【ホテルクルーズ(朝食編)】美食家たちをトリコにした、山の上ホテルの和朝食
更新日:2016/12/06
【土曜日 21:00更新】
日々企画を出しあって、シティホテルの特集やニュース記事を作っているプレミアム予約のホテル編集部。私たちがいつも思うのは、ホテルには「敷居が高い」とか「宿泊者じゃないと利用できない」イメージがあるということ。でも実は気軽に利用できる方法があるんです。このコーナーでは、そんなホテルの楽しみ方を知ってもらうべく、編集Nが朝食レポート、編集Mがホテルでの夜遊びレポートをお届けします。
食べることが大好きな編集Nが今回訪れたのは、ずっと気になっていた山の上ホテル。美食ホテルとしても名高いこのホテルは、わずか35室の客室数に対して7つものレストランを備えており、とにかく食に対する力の入れ方が半端ないのです。しかも、いずれも著名な美食家たちから一目置かれる店ばかり。中でも「てんぷらと和食 山の上」は銀座の「てんぷら近藤」や京橋の「てんぷら深町」を輩出した名店であり、この店こそが毎朝山の上ホテルの和朝食を提供しています。
御茶ノ水駅から5分ほど。銀杏が色づく 路地の先にアールデコ調の趣ある建物がそびえます。落ち葉を履くスタッフの後ろにこじんまりとした入口が。ちょっと入りづらい雰囲気ですが、勇気を出して潜入!
赤い絨毯、らせん階段、タイルやライトを施した壁、革のソファ、シャンデリア・・・すべてが懐かしさと気品にあふれていて素敵! 昭和の世界にタイムスリップしたかのような世界が広がります。レトロな風情をこよなく愛する私にとって、この雰囲気はまさにツボでした。
そんなステキな雰囲気の秘密は山の上ホテルの歴史にありました。1937年、W.M.ヴォーリスという有名な建築家の設計で(今も建築見たさに訪れる宿泊客が多いそう)誕生しますが、当初はホテルではなかったそう。戦後になるとここは米軍の婦人宿舎として使われます。客室や宴会場は改装されていますがドアノブの位置が不自然に高いのはその名残なのだとか。異国のご婦人たちはここでどんな生活をしていたのでしょうね。当時彼女たちから「HILL TOP」と呼ばれていた丘の上の宿舎は、1953年「山の上」と意訳されてホテルに生まれ変わります。
朝食会場であるレストラン「ラヴィ」も雰囲気があってステキ。深いブラウンのテーブルや椅子、そして天井から下がる傘付きシャンデリアもかわいらしく、テーブルの上に飾られたピンクのガーベラのさりげなさにもぐっときます。
さて、いよいよ和朝食をオーダー。ごはんかおかゆかを選べます。温かいほうじ茶と梅干をいただきながら待っていると・・・なんとも美しいご膳が運ばれてきました!
大奥の朝食(←個人的なイメージ)のようで心が躍ります。お浸し、乾物の煮付け、煮物、明太子、甘味、ちりめん山椒、もずく酢、焼き魚、卵焼き、海苔、お新香の11品にごはんと赤だしのお味噌汁。
メニュー自体は実家で母が作ってくれるような、どれも日本人にはなじみ深いおかずなのですが、ひと口食べてプロの味とおふくろの味との差を思い知らされます(母完敗です)。
お浸しや煮物、卵焼きは薄めの味付けにも関わらず、深みのある味わいで、ごはんとの相性がバツグン。特に煮物に入っていた分厚いさつま揚げは出汁がたっぷりしみ込んでいて幸せを感じました。なにしろ毎朝カンナで削った鰹節で丁寧に出汁をとっているそう! おいしいわけです。
日替わりの焼き魚はホッケ。毎回オーダーがあってから焼き上げるそうで、ほかほかでやわらかく、香ばしさがたまりません。
明太子は福岡から選りすぐりのものを取り寄せているそうで、昆布出汁を感じる上品な味わいやプチプチとした食感が秀逸! 私史上最高においしい明太子と言っても過言ではないでしょう。
「梅ちりめん山椒煮」は「てんぷらと和食 山の上」でつき出しとして提供される名物のひとつでこれがまた絶品。山椒がキツイものは苦手なのですが、山椒の香りは上品で梅の酸味も感じません。料理長曰く、薄口しょうゆと梅干を使っていることでさっぱりした味わいに仕上がっているそう。おみごと!
黒豆好きを豪語する後輩は黒豆羊羹を絶賛。甘味は日替わりで、レパートリーは数えきれないほどあるそう。杏子の蜜煮や水ようかん、これからの季節は金柑が食べられることもあるそうですよ。
ごはんはおかわりし、お味噌汁も本当においしくいただきました。聞けば夜に出す味噌汁と出汁を変え、より軽めの味わいを追求した朝限定のお味噌汁だそう。てんぷら屋としてあまりにも有名なお店ですが、料理長は朝食をとても大事にされていて「1日の食事は朝食から。てんぷら屋だとかホテルである前に、最高の朝食を提供したい」とおっしゃっていました。
朝食も空間も私のハートを鷲づかんだ山の上ホテルですが、多くの文人たちもまたこのホテルに魅了され、川端康成、三島由紀夫などが定宿にしていたというのは有名なお話。食通として知られる池波正太郎もそんな文人の1人で、彼は当時の料理長に「朝食にちょっとずついろいろなおかずを食べたい」と言ったそう。なんとこのひと言によって今日までつづくこの和朝食が生まれたんですって。
この丘の上のホテルの長い歴史の中には物語がいっぱいあって、そのひとつひとつが味わい深い空気を醸し出していました。最後にロビーラウンジの低いソファでコーヒーを飲みながら、「ボーナスがいっぱい入ったら今度は宿泊しよう。もちろん夕食はてんぷらコースで!」と夢を膨らませたのでした。
朝食DATA
■朝食会場:山の上ホテル ダイニング ラヴィ
■時間:7:00~10:30(ラストオーダー)
■価格: 2200円(税・サ別)※サービス料10%
■平均的な混雑状況:席に余裕あり
■電話番号:03-3293-2311(代表)
■公式HP
http://www.yamanoue-hotel.co.jp/restaurant/lavi/
山の上ホテル
1954年創業、全35室のクラシックホテル。ステンドグラスやアンティーク家具などレトロで気品漂う館内は、名だたる小説家が滞在し、多くの美食家が通ったことでも有名。時が流れても変わらぬ味と、おもてなしの心に触れながら、ゆったりと大人な時間を。
住所:東京都千代田区神田駿河台1-1
アクセス/【電車】JRほか「御茶ノ水駅」B1出口より徒歩5分、東京メトロ半蔵門線ほか「神保町駅」A5出口より徒歩5分 【車】首都高速八重洲線「神田橋ランプ」より約10分
こちらもチェック!山の上ホテルの朝食付き宿泊プラン
和朝食付きステイがOZなら1万円以内のお得プライスに
WRITING/AYAKO NAMBA(OZmall)