必要とされる場所になれたら――そんな思いを込めて美術館を設立してから25年。
「続けることができたのは、足を運んでくださった皆さまがいたからで、“おかげさま”のひと言です」

「感謝」をテーマに。大切な人に贈りたい作品たち

すべての出会いに、大切な家族に感謝を込めて

そんな一人さんがオズモール読者に向けて「感謝」という言葉をテーマに、大切な人に贈りたい3つの作品を選んでくれた。
ひとつ目は『めぐりあい』。
“あなたはかけがえのない存在“というメッセージが伝わるこの詩を「親から子へ、子から親へ贈るのも素敵だと思います」と一人さん。

「これは息子なりの解釈ですが、父は、たった1人でもいいから、この書に、この言葉に出会えてよかったと言ってもらえるものを書きたいという願いを込めたんじゃないかと思います。そんな風に感じてくださる方がいたら嬉しいですね」

まるでラブレター？感じ方は人それぞれ

ふたつ目は、まるで、ラブレターのような印象も受ける『ただいるだけで』。
「僕はこれは、父の理想の人間像だと思っているんですが、昨年亡くなった母は『これは私のことです』って言っていましたよ」と笑う一人さん。

「読む人によって感じ方はそれぞれです。以前、中学生のお客様が『親に言われたらカチンと来るけれど、みつをちゃんに言われるとそうだなって思う』なんてかわいいお手紙をいただいたことも（笑）。皆さんもぜひ、素直な心で、自由に解釈してもらえたら」

ふとした瞬間に思い浮かぶあの人へ

3つ目は、読んだ瞬間に大切な人の顔や声が思い浮かぶ『声』。
「その人の声を聞くだけで理屈抜きに安心できる・・・。恋愛関係にしろ、友人にしろ、親しい間柄の人にこんな風に思ってもらえたら本当に幸せですよね」

最後に、一人さんは読者に向けてこんなメッセージを贈ってくれた。
「美術館って朝と夕方とでは空間がまったく違うんです。皆さんが切実な思いを胸に館内を歩いてくださることで、空間がやわらかくなるんですね。本などで相田作品を知っているという方にもこの機会にぜひ、足を運んでいただけたら嬉しいです。原作からは、印刷物では伝わらない何かを感じていただけると思います」

10月5日（火）～2022年2月6日（日）まで、相田みつを美術館では、没後30年と美術館の開館25周年を記念した企画展「みつをが遺したものⅡ」を開催中。
日々の慌ただしさに加えて、これまでにないような心の疲れを感じている人ことも多い今日この頃。みつをさんの言葉に触れて、自分の気持ちと向き合ったり、大切な人に思いを馳せる時間をつくってみては？

【プレゼント】「相田みつを美術館の閉館後貸し切り＆館長の解説付き特別ツアー」を5組10名に

「相田みつを美術館」を11月6日（土）の閉館後（17:30～）貸し切り！　さらに相田館長による作品の解説付きの、特別ナイトツアーを5組10名にプレゼントします。5組のためだけに開催される特別ツアーで、感謝の想いを伝えて。さらにカレンダーのお土産付き。感謝を伝えたい相手とコメントを添えて応募して。

■セット内容
・「相田みつを美術館」を11月6日（土）の閉館後（17:30～）貸し切り
・相田館長による作品の解説付き
・相田みつをカレンダーのお土産付き（1組1つ）
※詳細な参加方法は当選者に直接お伝えします
※ご両親とともに3名で参加したい、お子様含めご家族で参加したいなど、2名を超えて参加されたい場合は、応募時にその旨記載ください

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